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やる気のある子、意欲のある子に 育つために親ができること〔子育て110番〕

好奇心の芽生えを大切に

1才過ぎのAちゃんが、じわじわ、じわじわと、ドアに向かって這っていきます。私は、突然ドアが開く危険がないか、そばを走っているお友だちがいないかなどをサッと目で確認すると、「一体、何を発見したんだろう?」と、Aちゃんへの好奇心でワクワクしながら観察しました。

Aちゃんは、目的の場所に行くとペタンと座り、自由になった手でドアストッパーをひろい上げました。かわいいお目目が好奇心と意欲にキラキラ輝いています。「舐めるかな?」と思って見守っていると、やっぱりお口に持っていきました。一応、お教室の室内用ドアストッパーは定期的に洗浄消毒はしていますが、そうは言ってもママには抵抗があると思います。

私は、Aちゃんの好奇心の芽生えを尊重して、そうっと側に行くと、Aちゃんの正面に回って目を見て笑いながら、「うわぁ、Aちゃん、いいもの見つけたねー。よかったねー。いい子いい子」と言って頭をなでました。そして「それはね、ドアストッパーといって、ドアを止めるもの。Aちゃんももう少し大きくなったら、上手に使えるよ。ところで、これ知ってる? ここを押すと音が鳴るんだよ」と言って、ポケットに隠し持っていた、ストッパーよりも発展性のある玩具を見せました。するとAちゃんは、ストッパーを手からぽろっと落として、私が提示した玩具を手にとりました。

好奇心・興味関心こそ「意欲の源」

大人が不潔感や防衛本能から、反射的に子供が手にしたものを奪い取ったり、ただ「ダメ!」と言って否定すると、幼児は「これは汚いから舐めてはダメ」とは理解せず、心の中から自然に湧き出た好奇心や興味関心を否定されたと感じます。それが繰り返されると、やる気や意欲を出すこと自体が減っていく場合があります。

働く車に心惹かれる男の子は、ホイールローダーや高所作業車など、難しい車の名前をどんどん覚えます。図鑑のサメの種類を全部言える子もいます。大人も子供も、やはり好奇心や興味関心が、やる気や意欲の源です。だから1才といえども、好奇心の芽生えを否定せず大切にしてあげたいのです。

巧緻性(こうちせい)と自立心の育ち

たとえば、スプーンを持ったらごはんをぐじゃぐじゃにして汚してしまうからといって、ママがいつもごはんを食べさせてあげていると、巧緻性(こうちせい)(指先の器用さや上手に物を操る力)の育ちが遅くなります。自分でやろうとする自立心の育ちも遅くなり、「自分でできる!」という自信がなかなか育ってきません。

はさみやのり、お絵かきの道具も同じです。危険だ、汚されると思って触れさせないでいると、巧緻性や創意工夫の力が育ってきません。2才の子がはさみに興味を持ったら「はさみって面白そうだよね」と興味関心を肯定してあげて、その上で、手を切りにくいはさみで、正しい使い方を教えてあげましょう。親が寄り添えない時間帯には、手の届かない場所にしまえばいいと思います。
わが子が何に興味を示すのか、親はそのことにワクワクと関心を寄せながら、肯定感たっぷりの子育てをしてあげましょう。

(「Are You Happy?」2019年9月号)

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奥田敬子 

早稲田大学第一文学部哲学科卒業。現在、幼児教室エンゼルプランVで1~6歳の幼児を指導。毎クラス15分間の親向け「天使をはぐくむ子育て教室」が好評。一男一女の母。

 

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