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三首であか抜ける②〔岡野宏のビューティーレッスン〕

手首を見せてすっきりと

大竹しのぶさんがドラマで着る服を探すというので、同行したときのことです。ざっくりとしたラフなシャツを選んで試着すると、袖口がだぶつきました。
「大きいんじゃない?」
すると、様子見していた店員が近づいてきて、大竹さんの片腕の袖口を折り上げます。
「あら」
手首を見せると軽さが出て、だぶついた感じが消えました。
「きれいに巻かなくても、クチャクチャに丸め上げるのはどうですか?」
店員は大竹さんのもう片方の袖を無造作にまくり上げました。
「ビッグなシャツやブラウスの袖は、まくり上げるようにすると格好良くなるんです」
シルエットが大きめのデザインのものやロングスリーブ、ビッグスリーブといった、だらしなく見えがちな服は、手首を見せるとすっきりと着こなせます。大竹さんのような小柄な方も、手首を見せればビッグシルエットが着られるようになります。

似合う丈を覚える

足首も、その見せ具合でボトムのスタイルの格好良さが決まります。オートクチュールデザイナーの鈴木紀夫さんが、三田佳子さんの洋服の仮縫いに来たとき、慣れているとはいえ、一度当てただけでスカートの長さが決まりました。いつも決まった長さなのかと尋ねると、デザインによって最適の位置は違うとおっしゃいました。
「足のここから細くなるという、ご自分の位置を見つけてください」
鏡の前で、スカートを上げ下げし、その位置を見つけたら、それを基準にして、デザインに合わせて微調整すればよいのだそうです。
パンツスタイルが誰よりも似合った淡路恵子さんいわく、パンツにも人それぞれ似合う丈があるといいます。パンツを格好良く着こなすには、パンツと靴の間に肌を見せ、足元を軽く見せるのがコツだそうです。
「オードリー・ヘップバーンが履くサブリナパンツはとても素敵!」
男性も、パンツから足首を見せると今風になります。少し前までは、男性が足を組んだとき、肌が見えるのは恥ずかしいように思われていましたが、時代とともに、それが爽やかだと言われるように変わってきました。

着こなしは三首のバランス

今風にあか抜けた着こなしには軽さが必要で、それは肌を見せる分量で決まります。スカーフやタートルネックで首を隠したときは、手首を見せるとあか抜けます。逆に襟元をルーズに開放したときは、手首の肌の見え具合を減らすと、バランスが良くなるでしょう。襟元、袖口の両方の肌の露出が多い場合は、シャツの糊を効かせてパリッと仕上げると様になります。特に緩んだ体型の方や自分に自信のない方はシャツに糊をつけ、素材をパリッとさせると印象が引きしまります。

最高のタイミングで見せる

さて、厳冬はマフラーを巻き、手袋をしてブーツを履くと、三首ともに隠れてしまいます。そんなときに思い出すのは、デザイナーのイヴ・サンローランの言葉です。パリコレのリハーサルで、ランウェイを歩くモデルがスポットライトの当たる最先端に来たとき、サンローランが指示を出しました。
「そこで手袋を取って」
それまで隠していたモデルの美しい手首が現れ、その先の指には、彼がデザインした指輪がはめてありました。美しいものだからこそ、隠し、最高のところで見せるという演出でした。
「美しいものも、印象に残らなければ、何の意味もない」
首、手首、足首の三首を、どのタイミングで隠し、どのぐらいの分量見せるのか、そこにセンスが現れます。自分に似合う分量は、鏡の中の自分が教えてくれるでしょう。

© K’s color atelier

あたなの自慢の“首”見せてください

今月のレッスン

初冬のコートは、袖をひとつ、ふたつ折ると、今風にあか抜けます。

 (「Are You Happy?」2020年12月号)


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