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「進路について子供と意見が合いません。」【竜の口法子 校長の熱烈エール もう大丈夫!】

もう大丈夫!第3回本文

 
〔今回のお悩み〕
私立大学の付属高校3年生の息子が、国立大学への進学を希望しています。理由は、「施設が大きくて就職に有利。将来も安定するから」だそうです。ただ私は、規模は小さいですが、独自のカリキュラムを打ち出し、フロンティア精神にあふれた私立大学に、このまま進学してほしいと思っています。最終的には本人の希望を優先させるべきだと思いますが、どうしても感情的に割り切れません。どう考えたらいいでしょうか。

(22歳の女の子と高校3年生の男の子のママ 50代)

 

未来社会を見据えた人生設計をうながそう

私が相談を受けるときは親御さんが安定志向という場合が多いため、今回は、お母さんの価値観が未来志向で、柔軟である点、素晴らしいと思います。これからの時代、「就職が有利で将来安定」という考えでは、生き抜くことは厳しいです。

ただし、息子さんに対し、周りがよかれと思って言うことが、「押し付け」と受け取られてしまうこともあるので、「最終的には自分で人生を決めた」という流れがよいでしょう。お母さんの祈りが、息子さんの心に変化をもたらし、本人が納得していくのが一番良いですね。

息子さんにアドバイスしてほしいことは、一つには、高校3年という節目に、「人生戦略を考える時間をとって、将来の計画を立ててみよう」ということです。家を建てるときに設計図があるように、人生にも設計図が必要です。生涯現役で人生80年時代を生き抜くために、60年後の未来まで描いてみましょう。100億に向かう地球人口、AIの進歩、新エネルギーの開発など、未来を想像しつつ、自分の使命はどこにあるのか、どのような形で能力を発揮していくか、年代ごとに書き出していきます。

すると、「就職に有利」という条件で大学を選ぶこと自体に無理があると気づくでしょう。社会で中核となる40歳ごろには、今は良いように見えても衰退している産業があります。現在の大学は、すでにできたものを習得することには一生懸命ですが、新しいものを創造するチャレンジ精神が弱いため、そのころには大学で学んだことが使えないということもありえます。

未来から逆算して考えるとき、必要な学問は、未来社会で使える武器を磨く、フロンティア精神あふれる大学にあると気づくでしょう。

 

校風と建学の精神を大学選びの基準にしよう

二つ目にアドバイスしてほしいことは、「息子さんが志望する大学から、どのような人材が輩出されたか、その〝果実〞を見よう」ということです。混沌とした時代にも対応して仕事を進めることができる人材や、努力によって徳を磨く人物をつくる教育をしているかを見てみるのです。

勉強は大学で終わりではありません。今後ますます、何度も勉強をやり直すようなマインドが求められます。ぜひ、校風と建学の精神をチェックしてみてください。

息子さんも本心では、「一生給料がもらえて、家庭も持てて、定年までいられればいい」とだけ思っているわけではないでしょう。人間は、誰かの役に立ったり、他人を幸福にできたりと、人生を自分以外のもののために使ってこそ、真の幸福を感じられます。息子さんを心から尊重し、すべてを受けとめ、一度じっくり、話を聞いてみてください。息子さんには今世の人生、最善の道をつかむ力があると信じましょう。もう大丈夫‼

 
(「Are You Happy?」2019年8月号)

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