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年中行事や日本の伝統文化を伝えながら、豊かな情操を育みましょう【子育て110番】

年末の大掃除

クリスマスが終わると、あっという間にお正月ですね。みなさんのご家庭では、年末年始はどのように過ごされま
すか?

子供のころ、年末は朝から晩まで家のお手伝いをしていた記憶があります。
まずは大掃除から始めるのですが、日ごろはやらない畳の乾拭(からぶき)や鴨居(かもい)の掃除、神棚や仏壇の掃除などもさせられました。
「年末にはおうちをきれいにして、新しい年の神様をお迎えして、気持ちよく一年を始めるものですよ」と母が言うので、「そういうものか~」と思いながら「心はシブシブ、手はセッセ」と大掃除にはげみました。大掃除が終わると、お正月飾りをします。
「一夜(いちや)飾りはよくないから、二十八日のうちに飾るんですよ」と言われ、「どうしてよくないの?」と聞くと、「お正月の準備が遅いと、このおうちはまだ神様をお迎えする準備ができていないと思って、神様が来てくださらなくなるからよ。来年も、神様に守っていただくために早めに準備をするの。これが日本の昔からの風習よ」と教わりました。大掃除は嫌だったけど、日ごろ忙しい母から日本の文化や知恵を教われる特別な時間でした。

お正月に「長幼の序(ちょうようのじょ)」を学ぶ

一月一日には新年恒例の初詣(はつもうで)に行き、お正月のお祝いをします。お重箱に詰められた御節(おせち)料理を並べ、お屠蘇(とそ)やお雑煮を準備します。そしてわが家では、御節をいただく前に子供たちから目上の者に新年のご挨拶をします。

「お父さん、明けましておめでとうございます」「お母さん、明けましておめでとうございます」「お姉さん、明けましておめでとうございます」と順に続き、最後に父と母から子供たち一人ひとりに新年の挨拶があります。それは、何十年と変わらず今もわが家に受け継がれています。

子供はどの時代でも、年長者に養われ、護まもられ、年長者から人生の知恵を学びます。子供はそのことに感謝して、年長者を敬い、年長者の言葉に耳を傾けます。そうすると、子供には、先祖から受け継がれた徳や知恵が自然と身につき、人生の基礎がしっかりでき、その上で子供自身が努力をすれば、さらに大きく飛躍できます。

長幼の序(ちょうようのじょ)とは、子供は大人を敬い、大人は子供を慈(いつく)しむという考え方です。

福沢諭吉先生の『徳育如何(いかん)』にもこの言葉が出てきます。これは、「親の言うことは何でも聞け」ではなく、「目上の人からたくさんのことを学び取ろうとする素直な心の姿勢を持った子供に、慈しみを持って育ててあげましょう。そうすれば賢い子供に育ちますよ」ということです。

日本には、一年を通してさまざまな年中行事があり、そこには日本のよき心や伝統文化が織り込まれています。豆まき、ひなまつり、端午の節句(たんごのせっく)、お盆、お月見、お彼岸(ひがん)などなど、節目節目の行事をお子さまと過ごすのもいいものです。そこにちょっとした知恵や楽しい会話があれば、情操教育にもなりますね。伝統文化をあまり知らないというママさんも大丈夫! 今はインターネットという便利なものがあります。ちょこちょこっと調べてわが子に知ったかぶりするのでもOK! あなたの代から新しい文化を紡いでゆきましょう。

(「Are You Happy?」2020年4月号)

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奥田敬子 

早稲田大学第一文学部哲学科卒業。現在、幼児教室エンゼルプランVで1~6歳の幼児を指導。毎クラス15分間の親向け「天使をはぐくむ子育て教室」が好評。一男一女の母。

 

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