仲のいいきょうだいに育てる知恵

幼児教室エンゼルプランVで、子供たちやその保護者と日々接し、本誌連載「子育て110番」も人気の奥田敬子さんに、きょうだい間の嫉妬をなくすための子育ての秘訣についてうかがいました。

2人目を授かったら、上の子を気にかけてあげましょう

エンゼルプランVの教室に通われているママさんから、「先生、おなかに2人目ができました」とうれしそうにご報告いただくと、こちらもうれしくなります。家庭に新しい魂を迎え入れるのは、本当に喜ばしいことです。子供はみんな神様の子、光そのものですから、新しい命を授かると、おうちの中が100ワットの明るさから200ワットになるようなイメージですね!

このとき、気にかけてあげたいのが、上のお子さんの気持ちです。ママがつわりで苦しそうにしていたり、ホルモンバランスの変化で気持ちが不安定になったりすると、上の子はいち早くそれに気づきます。また、ママのおなかが大きくなってくると、上の子を抱き上げる回数も自然と減ってきます。上の子がまだ2、3歳の場合、ママにすがりついて離れなくなる子もいれば、おもらしが始まっておむつが復活する子もいます。

ママは、身重でちょっと大変かもしれませんが、大らかな心で、上の子の不安な気持ちを受け止めましょう。下の子がおなかにいるときに、上の子をうとましがったり邪険にしたりすると、上の子の心が傷ついて、記憶の中にきょうだい不仲の種を蒔いてしまうことにもなりますから、気をつけてあげましょう。

どんなにいい子でも、ジェラシーは湧き上がります!

さて、わが家の事例ですが、上の男の子は比較的鷹揚(おうよう)なタイプだったので、2人目を妊娠しても特に変化は起きませんでした。彼の大好きなキャラクターになぞらえて、「あなたにも妹ができるのよ」と話すと、喜んで、「じゃあ、妹の名前は『はなちゃん』にする!」とキャラクターの妹と同じ名前に決めてしまいました。私もうれしくなって、「はなちゃんが生まれてくるのが楽しみだねえ」「たくさんいっし
ょに遊ぼうね」と語り合っていました。

ところが、産後一週間経って、赤ちゃんを抱っこして家に帰ると、あれだけ「はなちゃん、はなちゃん」と言っていた息子が、「ママ、なんで‟コレ”連れて帰ってきたの? すぐに病院に返してきて!」と泣きそうな顔で言ったんです。

そうです、想像の中だけなら、妹はかわいかったんです。でもそれが現実になって、ママの腕を占領する‟小さなよそ者”を見てしまった瞬間、ガーン! とショックを受けてしまったのです。そして「ママはボクのものだ!お前のじゃない!」と主張せずにはいられなくなったのです。

一般的な人間の心理を考えてみれば、何も不思議ではありません。たとえば、旦那さんがテレビの中の女優さんを見て「おっ、かわいい」と言ったら、ママは「なによ!」って思うでしょ? パパも、奥様がかっこいいスポーツ選手をハートの目で見ていたら
ぜんぜん面白くないでしょ?上の子の衝撃はその何百倍ものはずです。自分にとって「全世界」に等しいママの愛を奪い取る存在が突然現れるのですから、ジェラシーが湧き上がっても不思議ではありません。

さあ、ここからがママの愛と知恵の出番です。

ママに愛されている実感を、上の子に与えてあげましょう

下の子が生まれると、授乳やおむつ替えなどにどうしても手がかかるので、ママが下の子に触れている時間は、上の子を構う時間より圧倒的に長くなりますよね。ママは、下の子だけを特別にかわいがっている意識はないですし、赤ちゃんに手がかかるのは仕方がないことなのですが、それが上の子の目にどう映るか、どう感じるか、一度上の子の立場に立って想像してみてあげてください。「昨日まで自分のものだったママのおっぱいも、ママのおひざも、ママの温かい腕も、ぜーんぶ‟あの、小っちゃいヤツ”が奪っ
てしまった! 何とかしてママの愛を取り戻さないと!」。そう思うのはごく自然な感情でしょう。それが赤ちゃん返りになったり、忙しいママにすがりついたり、下の子を押しのけたりという行動になって出てしまうのです。

上の子が言いたいことはたった一つです。「ママ、その子よりボクを愛して、わたしを愛して」です。まずは、その切ない心情を「そりゃそうだよねー」と共感しながら受け止めてあげましょう。その上で、上の子が下の子にジェラシーを燃やしすぎず、きょうだい仲良く育てるには、上の子に、「自分もママに愛されている」と実感させてあげることが大切です。

大川隆法総裁からは、「きょうだい間の嫉妬を減らすためには、上の子を、ちょっと多めに愛してあげましょう」と教わっています。ちょっと多めって、どのくらいでしょうか? 私の経験から言うと、親の実感ベースでちょっと多めに愛しても、上の子の心には届きません。極端なことを言えば、「上の子8割、下の子2割」ぐらいの感じで構ってあげると、上の子の実感ベースで「同等に愛されている」と感じるようです。

上の子が寂しそうにしていたら、泣いている赤ちゃんを少し放っておいてでも、上の子を抱きしめてあげましょう。2人目は不思議とたくましいタイプの子が多いから大丈夫です。そして、温かくやさしい眼差しを注ぎながら、上の子のお話を聞いたり、お話を
したりしてあげましょう。時には「ママの愛は何も変わらないよ」と言葉で伝えてあげることも大切です。

きょうだい間に嫉妬の原因をつくらないために

子供を2人以上育てると、たとえ同じ親から生まれても、一人ひとり魂は別で、気立ても才能も興味関心の方向も違うことがよく分かります。しかしその違いが、成長するにしたがって、きょうだい間の嫉妬や確執につながることがあります。どういうことかと言うと、子供には、ママから見て「分かりやすい子」と、「分かりにくい子」がいます。ママが「自分に似ている」と感じる子は分かりやすく、似ていない子は分かりにくいのです。また、どっしりして機嫌のいい子は育てやすく、敏感でよく泣く子は育てにくいと感じます。ママは、分かりやすい子・育てやすい子を「いい子」だと感じ、分かりにくい子・育てにくい子を「困った子」だと感じる傾向があります。実は、こうした
子供に対する親の偏った見方が、きょうだい間に嫉妬の芽を植えてしまうことが多いのです。

「弟は愛されていたのに、自分はとても厳しく育てられた」とか、「ママはお姉ちゃんばかりほめて、私のことは愛してくれなかった」という思いは、年月の中で塗り重ねられて、嫉妬心や劣等感、人間不信という傾向性となって本人を苦しめます。子供にそんな苦しみの十字架を背負わせないように、親は心掛けねばなりません。親の偏った見方は、自己防衛本能という動物的本能にしか過ぎません。人間は、こうした本能を超えて自分以外の存在を尊び、大切にする「愛の心」を神様から与えられています。

バラの花は、バラの花として愛し、ひまわりは、ひまわりとして愛する。あなたと同じ良さを持った子も、あなたにはない良さを持った子も、どちらもあなたを親として選んで生まれてきてくれた魂です。魂の尊さには何ら変わりはありません。それぞれを見つめ、それぞれの良さを発見し、互いにほめ合い、学び合えば、豊かさと調和に満ちたすばらしい家庭を築けるでしょう。

(「Are You Happy?」2019年1月号)

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