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ノーファンデーションのすすめ-岡野宏のビューティーレッスン

40年にわたりNHK美粧部に在籍し、国内外の女優や政治家などのメークアップに携わってきた岡野宏さんが考える「魅力ある人」とは? さあ、一緒に美しさへの一歩を踏み出しましょう。 

夏の化粧くずれ

40年ほど前の夏「薄化粧のHONDA受付嬢、爽やかな社風」と、新聞記事に載りました。汗で崩れた化粧を見かねた本田宗一郎さんが、「夏の間だけ、女性社員は化粧をしなくともよい」と提案されたそうです。その記事を読んだ盛田昭夫SONY社長がうなりました。

「先にやられた。崩れた化粧は見られたもんじゃない。夏なんて化粧しないほうが涼しげだし、美しいのではないですかね」

経済界きっての洒落者ふたりが、そろって真夏のメークに疑問を呈したのです。

素顔が感じよいパリのご婦人たち

夏になると女優から、どうすればファンデーションなしでいい感じに見せられるか相談されます。プライベートではファンデーションを塗らずに過ごしたい願望が強いのです。  

「でもね、シミやそばかすをさらすのって相手に失礼にならない?」

と心配したのは女優の壇ふみさんですが、日本の女性は、ファンデーションなしの顔を相手にさらすのが失礼になるという気持ちがあるようです。

夏のパリの街を行き交うご婦人たちをうらやんだのは松坂慶子さんで、「すれ違う人、皆素顔よね」とおっしゃいました。日焼けすることがステータスの欧米では、シミ・そばかすは夏を謳歌した証ですから、それらを隠す気がありません。素顔だと涼やかに感じられますし、どのような年齢の人でも、比較的皮脂が多めに出るので艶があり、きれいに見えます。

「ファンデーションなしだけど、眉とか目とか、口紅に重点を置いていて、いい感じよね」

ファンデーションを塗らなくても、ポイントを押さえれば、相手に対して“気を遣っています”ということが伝わり、失礼にはあたりません。

ノーファンデーション時に、気をつけたいこと

アイライン、マスカラは水に溶けないものを選び、口紅は遊び場では濃く、仕事では薄めにすると、ファンデーションなしでも感じよく仕上がります。日焼け止めを鼻の穴や耳の後ろまでしっかりと塗り、白く浮くタイプのものは目立ってしまい恥ずかしいので避けましょう。日焼け止めはそれぞれの製品に表示された時間に合わせて塗り直すことも大切です。その上から色付きパウダーを軽く叩けば、紗がかかって軽い感じに仕上がります。

それでもファンデーションが必要な人は

仕事などで、どうしてもファンデーションを塗らなければならないときは、現場の近くでメークを行いましょう。例えばホテルで会合がある場合、目的の場がある階は避けて、別の階の化粧室でメークを整えると精神的に落ち着いてできます。眉やアイラインやアイメークは時間がかかるので、自宅で済ませておくとよいでしょう。

また、アスリートや、あざやケロイドのある人のために開発された「汗にも皮脂にも強く崩れないファンデーション」という商品もありますが、崩れにくいものは落としづらいので、ていねいに洗顔やクレンジングができる人だけにおすすめいたします。

素顔でいきいきと

山本陽子さんは熱海に住まいを移してから、買い物に出かけるときもファンデーションは塗らないのだそうです。
「熱海の人たちは素顔でいても気にされないからいいわ」
健康的に美しく見えれば、シミやそばかすは気にすることではない、と皆が思えるようになれば、ファンデーション崩れに悩まされることもなくなるのではないでしょうか。

© K’s color atelier

「崩れる前に 手を打ちましょう」

今月のレッスン
夏は“きれい”より“清潔”を心がけましょう。

 
(「Are You Happy?」2018年7月号)


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