子どもの問題? 親の問題?
上の子が5歳のころのことです。
「どうしてうちの子は、家にお客さんが来ているときに限って、日ごろ言わないようなワガママを言うのかしら」
ため息まじりに愚痴をこぼすと、母が私にこう言いました。
「世界中の子どもがね、親の脇の甘さを突く天才なのよ。いつ親の脇が甘くなるか、子どもはよぉくわかっている。お客さんが来たときなんか、絶好のタイミングでしょ。そしてね、子どもは自分の自由がどこまで通るのか、いつだって大人を試しているの。あなたは、わが子の性格に問題があるんじゃないかと思っているでしょうけど、そうじゃない。本当の問題は、あなたの脇が甘いこと。あなたが、脇をギュッとしめられるかどうかなのよ」
母のこの言葉は、まさに目からウロコでした。
「うちの子はどうして……」「なんでこんなことをするのかしら」と、わが子の困った行動の原因を、子どもの性格の問題だとばかり思っていたのですが、そうではなく、母親である私の脇の甘さこそが問題だったのです。
脇をしめる覚悟
正直、母の言葉は、若く未熟な私にはとても痛くて、十分には受け止めきれませんでした。しかし……
「十年後も、あなたとこの子が笑って幸せに暮らしていることを願う、バアバの心からのアドバイスよ」
そう言ってくれた母の真心と、深い愛を感じて、私は、脇の甘い自分自身とたたかう覚悟を決めました。
そうは言っても、脇をしめるって、いったいどうすればいいのでしょう。
シンプル・イズ・ベスト!
それまでの子育てを振り返ってみると、私は子どもに対して、実にあいまいな態度をとっていました。あるときは、「ちゃんと〝いただきます〟をしなさい」と言い、またあるときは「しかたないわね、今日だけは許してあげる」と言い……。これでは、子どもは何が本当に正しいのかわからず、どこまで許されるのかもわからず、かえってワガママが止まらなくなります。
私は、子どもの一挙一動にうろたえて簡単にルールを曲げていたことを反省しました。そして、「イイことはイイ、ダメなことはダメ」と、シンプルに貫くことにしました。
するとどうでしょう! それまでのモヤモヤがすっきりして、褒めても叱っても心晴れ晴れ、実に爽やかな気持ちで毎日が過ごせます。優柔不断で、安易な方に流されやすい自分とたたかうことは、たいへんでしたが、その先には、大きな幸福が待っていました。
若いママには、おばあちゃんのように経験を通した深い知恵はまだありません。でも、その知恵を、心素直に受け止めることが、若いママの知恵かもしれませんね。
(2012年2月号「子育て110番」)
・エンゼルプランV「お悩み相談」
イヤイヤ期の子供に手を焼いています。どうすればいいですか?
奥田敬子
早稲田大学第一文学部哲学科卒業。現在、幼児教室エンゼルプランVで1~6歳の幼児を指導。毎クラス15分間の親向け「天使をはぐくむ子育て教室」が好評。一男一女の母。