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迷ったときは、厳しい道を選ぼう!―第3話「心おだやかに生きること」

子育て奥田さん201211月号

旅人のお話

 第3話「心おだやかに生きること」の中に、こんなお話が出てきます。かんたんにまとめてみましょう。

 旅人が一本道を歩いて来ると、あるところで道が二またに分かれていました。右の道は、石ころの多い、細くて険しい道です。これとは反対に、左の道は広くなだらかな道がずうっと続いています。右の道を歩いていくのはたいへんそうですが、左の道は楽に行けそうです。

 さて、あなたが旅人なら、どちらの道を選びますか?

 「そりゃあ、苦労しそうなたいへんな道より、楽な道を選ぶさ」

 そう答える旅人が多いようです。しかし、左の広くなだらかな道の向こうには、とんでもない落とし穴が待っていました。悪者たちがいて、旅人の荷物やお金を盗ってやろうと待ち伏せていたのです。
 「旅人というのは、たいてい楽をしようと思っているものだから、きっとこっちの道を歩いてくるに違いない」   
 悪者たちの思惑通り、楽な道を選んだ旅人は、たいへんな目に遭いました。

 

厳しい道の先にあるもの

 反対に、あえて厳しい道を選んだ旅人はどうなったでしょうか。
 険しい山道を登った先には、それはそれは美しい桃畑が広がっていました。そして親切な村人が、おいしい桃を差し出してくれたのです。
 旅人は思いました。自分は厳しい道を選んだけれど、こんな素晴らしいことが待っていた、苦労してよかったと。
 そして、このお話はこのように締めくくられます。

 「神さまは、このように、『いろいろな苦しいことやむずかしいことを乗り切って、がんばろう』と思う人に対しては、いつもごほうびを用意してくれているのです」。それを信じていると、「心はいつもおだやかで、なやんだり、あせったりすることがなく、あのお空にうかぶ満月のような、きれいな生き方ができるのです」と。

 

神さまのごほうび

 エンゼルプランVに通っている年長の男の子が、このお話を聞いた数日後、お母さんにこう言ったそうです。「今日の剣道の稽古(けいこ)、休みたいなぁ。……でも、迷ったときは厳しい道を選べ、だよね。やっぱり行こうっと」
 勉強でもスポーツでも、大人の仕事でも同じです。やるべきことや苦しいことから逃げないで、努力する道を選んだ人は、たとえその道のりはたいへんでも、いつもすがすがしい気持ちでいられます。夏休みの宿題と同じで、逃げているよりも立ち向かったほうが、心はおだやかでいられます。そしてやり遂げた後は、達成感と自信が湧いてきます。
 反対に、目の前の大変なことや、本当はやらなければいけないことから逃げて、楽ばかりしていると、心は次第にどんよりと曇ってきます。そして、夏休みの最終日のように、やらなかった宿題の山というツケが、どこかで回ってくるのです。

 神さまは、努力する人が好きです。楽な道ではなく厳しい道を選ぶ人が好きです。だから、そういう人には素晴らしい未来が開けてくるのです。そのことを信じていれば、苦しいときもたいへんなときも、心おだやかに生きていけますね。

(2012年11月号「子育て110番」)

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奥田敬子 

早稲田大学第一文学部哲学科卒業。現在、幼児教室エンゼルプランVで1~6歳の幼児を指導。毎クラス15分間の親向け「天使をはぐくむ子育て教室」が好評。一男一女の母。

 

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