料理の「サキドリ」は、ママのための 頑張りすぎない時間術です。

かつては雑誌の編集という激務と子育てを並行。仕事と家事、育児でがんじがらめの中でつかんだ料理の「サキドリ」により時短や効率化に成功し、現在は料理研究家としてセミナーや執筆活動で活躍する田内しょうこさんに、忙しいママのための時間術をうかがいました。

 

「頑張ること」をやめたら身体も心も余裕ができた

若いころは仕事や家事の同時進行にやりがいを感じていたのですが、子育てまで加わると、本当にパツパツになってしまいました。忙しいなかでも料理だけは「子供のために」と、土鍋でごはんを炊いて、だしをとって……と頑張っていたのですが、あるとき、いっぱいいっぱいで気が回らなくて、子供に緊急病院に行くほどのケガをさせてしまって。「ここまでする意味が本当にあったのか」と、立ち戻らざるを得なくなったんです。

「もう少し手抜きをしよう」と決めたときには後ろめたさもありましたが、例えばだしパックを使うなどして、手間がひとつ減ると考える手間も減るんですね。疲れ方も違いますし、「この子のために」と頑張っていたころよりも余裕ができ、子供に目が届くようになりました。

 

サキドリ❶ 少しでも事前準備をする

私が「サキドリ」に目覚めたのは、娘が小さかったころのことです。料理はできたてにこだわっていましたが、時間に余裕がなく、仕方なく冷蔵庫にあったきゅうりの浅漬け(塩もみ)にしらすを混ぜて出したら、なんと娘に大好評。「こうやって“サキドリ”していけばいいんだ!」と気づけたのが出発点でした。

料理を作るときは、ほんの少しだけでも〝事前に準備ができている”と楽ですよね。疲れて帰ってきて、「何もない」という状態がいちばんつらいので、帰り道に「何を作ろうかな」と考えることも“サキドリ”です。さらに一歩先を行って、野菜を切っておく、肉に下味をつけておく、などができていると、よりレシピもイメージしやすくなります。例えばニンジンを半分しか使わないレシピのときでも、全部切って分けておけば、次に使うときにわざわざ切る手間が省けて時短になります。準備できている食材がひとつでもあると、気持ちが楽になりますよね。

 

サキドリ❷ ルーティン献立をつくる

もうひとつおすすめなのが、ルーティンでできる献立をつくること。例えば「豚のしょうが焼き・お味噌汁・塩もみきゅうり」など、レシピを見なくても作れる献立が頭の中にあるだけで、精神的な余裕がまったく違います。

ルーティンのレパートリーを増やすためにもやってみてほしいのが、食材や味付けを変えること。豚肉を鶏肉にしてみる、醤油味をケチャップ味に変えてみるなど、アレンジするだけならレシピを追うストレスから解放されますし、考える手間も省けます。教室などでも、お料理に慣れていない方には「レシピを見ながら作るのはやめましょう」とお伝えしているのですが、それは初めて作るものだとイメージができず、レシピを追うことに疲れてしまうからです。

 

サキドリ❸ ついでにまとめて少しずつ

‟時間術”と聞くと、「常備菜を作っておかなきゃ」と思うかもしれませんが、食べきれないことも多いですよね。それよりも、例えばひき肉をそぼろにする、煮物は多めに作って半分は冷凍しておくことなどがおすすめです。1、2週間後の忘れたころに冷凍庫から出てくると、「これがあった! しかも自分が作って冷凍しておいた」って、すごくうれしいんですよ(笑)。

さらに余裕があれば、煮物は前の日の夜に煮ておけるといいですね。すぐに食べるよりも、ちょっと置いたほうがおいしいものも多いですから。少しずつ「サキドリ」ができてくると、心が楽になりますし、「ちゃんとできた」という満足度から、自信もつきます。経験を積むごとに「こうやっておけばいいんだ」という”正解”もわかってきて、心の余裕につながりますよ。

 

頑張りすぎるより方法や考え方を変えてみて

忙しいママほど「子供のために」と頑張ってしまいがちですが、無理をするよりも、方法や考え方を変えてみてはいかがでしょうか。最近は材料の宅配や料理キットなどママ向けのサービスも増えていますから、あまり罪悪感を持たずにとりあえず一度利用してみてもいいと思います。小さい子供がいる友人は、毎週木曜日に料理キットの宅配をお願いしたら気が楽になり、木曜日が好きになったと言っていました(笑)。そんなふうに、「楽をしていい日」を決めてしまうのもいいと思います。

仕事などで遅くなり、「仕方ないや」とお惣菜を買って帰ると、敗北感を感じる人もいるかもしれません。でも、「◎時を過ぎたら買って帰ろう」とあらかじめ決めておけば、”想定内”になります。同じ”お惣菜を買って帰る”ことでも、「予想ができていた」、つまり「自分をコントロールできていた」と思えるんですね。小さなことかもしれませんが、こんな一つひとつが自信につながります。心構えひとつで気持ちは変わりますから、やってみて損はないですよ。

 

ときにはゆるく開き直る

うまく時間を使えずに落ち込んでしまったときにやっているのが、「できたこと」を無理やりにでも見つけること。私の場合はきゅうりなどの塩もみや、ニンジンの細切りです。それがあると、「とりあえず明日食べられるものがある。大丈夫」と思えて元気になります。

上を見たらきりがないので、できないことよりも「昔と比べたらできている」ことを見つけると、心が楽になります。私も以前は料理や家事をちゃんとすることが子供のためだと思って頑張りましたが、買ってきたサンドイッチでも、子供は抱っこしながら一緒に食べるだけで喜んでくれるんですよね。むしろ、買ってきたもののほうが子供にとってはごちそうだったり、思い出になったりして(笑)。

今のママたちは仕事をしながら家事や子育てをされている方が多いので、とても大変ですが、やりたいことをあきらめないでチャレンジできている、とも言えますよね。だから、あれもしなくちゃ、これもしなくちゃと頑張りすぎずに、「子供と一緒にいられるだけで充分」と、視点を少し変えてみてもいいかもしれません。工夫できるところは工夫しながら、「子供が健康で、汚れていない服を着て、お腹を空かせてないならそれでいい」と、ときにはゆるく開き直るのも大切だと思います。

 

(「Are You Happy?」2018年6月号)

料理研究家

米カリフォルニア州のミルズ女子大を卒業後、出版社勤務を経て料理研究家に。働く女性や共働き家庭のための食事法や時短術を教室やセミナー等で伝える。一男一女の母。著書に『時短料理のきほん―1日5分「先取り習慣」で、かんたん、おいしい。』、『サキドリ:じぶん時間ゼロ、ダメ主婦、ダメ社員だった私が人生を取り戻した小さな習慣』(ともに草思社)など。5月下旬に「汁かけごはん」(駒草出版)発売予定。