今日からできる血糖値コントロール

近年、「血糖値スパイク」「ジェットコースター血糖」といった言葉がテレビなどで取り上げられ始めています。
食後に血糖値が急激に上がり、その後、急激に下がる現象のことで、体の不調だけでなく、イライラや不安を引き起こすなど、心にまで影響を与えると言われています。血糖値という側面から、心と体の健康を守るコツについて調べてみました。

Q「血糖値」って何?

A. 血液中のブドウ糖濃度のことを言います。食事を取るたびに上下に変動しますが、一定の範囲内であることが好ましいとされています。
健康な人なら、空腹時で70~110㎎/㎗、食後30分~1時間でピークまで上がり、2時間程度で140㎎/㎗以下に落ち着きます。

Q 血糖値は低ければ安心?

A. 糖は体のエネルギー源となる重要な成分です。血糖値が70㎎/㎗以下の低血糖状態になると倦怠感や眠気が、50㎎/㎗を下回ると冷や汗や動悸、震え、顔面蒼白の症状が現れ、30㎎/㎗を下回ると意識消失や昏睡状態に陥ることもあります。高くても低くてもよくないのです。

Q 糖質制限ダイエットって本当にいいの?

A. 短期間の糖質制限によるダイエット効果は認められていますが、長期的な安全性や有効性はまだはっきり分かっていません。体は糖をエネルギーとして使えなくなると、筋肉をつくっているたんぱく質を分解してエネルギーに変えていきます。そうして筋肉が減ると代謝が低下してしまいます。また、かえって脂肪摂取量が多くなり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上がってしまうというデータもあります。あくまで、肥満傾向にある方などが適正体重に戻すときの短期的な方法と考えるべきでしょう。

Q 健康な人は血糖値を気にしなくて大丈夫?

A. 健康診断などで問題がなくても、「隠れ糖尿病」の人がいると言われています。過度に不安になる必要はありませんが、食事によってどのように血糖値が変動するのかを知り、長く健康でいられるように上手にコントロールしていきましょう。

Q「糖尿病」ってどんな病気?

A. 食後は血糖値が上がりますが、一定の範囲内に保つために、血糖を下げる「インスリン」というホルモンが膵臓から分泌されます。その作用が低下し、血糖値が高い状態が続くのが糖尿病です。高血糖が続くと血管に負担がかかり、細い血管が通っている神経や網膜、腎臓に合併症が現れます。さらには、心筋梗塞や脳梗塞など、死亡リスクのある大血管の病気につながる危険性も。治療や食事、運動などの生活習慣の改善によって予防できます。


食事・運動・生きがいが、血糖値コントロールの秘訣です

糖尿病専門医、総合内科専門医である川野真代さんに、血糖値を適正に保ちやすい体質をつくる方法や、血糖値と心の関係について聞きました。

日本人は糖尿病になりやすい

血糖値の異常や、糖尿病に悩む方は、年々増加傾向にあります。その主な原因は、「栄養の過剰摂取」「運動不足」、それに伴う「肥満」です。現代は欧米型の食生活が普通になりましたが、日本人を含むアジア人は、欧米人よりも血糖値を下げるホルモンである「インスリン」が出にくい体質なので、砂糖が多く含まれた飲料やスイーツ、野菜をほとんど摂らずに、おにぎりやうどんだけ食べるといった、糖質が多い食生活は合わないのです。
また、血糖値が急激に上がると、体は血糖値を急激に下げようとするため、食後に低血糖症状を起こす人が出て、イライラや不安感などの症状が現れることがあります。血糖値は心と密接に関係しているのです。日ごろから過剰な糖質摂取を控え、バランスの良い食生活をすることが大切でしょう。

筋肉をつけて代謝アップ

次に取り入れたいのが運動の習慣です。血糖値が上がると分泌されるインスリンは、血液中の糖を筋肉や脂肪細胞へと運びます。そのとき、筋肉量が多ければ糖を効率的にエネルギーとして消費できるため、血糖値が下がりやすくなります。つまり、筋肉をつけることで、血糖値コントロールをしやすく、脂肪がつきにくい体質になるのです。働いている方であれば、行き帰りの通勤時間に1駅分歩く、エレベーターではなく階段を使う。主婦であれば、雑巾がけをしたり、立って家事をするなど、日常生活の中に体を動かす習慣を取り入れるだけでも効果的です。

生きがいを持とう

生活習慣が原因で糖尿病になっている方の場合、刹那的な傾向性があるように感じます。患者さんの中には、「将来どうなっても構わないから好きなものを食べるんだ」などと公言される方もいます。糖尿病は自覚症状が出にくい病気ですし、将来合併症が起こると言われても、危機感を持ちにくいので努力を継続することが難しいのでしょう。健康な人であっても、将来のために良き生活習慣をつくることは大切だと思います。生きがいや目標があってこそ、努力は続けられるもの。ぜひ一度、どんな人生を歩みたいのかを考えてみてください。それが血糖値コントロールにもつながるはずです。


あなたの症状は正常? キケン?血糖値健康チェック

あなたの生活習慣や心と体の健康状態から、血糖値の異常がないかチェックしてみましょう。

Let’s Check

□栄養バランスの取れた食事をしている
□運動をする習慣がある
□朝すっきり目覚められる
□ストレスはあまりない、もしくは発散できている
□心が不安定になることはあまりない

↓チェックが多いあなたは……

血糖値は正常◎
このまま良い生活習慣を

良い生活習慣が身についているあなたは、血糖値に異常がある可能性は低いでしょう。ただし、健康だからといって慢心は禁物。10年後、20年後も健康を維持して元気に活躍するためにも、コツコツと小まめな努力を続けましょう。


Let’s Check②

□朝食を抜いている
□食後、だるさや動悸、イライラ、不安などを感じることがある
□寝ても疲れが取れない
□食後、激しく眠くなる
□最近、太りやすくなった

↓チェックが多いあなたは……

もしかしたら
「隠れ糖尿病」かも……?

食後に原因不明の不調が現れるあなたは、「血糖値スパイク」や「ジェットコースター血糖」と呼ばれる、隠れ糖尿病の可能性があります。
食事の内容や、食べる順番を見直してみましょう。症状が続く場合は医療機関の受診をおすすめします。


Let’s Check

□足や手の指などに、ピリピリ、ジンジンと、うずくような痛みがある
□食べても痩せる
□喉の渇きがひどい
□尿量が多く、何度もトイレに行く
□疲れやすく、体がだるい

↓チェックが多いあなたは……

糖尿病の可能性が!
医療機関を受診しましょう

複数当てはまる場合、糖尿病が疑われます。さらに、急激な体重の減少がある場合は要注意です。放っておくと失明や心臓病などの合併症が起こる可能性があるほか、糖尿病でなくとも何らかの不調が隠れていることも。症状が悪化する前に医療機関を受診することをおすすめします。

(「Are You Happy?」2019年11月号)

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