【体験談】自殺した父と夢で再会 生まれ変わってもお父さんの娘になりたい

中学生のとき、父親を自殺で失い、母親と二人で困難を乗り越えてきたOさん。どのように悲しみと向き合っていったのか、話を伺いました。

いつも人に親切だった父

「ありがとう」

それが、父から母に送られた最後のメールです。母は「何言ってんの。ちゃんとお昼食べておいてよ」と返信したそうですが、メールが返ってくることはありませんでした。その日の朝、私と母が出かけた後、父は自宅で首を吊って亡くなったのです。

父と一緒にいられたのはたった13年間でしたが、とても濃い時間を過ごしたと思っています。お城巡りが好きで、毎月私たちを旅行に連れて行ってくれました。一緒にゲームやバドミントンをするときは一切手加減をしてくれなかったので、私は負けるのが悔しくて、いつも泣きながら「もう1回!」とせがんでいた記憶があります。

印象に残っているのが、まだ幼稚園児だったころ、ドライブに連れて行ってもらったときのこと。腰の曲がったおばあちゃんがよろよろと歩いていました。父はその姿を見ると、車に乗せて家まで送ると言い出したのです。しかし車に乗せた瞬間、おばあちゃんから何とも言えない嫌な臭いが……。それでも父は車の窓を開けることもなく、笑顔で乗り降りに手を貸していました。

(大人ってこういうことをするのが当たり前なのかな。すごいなあ)

子供ながらに、父への尊敬の思いが心に刻まれました。

大手メーカーに勤めていた父は、仕事面では神経質で、完璧主義なところもありました。私が中学1年生になった年、問題のある部下を持ったことでストレスを溜め、精神的に弱ってしまったようです。父は精神科で軽いうつ状態だと診断され、会社を休職することになりました。

家にいる間、父は好きな映画を観たり、飼っていたウサギの世話をしたりして過ごしていました。時々、会社の方が気をきかせて外に連れ出してくれることもあり、出かけていく姿を見る限り、今まで通り変わった様子はありません。ただ、会社に行けないことを気にして、少し家族に遠慮している雰囲気はありました。

いつも通りの朝、突然の別れ

休職して3、4カ月経つと、「まもなく復帰できるかもしれない」という状態にまで回復しました。振り返ると、復帰の時期が決まったころから、父が少し物静かになっていたような気がします。旅行好きだったのに、外出を嫌がるようになっていたのです。

ある日、父が一人で家族のアルバムを眺めているのを見かけました。その背中を見た瞬間、なぜか「今は話しかけちゃいけない」と感じ、しばらくしてから声をかけたことを覚えています。事件が起こったのは、それから1週間後のことでした。

復帰を数週間後に控えた4月7日、私と母はいつも通り「行ってきます」と父に声をかけて学校と仕事へ出かけました。その日は始業式で、私はお昼前には家に帰ってきました。いつも通り父に鍵を開けてもらおうとインターホンを押しても、反応がありません。ドアを叩いて中に呼びかけていると、母が帰ってきました。父から返信がないので何か胸騒ぎがしたらしく、早めに帰ってきたのです。母の鍵でドアを開けて、私たちは2階に上がりました。

「ああ!」
「お父さん!」

父はハンモックで首を吊っていたのです。

私と母は必死でロープを切り、救急車を呼びました。父の手を握った瞬間、あまりの冷たさに全身が固まりました。「お父さんは生き返らないんだ」と感じてしまったのです。後から聞いたところによると、父が亡くなったのは朝9時ごろだったそうです。

父とICUに入った母を待つ間、考えていたのはこの先の現実でした。

(家を建てたばかりなのに、新築のローンはどうしたらいいの? 遺された私とお母さんでどう生活していけば……)

驚きや悲しみはありましたが、目の前のことを考えるのに必死でした。一方で、仕事ができず苦しんでいた父の姿を思い出し、あきらめのような感情もありました。

(お父さんは、今生き返っても絶対につらいだろうな……それなら、このまま逝ってもらったほうが幸せなのかもしれない)

処置の甲斐なく、父はそのまま帰らぬ人になりました。自殺の場合、血などで汚れ、苦痛の表情になることが多いそうですが、安らかな顔をしていたことだけが救いでした。

夢での父との再会

父の葬儀には、300人以上の人が来てくれました。参列者から話を聞くたび、父が周りの人からどれほど慕われていたかを知り、驚かされました。その後は、父が突然亡くなったことによる手続きなど、現実の作業に追われている間に時間は過ぎていきました。

父が亡くなって3カ月が経ったころ。母が会社の友人に幸福の科学の話を聞いてきました。「自殺をするとその魂は、寿命が来るまでその場で自殺を繰り返す」という霊的真実を知り、父の魂を救うために仏法真理を学ぶことを決意したそうです。母が入信したことを知った私は、反対はしなかったものの宗教に偏見を持っていたので、「お母さんが変な宗教に入ってしまった。私がしっかりしないと……」と考えていました。

少し生活が落ち着くと、私たちは家を手放して、母の実家で暮らすことにしました。そのころから、不思議な夢を見るようになったのです。真っ暗な洞窟で、父が一人で座り込んでいます。その顔は暗く、目にも生気がありません。私が「お父さん」と呼びかけると、顔を向けてくれるのですが、まったく目も合わず返事もしてくれない……。後で気づいたことですが、そこは幸福の科学で教えられている「土中地獄(どちゅうじごく)」そのものでした。

何度も同じ夢を見て、おかしいと思った私は、母に夢のことを相談しました。当時通っていた幸福の科学の支部の支部長のすすめもあり、母は父のために、永代に渡って毎日読経供養が行われる「永代供養(えいたいくよう)」を受けることを決意したのです。

供養を申し込んで2週間ほど経ったころ、再び夢を見ました。そこはいつもの暗い場所ではありません。明るく美しい花畑で、初めて父と会話をすることができました。いつも家で話していたような他愛もない会話でしたが、生前とまったく変わらない笑い方の癖を見た瞬間、「やっとお父さんが笑ってくれた」と心の底から安心しました。

(幸福の科学って変な宗教ではないみたい)

永代供養のおかげかもしれないと、幸福の科学に対する見方が変わっていきました。

人は魂を磨くために生まれ変わる

その後、高校生のときに、人間関係の悩みを解決したいと思い、私も(*1)三帰誓願(さんきせいがん)をしました。と言っても、そのころは真面目に(*2)仏法真理を学んでおらず、学校の勉強もさぼり気味でした。するとある日、母に突然御本尊の前に正座をさせられ、こう言われたのです。

「私もあなたも、いつか死にます。私はきちんと仏法真理を学んでいるので明るい世界に還れますが、今のままではあなたは別の世界に還ります。もし死んでからも私と会いたいと思うなら、一緒に仏法真理を学びなさい」

母の言葉は確信に満ちていました。その後、幸福の科学学生部の仲間の支えもあり、少しずつ信仰に目覚めていきました。

仏法真理を学ぶうちに、「死んでも魂は永遠であり、魂を磨くために何度も地上に生まれ変わっている」「人は生まれる前に人生の計画を立ててきている」などの霊的真実を知りました。また、「死ねば何もなくなると思って、神仏にいただいた命を自ら絶ってしまうと、自分が死んだことにも気づかず地上をさまよい、家族や周りの人に取り憑くこともある」と知り、父が明るい世界に導かれて本当によかったと思いました。やがて父の自殺も「自分の人生の発奮材料だった」と思えるようになっていったのです。

「私って、もしかして寂しいのかな?」

大学生になり、就職活動中のある面接で生い立ちについて話をすると、「それは大変だったね」と深く同情されました。そのとき初めて「私って、大変だったの?」と、自分の置かれた環境を振り返ることができ、社会人になる前に、自分の心を見つめ直してみようと思いました。

幸福の科学の精舎を訪れたときのこと。お父さんとお母さんと、小さな息子さんが幸せそうに話している姿を見ていると、ふいに涙が溢れ出てきました。これほど泣いたのは初めてというほど、嗚咽が止まりません。「なんでだろう」と考えたとき―。

(私って、もしかして寂しいのかな)

ようやくそう気がついたのです。父が亡くなってから、現実に追われてずっと閉じていた「悲しみの蓋」が初めて開いたような感覚でした。

(もっとお父さんに生きていてほしかった。一緒に仏法真理を学べたらどれだけうれしかっただろう……)

その数日後、しばらく精舎に滞在していた私は、周囲を散策することにしました。そのころは秋の紅葉シーズン。辺り一面が赤や黄色に染まり、輝いて見えました。

「あ、きれい」

そんな言葉が、自然と口をついて出てきて、はっとしました。それまでの私は、美しい風景にもあまり興味がなく、見て感動することもなかったのです。抑え込んでいた悲しみの感情を吐き出したことで、心が解放され、素直な感性でこの世界の美しさを感じ取り、何とも言えない感動で心が満たされていきました。

その後も、何度か父が出てくる夢を見ました。一昨年見た夢の中では、父は幸福の科学の書籍を一生懸命書き写していました。もともと勤勉な人でしたから、あの世でも仏法真理を勉強しているのでしょう。もうすぐ生まれ変わる準備もしているようで、「私たちは大変だったのに、のんきなんだから」と思ったりもします(笑)。

私にさまざまことを教えてくれた大切な父。また生まれ変わっても、私のお父さんになってほしいです。

*1 幸福の科学の本尊エル・カンターレとその説く法、そして法を学ぶ僧団(仏・法・僧)の三宝に帰依することを誓うこと。
*2 仏の創ったルールであり、時代や地域を越えて通用する普遍の真理。

(「Are You Happy?」2019年8月号)

幸福の科学の自殺防止の取り組み

幸福の科学では自殺者が年間3万人を超えていた2003年から「自殺を減らそうキャンペーン」を行っています。2020年5月には、「自殺防止相談窓口」も開設しました。大川隆法総裁の説く仏法真理に基づいた霊的知識から命の大切さを訴えています。

幸福の科学 自殺防止相談窓口
☎ 03-5573-7707(火~土(祝日含む)/10:00~18:00)
  withyou-hs@happy-science.org    
HP https://withyou-hs.net/

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