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「日本人の美しい肌色」-岡野宏のビューティーレッスン

 

印象を左右する美肌色

肌の美しさを決める要素のひとつが“肌色”です。ファンデーションの色を変えるだけで、簡単に美しい印象に近づけるのですが、色選びに迷う方も多いのではないでしょうか?

美しい肌色に注目が集まったのは、テレビが白黒からカラーに切り替わった1960年代後半のことでした。当時の日本では、欧米から輸入されたファンデーションが主流でしたが、欧米人特有の肌の赤みを抑える白々とした色の調合なので、血色がない日本人が使うと具合が悪そうに見えてしまいます。美しい肌に仕上げるために、チークや下地などを塗り重ね、手間がかかっていました。

 

世界美肌めぐり

そこで、NHK大河ドラマのカラー化に合わせ、日本人の肌が美しく見える新しいファンデーションを作ることになり、海外に視察に行くことになったのです。世界を旅していた作家の司馬遼太郎さんが、アドバイスをくださいました。

「ロシア、北欧、ヨーロッパ、インド、アジア、中国の肌色の違いを知るといいですよ。それから、美術館も行かれるといい。スペインのプラド、フランスのルーヴルやニューヨークのメトロポリタン……」
司馬さんの、「世界の中での日本人の肌の位置づけを知ることが大事」という考えは、東京オリンピックで世界のキャスターにメークをした経験から、私も同感でした。

 

美しい記憶の中の肌色

世界の肌色を見て回っているうちに、肌色を忠実に再現しても、美しい肌とは感じてもらえないということに気がつきました。その原因は「記憶色」でした。

記憶色は、人の想像の中にある色のことで、例えば「りんごの赤」を想像すると本物より赤らしい赤を思い浮かべるように、実物より鮮やかで美しい色であることが特徴です。肌にも記憶色があり、そこに近い色の肌色に仕上げると、きれいとか、美しいと感じるのです。

記憶色を利用した日本人用ファンデーションは、赤ちゃんの肌に近い色に仕上がりました。オークルにピンクを混ぜた色調を肌にのせると顔全体の血色がよく見え、アイシャドーやチークを重ねなくても健康的で美しい肌色に仕上がります。

 

美しい肌色の選び方

市販のファンデーションの場合、オークルベースにピンクが入った見た目のきれいな色の中から選びましょう。目で見て汚いと感じるグレーの入ったものは避けること。そして、実際の肌色より1段濃い色(暗い色)を選びます。

首と顎の境目に試しづけをし、色合わせをしますが、手と合わせることも忘れずにしたいものです。手は顔の近くに持っていくことが多く、色の差に開きがあると野暮ったく見えるので、首や手の甲、腕の筋肉などの盛り上がる部分に一筋ファンデーションを塗ると、肌色の統一感が演出できます。

 

存在感のある日本人の肌色

ところで、ハリウッド俳優マーロン・ブランドと仕事をしたときのことです。

「存在感のある日本人の肌の色がうらやましい」と言われ、はっとしました。

「なぜ日本人は、その黄色の肌色を大事にしないのかな? 欧米人の真似をして白い肌にしようとするのか理解に苦しむよ」

長い間、人種差別のもとになっていた肌の色が、今ではアニメや映画の中で魅力のひとつになっています。自分の肌色に自信を持ち、相手をも認める。そんなところから、司馬遼太郎さんがおっしゃっていた「肌色による人種差別」が減っていくのではないかと思うのです。

岡野先生第5回本文用

© K’s color atelier

「さまざまな色が集まって世界はできています。」

 

今月のレッスン
ファンデーションは、実際の肌色より暗いオークルベースで、ピンクの混ざったきれいな色を選びましょう。

 
(「Are You Happy?」2017年9月号)

 


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岡野宏先生

岡野宏 

1940年、東京都生まれ。テレビ白黒時代よりNHKアート美粧部に在籍。40年以上にわたり、国内外の俳優だけでなく歴代総理、経営者、文化人まで、延べ10万人のメークやイメージづくりを行う。“「顔」はその人を表す名刺であり、また顔とは頭からつま先までである”という考えのもとに行うイメージづくりには定評がある。NHK大河ドラマ、紅白歌合戦等のチーフディレクターを務め、2000年にNHK退所後は、キャスターや政治家、企業向けにイメージアップの研修や講演活動などを国内外で行っている。著書に『一流の顔』(幻冬舎)、『渡る世間は顔しだい』(幻冬舎)、『トップ1%のプロフェッショナルが実践する「見た目」の流儀』(ダイヤモンド社)、『心をつかむ顔力』(PHP研究所)等。

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