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汗と上手く付き合う〔岡野宏のビューティーレッスン〕

舞妓の汗の止め方

汗かきが多いオペラ歌手の中でも、ルチアーノ・パヴァロッティ氏の汗の量は群を抜いていました。本番同様のゲネプロで歌い終わったばかりの彼は、髪も衣装も汗でびっしょりです。パヴァロッティ氏のマネージャーが私に顔を寄せました。

「先週、京都で観た舞妓は、踊りの後もきれいな化粧が崩れていないし、重たそうな着物を長時間着ても汗をかいていなかった。何か特殊な化粧品か薬があるのではないか?」

そこで、京都の置屋「駒屋」の女将に電話を入れると、「えー、そんなことでわざわざ」と言いながら答えてくださいました。

「胸上に平たい帯紐を締めると、汗が止まるようになります。もう長い間、ここ祇園ができたときから舞妓、芸妓の着付けをする箱屋さんが、そうしてくれています」

早速、スポーツ用品売り場へ走り、帯紐代わりに伸縮するベルトを購入し、けげんそうな顔をするパヴァロッティ氏の胸上にベルトを巻きつけ一幕歌ってもらうと、共演者から不思議がられるほど汗が止まりました。

締めて汗を止める

相撲取りは、大きな身体で大量の水や酒を飲む割に、あまり汗をかきません。本番前、タオルで軽く拭く程度で済んでいるのは、まわしを締める位置に、胸元同様汗が止まるポイントがあるからで、楽屋でまわしを外した途端に汗が噴出します。時折、大汗をかいている相撲取りがいるのは、まわしが緩いためです。

顔や首の汗は胸の上を、腹回りや下半身の汗は腰骨の上を紐などで締めると汗止め効果があります。

舞妓さんの使っている汗止め帯がネットショップでも買えるようになりました。どのメーカーのものを買ってもそんなに差はなく、どれも2500円ほどですから、ご自身に合うものをお選びください。汗は体温を調整する大事な役目もしていますから、始めは2時間くらいから試してみましょう。

汗のメーク対策方法

汗には美しく感じるかき方があります。スポーツでかく汗、幼稚園の送り迎えに自転車をこいでいるときの汗など、何か一生懸命取り組んでいるときに見せる汗は、他人が見ても不快に感じませんが、それは、化粧崩れを起こしていない、あるいはすっぴん顔に限ります。汗をかきそうな日は、メークの崩れが見えないよう、またできるだけすっぴん顔に近づけるよう、ファンデーションはTゾーンと目、口の周りを薄めにし、シャドー等の色物は避けます。

汗に強いファンデーションは、資生堂の「スポッツカバー ファウンデイション」やカバーマークのファンデーションです。両方とも皮膚呼吸しますので、運動するときや結婚式、公園で遊ぶときにはよいと思います。

女優たちがメークの仕上げに使うフィッティングスプレーは、吹きかけてから少し時間を置くと、程よく乾燥し、化粧崩れを予防してくれます。МACの「プレップ プライム フィックス+」、クラランスの「フィックス メイクアップ」、シュウウエムラの「パーフェクターミスト」などが、女優が好んで使っているものです。

汗と上手に付き合う

美容において汗をかくのは悪いことばかりではありません。共に出る皮脂が肌の乾燥を防ぎ、潤いを与えくれます。吉永小百合さんは「運動をして出した汗は、高級美容液ね」と、おっしゃいます。汗をかくと肌が荒れるという方がいらっしゃいますが、話を聞くと、後の処置を上手くしていないことが多いようです。汗の中の塩分が肌を荒らしますから、汗をかいた後はできるだけ早くシャワーなどで洗い流しましょう。

汗は、予防と処置で自他ともに感じる不快を減らすことができます。汗と上手に付き合い、暑い夏を上手に乗り切りましょう。

© K’s color atelier

「涼んでばかりいないで たまには汗をかきましょう」

今月のレッスン

人に会うときは、前もって涼しい場所で汗を落ち着かせましょう。(女優はビルの中のトイレを愛用)

 (「Are You Happy?」2019年8月号)


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