平均体温が下がっているといわれる日本人。冷えは免疫力を下げ、様々な病気、不調を引き起こします。
風邪をひきやすい、一年中鼻炎に悩まされている、生理痛がひどい、膀胱炎など、薬を飲んでも治りにくい症状があれば、それは冷えが原因かもしれません。
冷えとり健康法を使って診療している武永先生に、東洋医学から見た冷えとりの意味やその効果、実践方法などについて伺いました。
冷えとりは体の根本から健康になる治療法
冷えとり治療の考え方とは、「今までの生活が病気をつくったのだから、その生活を変えれば健康になる」というもの。冷えにより、一度落ちてしまった生命力をもう一度引き上げるのです。その前提には、「元々、人間にはそれだけの力が宿っている」という考え方があります。
ですから、「病院でお金を払って治してもらう」と考えるのではなく、冷えとりは自分の意思で行うもの。なぜなら、診療所にいるときだけではなく、普段の生活で実践することで効果を発揮するからです。それを面倒に思う人もいるかもしれませんが、病気に限らず、すべてのことは原因があって起きます。その原因を見つけて改善することで、再び健康体に戻ることができるということは、素晴らしいことだと思います。
冷えとりの方法
「頭寒足熱」の心がけと食事のコントロール、そしてストレスをためないこと
第一に頭寒足熱(ずかんそくねつ)です。
頭寒足熱とは、文字通り頭を冷やし、足を温めて、上半身と下半身の温度差をなくすこと。具体的には、毎日、靴下の重ねばきや半身浴、足湯などで足を温めます。また、手首や額、首がほてる場合は、保冷剤などで冷やします。
2つ目は、食事です。
海藻と豆を中心にした玄米菜食を心がけ、しっかり噛んで、時間をかけて食べます。食べすぎは病気になりやすく、冷えにもつながるため、注意しましょう。また、甘いものと冷たいものの取りすぎには注意しましょう。
3つ目は心です。
体の毒には、精神的な毒も含まれます。ストレスは毒を作ってしまうので、心に溜まった毒もきちんと流して、溜めないようにしましょう。
頭寒足熱で体に溜まった毒を外に出しながら、食事と心に気をつけて、新しい毒を溜めないことが大切ですね。
なぜ冷えとりは体にいいのですか?
下半身を温めることで、気のめぐりがよくなるからです。
東洋医学では、陰と陽の気が体内を循環していれば健康、滞っていると病気になるという考え方をします。
普通に生活していると、上半身よりも下半身のほうが冷えていることが多いのですが、その温度差が大きくなりすぎると気のめぐりが滞ってしまうのです。
ですから、下半身の冷えをとり、上半身を涼しくすることで、陰と陽の気のめぐりがよくなり、臓器がしっかり働きはじめ、解毒され、全身が温かくなってくるのです。
そうやって、気のめぐりを本来の状態に戻してあげることで、人間が持っている自然治癒力を高めることができます。
冷えとりは美容にもいいのですか?
とてもいいですよ。しみ、そばかすが消えることもあり、顔も5~10歳若返ります。
ですから、うちの診療所で冷えとりを実践した方は、「ここは病院なのか、エステサロンなのかわからないわ~!」と感動されます。
その理由としては、冷えとり習慣を続けることで、体温が35度台の人が36度台に上がります。そして解毒も進み、食欲も上がり、よく眠れるようになったり、快便になります。健康になるので、気持ちまで前向きになって、結果、若々しくなるのだと思います。
暑がりの人は冷えていない?
「冷え」を体が温めようとして、熱を発し、暑くなることもあります。
足元は冷たく、上半身が熱くなって、顔が赤らんだ人のことを「冷えのぼせ」といいます。
足元から上半身に上がってしまった冷えを体が温めようとして熱が発生するため、上半身がほてるんです。自覚としては「暑い」と感じても、実は体はとても冷えているんですね。
ですから、「私は暑がりだから冷えていない」と思っている人も、「本当にそうだろうか?」と、足元が冷えていないかなどを確かめてみることをおすすめします。
もしかしたら、体がほてるのは、かなり冷えが進行しているからかもしれませんよ。
冷えとりを実践し健康な体を取り戻した例①
卵巣を切除した女性が、40歳で出産
A子さんは10代のとき、卵巣の片方を“卵巣のう腫”で切除。20代前半には、残りの卵巣を同じ病気で切除しました。結婚した御主人は西洋医学のお医者様でしたが、ご主人のお許しを得て、西洋医学以外の代替医療に懸けてみることに。
縁あって、私の医院を訪ねてこられ、冷えとりを開始。
すると、1年半ぐらいで生理が始まり、なんと40歳で自然分娩で赤ちゃんが生まれました。卵巣を摘出しているわけですから、実際に生まれるまで、A子さん以外は誰ひとり、確信を持てなかったようですが、今、その子は6歳。元気に学校に通っています。
例②
1回の診療でうつ病が治り、元気いっぱいになった70代女性
うつ病に悩んでいた70代のB子さんは、私の医院に来られ、足湯器に入りながら、息子や嫁の悪口をさんざん話していました。数時間もすると、汗をびっしょりかき、すっかり顔色もよくなって、元気にハツラツとしてお帰りになりました。
そして、次に診療に来られた際、こう話してくれました。
「前回家に帰ってみたら、不満を抱いていたはずの息子や嫁の欠点が、どこにもないことに気づきました。そして、すぐ不動産屋に行き、自分の持っている不動産を息子や嫁に譲り渡す手続きをしてきたんです」と。これはまさに、体の毒だけでなく、心の毒も一緒に排出できた例だと思います。もちろんうつ病は1回の診療で治りました。
(「Are You Happy?」2012年2月号)
武永慶子
武永診療所院長
大学卒業後、渡独。バイエルン州立ミュン ヘン大学医学部卒業の後、中国にて東洋医学を学ぶ。現在、 築地にて武永診療所を営み、「冷え取り診療」を行っている。