トランスフォーム仕事術とは、「コツを知り、量をこなしていって、仕事の質をガラリと変える」仕事術のこと。
今回は、仕事の成果にも影響する「感情」のコントロールについてです。
感情をコントロールするといいことばかり
私たちは、感情が乱れますと、なかなか正しい決断が下せません。
どんなに仕事のスキルがあったとしても、感情に大きな波があると、やる気や集中力が低下して、やはり思うような成果が出にくいのです。また、人とのコミュニケーションも、すぐに怒ったり、泣いたり、ふてくされたりしていますと、なかなかうまくいかないでしょう。
もしも感情を上手にコントロールできたなら、正しい決断をくだすことができ、仕事の成果も上がり、人間関係も社内外を問わずうまくいくものです。さあ、こんないいことばかりの、感情のコントロール法を学んでいきましょう。
心の弱さを嘆く?
感情のコントロールというと、どうしても心に目を向けがちです。「どうして自分は感情に振り回されてしまうのだろうか?」「なんて自分の心は弱いのだろうか」と、心の弱さを嘆くかもしれません。
しかし、ここは思いきって、アプローチのしかたを変えていきましょう。
身体を整えると感情が安定する?
心と身体は車の両輪のようなものです。片方の調子が崩れますと、すぐにもう片方にも影響が出ます。
心配事があって胃が痛くなるとか、顔が青くなるなどということがあります。また、体調がとても良くて、心がウキウキして楽しいということもありますね。
ですので、ひとつのアプローチとして、身体をいい状態にもっていけば、心もフラフラしなくなるのです。感情という心を変えようと焦らずに、まずは身体を整えることです。
身体を整える3つのポイント
そのためのポイントは3つあります。
1 呼吸は、吐く息を長く強く
2 首、肩、腕、上体の余分な力を抜く
3 お尻を締める
それぞれ簡単に説明していきましょう。
ポイント①呼吸は吐く息に注意
まず、感情が乱れますと、どうしても吸う息に力がこもってしまい、交感神経が優位に立つといわれています。あるいは、吸う息も吐く息も力なく弱々しくなります。感情が乱れそうになったら、吐く息を「長く、強く」するように心がけてみましょう。数回行うと自然に心の波立ちが収まってきますよ。
「長生き」は「長息」というくらいで、せかせかと呼吸しますと、一生の呼吸回数を早く消化してしまうのです。呼吸が安定しますと、必ず心も安定します。
昔の日本人が、剣道や坐禅に励んだのも、呼吸を安定させて、そのことで心を不動なものとする努力をしたわけです。ちなみに昔の日本人は屋外で坐禅をしましたから、座禅の「ざ」は、屋根つきの座ではなく、坐が正しいといいます。
ポイント②首、肩、腕、上体から力を抜いてみる
カッとなったり、不安に心が揺れているときは、必ず首や肩に力が入っています。これを回したり、揉んだり、動かしたりして、上体の余分な力を抜いてみましょう。
上体から余分な力が抜けてリラックスした状態のことを「虚」といいます。まずは上体を虚にすることを心がけるのです。肩をマッサージで柔らかくしますと、怒りたくても怒れないものですよ。
ポイント③お尻と下腹に力を入れる
もうひとつ、心が乱れて不安定になると、ひざが震えたり、お腹に力が入らなくなります。
お尻を締めるようにして、上体は虚、下腹は力の充実した、「実」の状態が、心を安定させるベストの身体です。これを「上虚下実」といいます。普段から身体をこの状態にする練習をしておくと、いざというとき、心もフラフラしにくくなるのです。
いかがでしたか? 意外にも、感情のコントロールは、実は身体を整えることから始まるのです。これを「心身一如」といいます。次回は、心のアプローチについてお話ししていきます。お楽しみに。
(「Are You Happy?」2011年5月号)
松本幸夫
ヒューマンラーニング代表 / 人材育成コンサルタント
1958年東京生まれ。著作は170冊を超え、年間約200回行う研修・講演のリピート率は92%という実績を誇る仕事術の達人。主な著書に『百田尚樹に学ぶヒットを生む仕事術』(総合法令出版)『人生がうまくいく「呼吸法」』(PHP研究所)『自己能力を10倍高めるトランスフォーム仕事術』(幸福の科学出版)『超強運』(あ・うん)『図解 スティーブ・ジョブズのプレゼン術』(総合法令出版)など。著作は、韓国、台湾でも翻訳され、ベストセラーとなっている。