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衣を替えて心を整える

白夜のアンカレッジを訪れて

1日に、そして1年に光や温度、季節の変化があるため、私たちはおしゃれを変え、気持ちの区切りをつけています。変化がないというのは、楽なようですが、気持ちに変わりばえがなく、生きるためのメリハリもなくなります。そのことを改めて感じたのは、ドラマの撮影のために白夜のアンカレッジを訪れたときのことでした。

夜が来ない世界で起きたこと

白夜は1日の光の変化に乏しく、昼がずっと続いているような感覚になります。時計を見なければ、日をまたいだことにすら気がつきません。光があるので日本にいるときより撮影が長く続き、疲労した体から時が経ったことを知る有り様です。撮影に参加していた俳優の松田優作さんが言いました。

「夜が来ないと朝の清々しさもないし、『おはよう』のあいさつも味気ない。ひげを剃るのがおっくうになるとは思わなかった。ましてやおしゃれなんて」

そういえば、スタッフたちも「まあいいや」と、同じシャツを羽織り続けています。そんなだらしのないスタッフを見て、共演者の山田五十鈴さんが言いました。

「あら、まあ。もし日本に朝、夕や季節の変化がなくなったらどうしましょう」

衣替えで服に感謝を

山田五十鈴さんは、暦を見て季節が変わるより少し早めに着物用の桐箪笥(きりだんす)の中身を入れ替えるのだそうです。

「和装には、季節や月ごとに似合う素材や色や柄があるでしょう。入れ替えていると、ああ、またこの季節が巡ってきたなって、うれしくなるの。元気に過ごしてこられたことに感謝よね」

そして、前の季節に袖を通したものを虫干ししながら、来年も着られることを願うのだそうです。

「だって、来年も必ず着られるとは限らないでしょ」

その時々に合わせたおしゃれを楽しめることは、幸せなことなのです。

季節の変わり目には首を温める

さて、夏から秋、冬へと向かう中途半端な季節、日中は暖かいからと油断して、夕方からの風に体を冷やしてしまうことがあります。そのようなときは、首、手首、足首を温めましょう。おしゃれな人は、さりげなく、この3首を温めています。昨年、若い人の間でノースリーブのシャツに肘まで隠れるアームウォーマーを合わせるのが流行りました。肩から二の腕までが見えるため、ほどよい抜け感があり、暑ければ外すこともできます。中途半端な時期にもってこいのスタイルです。
寒さのためとは見せずに、おしゃれにストールやスカーフを巻きましょう。生地の厚みや素材に変化をつけて、季節が進んだことを表すのもしゃれています。
少し冷えが増してきたら、厚着に見せないように、ごく薄い断熱用のシャツや、タイトパンツの中に七分タイツなどを着て、体を冷やさないようにします。
足の裏にだけホカロンを貼るのもおすすめです。

季節感が薄れてきたファッションの世界

ところで、近年、温暖化のせいもあり、空調設備が整った環境が多く、ファッションの世界も変わってきたように感じます。季節を先取りするはずのデザイナーたちの着ている服からも、季節感が薄れてきていました。真冬にお会いしたケンゾーさんは薄手の上着を羽織り、汗を拭い、夏にお会いしたサン・ローランさんは、冷房の効きすぎを嘆き、薄いカシミヤのスーツを着られていました。季節の変化が薄れていくことを寂しく思うのは、私だけでしょうか? おしゃれだけでも季節感を残していきたいものです。

季節に合わせて 心も衣替え© K’s color atelier

今月のレッスン
ファッションに少しずつ秋の要素を取り入れていきましょう。

(「Are You Happy?」2023年10月号)

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