香りはその人を表す
初対面での香りの印象は、その香りが飛んでしまっても記憶に残るものです。自らの体臭に、香水や食べたもの、仕事によってついた匂いなどが加わり、その人の香りが出来上がります。漂う香りは、雰囲気だけでなく、人格までもつくり、良くも悪くも、その人そのものを表します。
自分の匂いを相手にどのように感じさせるか、思わせるかは大事な演出のひとつです。
香りと人の相性
皆に好まれる匂いのひとつが赤ちゃんの香りで、その甘い匂いのする香水が中国で作られました。成都でロケを行っていた原田芳雄さんが、ひょんなことから、ドラマで使う衣装の襟にその香りをつけられました。その甘ったるい香りがついた衣装でラブシーンの撮影が行われたのですが、相手役の中国人女優がふき出し、困った顔をしたのです。
「彼の顔がまともに見られない」
五十才を過ぎたおじさんから甘いお乳の匂いがするのでは、笑ってしまうのも仕方ありません。「原田さんって、マザコン?」と、ひそひそ声が聞こえてくる始末です。
香りはその人のイメージと掛け合わされ伝わります。良い香りも、つける人にそぐわなければ、異質な雰囲気を発するだけなのがよく分かる出来事でした。
働く姿を想像させる香り
料理人は、身体についた匂いに人一倍敏感です。材料の匂いが重なると嫌な臭いになるため、次の料理に匂いが移らないよう、前の調理でついた匂いを消されていました。
NHKの料理番組にやって来る料理人たちを見ていると、中華の料理人はすりおろしたショウガを指の間にすり付け、ウーロン茶で手を洗い、帝国ホテルのフレンチの村上信夫さんは、すり大根で手を洗われていました。
日本料理の辻嘉一さんがスタジオに入ってくると、爽やかなレモンの香りが漂います。レモンを輪切りにして塩を振り、手、襟元、耳にその香りをこすりつけ、最後に襟首の後ろにもつけられていたのです。
「ハーブは次の料理に影響が出る。オレンジやグレープフルーツは匂いを隠すが甘すぎ、ハッカ、シナモンは強すぎる。たどり着いたのが、スッキリとしたレモンでした」
働いてつく匂いは、嫌な匂いでなければ仕事ぶりが想像でき、好意的に受け入れられます。完全に消そうとするより、和らげるようにすると良いでしょう。
加齢臭はハーブで対策
ところで、加齢とともに身体が発する臭いは強くなります。一番臭うのは口臭、次に頭髪、その次が体臭です。口臭が気になる方は、香水をつけて嫌な臭いを隠すより、人に会う前に歯を磨けば、80%の臭いが消えます。口を水で二十秒ゆすぐだけでも臭いは半減します。
いつもほんのり良い香りが漂う八千草薫さんは、ご主人で映画監督の谷口千吉さんが栽培しているハーブで作ったお茶を召し上がっていると話してくださいました。
「そのときの体調によって、体臭が邪魔をするとき、セージを多く入れ、ミントと合わせたりしています」
その話を聞いた森光子さんも、ハーブ栽培を始め、ペパーミントとタイムを細かく切って匂い袋の中に入れ、帯の間に挟み、よい香りをさせていらっしゃいました。
香りは天然のものが無難で合わせやすく、その中でも一番がレモン、次がミント、そしてバニラの香りが女性だけでなく、若い男性にも好まれます。
体臭は完全には消せません。身体を清潔に保ち、体臭は変えるより淡い匂いにするように心がけ、上手に付き合いましょう。
© K’s color atelier
「残った匂いで 食べたものが ばれませんように。」
今月のレッスン
汗と皮脂は時間がたつと臭うので、臭う前に拭きとりましょう。
(「Are You Happy?」2020年2月号)
好評連載中
「岡野宏のビューティーレッスン さあ、はじめましょうか!」
第70回 「新しい服を着る」
(2023年2月号)