いいストレスと悪いストレス―女性のためのトランスフォーム仕事術

ストレスは悪者?

仕事の成果を出すには、言うまでもなく仕事能力が必要です。が、能力だけあれば効率的な仕事ができるかといいますと、必ずしもそうではありません。そこには、意欲や集中力などのメンタルが大きく関わります。
今回は、ストレスコントロールをテーマに仕事術を考えていきましょう。
あるアメリカの研究では、ストレスというのは、あらゆる状況でレベルが高まることがわかっています。
お客様からのクレームとか、残業が続くとか、社内の人間関係が良くないといった状況が、すぐに思い浮かびます。そのあたりがストレス要因というのはわかりますね。
しかし、クリスマス、昇進、子どもの誕生、転居など、一見ストレスとは関係ないような状況でもストレスレベルは上がっているのです。つまり、ストレスは必ずしも悪者とは限らないということです。

トランスフォーム仕事術ストレス編

 

ユーストレスとディストレス

私たちの集中力を高め、仕事の成果を高めてくれるストレスを「ユーストレス」。反対に、成果を下げかねないものを「ディストレス」と言います。
適度なストレスなら、注意深くなり、能力を十分に生かすことができます。なぜなら、あまりにストレスレベルが低いとのんびりして、普通ならしないようなミスや、忘れ物をしてしまうのです。
私も、何十回と行っている慣れた研修先に行きますと、忘れ物などをしてしまうことがあります。油断してはなりませんね。仕事のときはストレスが低過ぎても好ましくないわけです。

 

「残心」から学ぶ

武道の先生から聞きましたが、「残心」という言葉があるそうです。仮に剣で相手を倒しても、実戦では相手がいつ息を吹き返して立ち上がるかわかりません。
そこで、勝負がついたと思っても、まだ構えを崩さず気を抜かないというのです。これを「残心」と呼びます。
これは仕事も同じで、気をゆるめてストレスレベルを下げすぎないことです。
気分がいい、のんびりする時間は、たしかに心が休まりますから、1日の中でそういうリラックスタイムは欲しいものです。
しかし、仕事の時間にきちんと能力を発揮するには、少しだけストレスレベルは上げたほうがいいのです。つまり、緊張感を持ちましょう。適度な緊張感があれば、集中力は高まり、効率的な仕事ができます。

トランスフォーム仕事術ストレス編2

 

自分の能力を引き出すストレスレベル

名人、達人、プロと呼ばれる人たちは、自分の能力を引き出す「ユーストレス」がどんなものか、どのくらいのストレスレベルになると能力を発揮できるかを知っています。
有名な例ですと、巨人軍の長島茂雄氏が、自分がいちばん打てるときの心拍数を知っていたといいます。
前の打者を待つ間のウェイティングサークルで、長島氏は素振りをします。少しずつ心拍数を上げて、「よし、これでいいぞ」となると、打席に入ったそうです。
これをあなたに置き換えてみてください。あなたがもっとも集中して仕事ができるときは、どんな状態でしょうか。まずは自分の最適なストレスはどのくらいかを知ることが大切です。それを把握して、あなたなりに、ちょうどいいストレスレベルに持っていく方法を身につけましょう。

トランスフォーム仕事術ストレス編まとめ

 
(「Are You Happy?」2010年8月号)

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松本幸夫 

ヒューマンラーニング代表 / 人材育成コンサルタント

1958年東京生まれ。著作は170冊を超え、年間約200回行う研修・講演のリピート率は92%という実績を誇る仕事術の達人。主な著書に『百田尚樹に学ぶヒットを生む仕事術』(総合法令出版)『人生がうまくいく「呼吸法」』(PHP研究所)『自己能力を10倍高めるトランスフォーム仕事術』(幸福の科学出版)『超強運』(あ・うん)『図解 スティーブ・ジョブズのプレゼン術』(総合法令出版)など。著作は、韓国、台湾でも翻訳され、ベストセラーとなっている。