希望の洋服店 M SELECT Vol.5 「スーツについて考える」

「パートナーをもっと美しくオシャレにしたい」――そんな女性たちの願いを叶えるファッションコラム。メンズファッション業界の裏側を知り尽くした油井誠氏が、女性読者とそのパートナーのファッションセンスUPをお手伝いします。

あるとき、エレベーターに乗りきれないほどの就活生に遭遇しました。就職説明会に向かうのか、明るい髪を染め直し、黒か濃紺の量販スーツに新しい黒カバンを提げた、知り合いでもないのに同じ恰好をした無言の集団。ダイバーシティー(多様性)とは真逆の「不気味さ」を感じてしまいました。暗黙のルールがあっても、もっと個性が見えていいのに。
スーツって一体何なんでしょう。「背広」がロンドンの「サヴィルロー」由来なのは有名ですが、スーツは「揃える」「合う」という意味の「suit」から。
それにしても、大英帝国のころより男性仕事服の基本形は、ほぼ変わっていません。「垂直」な推進力のある男たちが引っ張ってきた世界もまた、自由さを失って行き詰まっているように見えます。スーツを着ないスティーブ・ジョブズ以降、カジュアル化が加速したのはその反動でしょうか。
レディースでもスーツ量販に圧倒され、ブランドのキャリア服が消えたと思ったら、最近は政府の推進もあって女性管理職が増加し、女性キャリアの上質スーツがないという声も聞かれます。
男性に比べて自由度はまだかなり高いですが……

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