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Interview 元NHK美粧師 岡野 宏さん

NHK美粧部において40年にわたり、ゴルバチョフ、アラン・ドロン、カラヤン、松下幸之助、盛田昭夫、田中角栄といった各界の一流の男の“顔づくり”に携わってきた岡野宏さん。「メイクアップやファッションといった外見だけでなく、立ち居振る舞いや内面までつくり上げることが“顔づくり”」と考える岡野さんが見た“一流の男”の共通点とは――。

1 一流の男とは…

“自分”を正しく外見に出せる
以前、ホンダの創業者である本田宗一郎さんが、“コーディネートを見てほしい”と、突然、美粧室を訪ねてきたことがありました。バイク雑誌の撮影だそうで、ちゃんとヘルメットも合わせて来られた。“身内のものは本当のことを言ってくれないので”とおっしゃるので、いくつかアドバイスをしたことがあります。
このように、私は仕事上、人に会ったときに、“その人の外見が場所と目的に合っているか”という見方が先に立ってしまいます。そこで、相手に印象を正しくお伝えし、“ここを直すともっとよくなりますよ”と、目的に合った方向に外見を変えていけるようお話をするのです。
一流の人と普通の人はどこが違うのか。それは、「“自分”を正しく外見に出せているかどうか」です。
一流の人は“自分の見せ方”がとてもうまいのです。でも普通の人というのは、ただ単に“きれい”や“かっこいい”で止まっている。長年、芸能界を見てきましたが、きれいなだけの女優や、かっこいいだけの俳優は、大抵そこで終わり。きれいやかっこいいは、ただの通過点にしか過ぎないのです。
私は、“顔”というのは頭から足の先まで全部だと考えています。自分が訴えたいものが、正しく外見に出せているかどうかを知りたければ、相手から“正しく返ってくるか”を見るといいんですね。相手の反応がよくなかったときや、自分が想像していた答えが返ってこないときは、自分のどこが間違っていたのかを考えて、直していくのです。
“外見で人を判断してはいけない”と言っていたのは、物のない時代の話です。今はたくさんの情報や物があり、選べる時代です。ですから、その人の外見はその人の中身そのものといえます。外見と内面は通じているのです。

2 本田宗一郎から学ぶ一流の男とは…

外見から若さをつくる
本田宗一郎さんは、“中身が素晴らしくても、そのよさを伝える外見にしなければだめだ”という考えをお持ちの方で、外見をとても大事にする方でした。それは人も車も同じでしたね……。

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COLUMN
日本人に似合う色は「紺」と「サーモンピンク」
永井荷風が、著書『荷風随筆集・下』(岩波書店)のなかでも言っているように、黄色人種の日本人には、男女ともに紺がよく似合います。男性のスーツの色では、濃紺がいちばん似合う色だとされています。私が調べてみたところ、世界中、紺の似合わない人はいないんですね。ただ黄色人種は的確に似合う色といえます。スーツを初めて着る方は、必ず紺から入るといいですよ。
もうひとつ日本人に似合うのが、サーモンピンクです。口紅もサーモンピンクをつけると、感じのいい人に仕上がります。あるとき、そんな話を美粧室でしていたら、遠藤周作さんがメークをしにいらした。すぐに話を切り上げて遠藤さんのメークを仕上げたのですが、なんと後日、やけに目立つサーモンピンクのジャケットを着た人が歩いてくるなと思ったら、遠藤さんでした。私たちの話を聞いて、さっそく作ってしまったんですね。でもテレビに映る姿を見ると、予想に反してとても似合っていました。ただ、その後、着ている姿は一度も見なかったですね(笑)。
COLUMN
美しさの世界基準は「肌」
「美しさ」というのはどういうことだと思いますか? 目がパッチリしている、鼻筋が通っている、一重で切れ長……こういった目鼻立ちは好みの問題で、誰もが「美しい」と思う条件には当てはまりません。それでは美しさとは何か。それは「肌がきれいなこと」です。肌がきれいだと、目鼻立ちがあちこち向いていてもカバーしてしまうんですね。その代わり逆もいえます。目鼻立ちがどんなにきれいでも、肌が汚いと美人には見えません。私も仕事の大部分は、相手が誰であろうと「美しい肌づくり」に費やしていました。肌の美しさは、人に好印象を与えるのです。
これまでに、エリザベス女王やデンマーク女王にメイクをしてきましたが、ヨーロッパ各国の女王のメイクは、「とにかくファンデーションを薄く仕上げる」ことでした。ファンデーションの厚塗りは、いやらしさをかもし出してしまうというのは、ヨーロッパでも共通の感覚のようです。
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