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「“かわいい人”になる」-岡野宏のビューティーレッスン

40年にわたりNHK美粧部に在籍し、国内外の女優や政治家などのメークアップに携わってきた岡野宏さんが考える「魅力ある人」とは? さあ、一緒に美しさへの一歩を踏み出しましょう。

“美しい”から“かわいい”へ

女性にとって“かわいい”は永遠の課題で、美人でもかわいさがないと魅力は半減するでしょう。

“かわいい”女優の元祖はブリジット・バルドーです。彼女が登場するまで、美人は面長で目が上がり気味とされていましたが、垂れた離れ目、カエルのようにつぶれたバルドーの顔はファニーフェイスと呼ばれ、世界のモデルや女優たちが「美人顔なんてもう古い」と言わんばかりに真似をし、大流行しました。

 

“かわいい”の代表は赤ちゃん

私が女優に“かわいい”を造るとき参考にするのが赤ちゃんの顔のバランスで、頭部下半分が顔という横長のフォルムになります。大人も前髪を下げるとかわいくなるのは、赤ちゃんと同じように横長が強調された顔になるからで、バルドーの顔もこのバランスです。髪の毛先を軽く跳ねたり、横に流したり、目の間を離すと横のラインが強調され、かわいい雰囲気が現れます。

そして、くりくりとした目もかわいさの特徴です。目の下にラインやマスカラを加え、タレ目気味にすると愛らしさが強まります。ファッションは、フリルやフレアー、ラウンドの襟など、丸や曲線のデザインを選び、色はパステルカラーやピンクの要素を含んだものを身につけると“かわいい”に近づくのです。

 

大人のかわいさは小物から

さて、かわいくなるための要素を並べましたが、〝かわいい〞のやり過ぎほど嫌なものはありません。

デザイナーのイヴ・サンローランが来日され、越路吹雪さんのためにドレスをデザインしたときのことです。やわらかいフリルがついたものや、三段切り替えが揺れるワンピースなど、かわいらしいデザインのものでしたが、同時に品も感じられました。

「日本の女性のイメージに合わせて、デザインはかわいらしく、けれど色は渋くしてバランスをとりました」とサンローランはおっしゃいました。女性はかわいさの足し算を好みがちですが、それだけでそろえてしまうと品がなくなると教えてくださったのです。

大人の女性は基本の装いをシンプルにし、バッグ、靴、ベルト、マニキュア、イヤリングなど小さな面積から、デザインや色で少しずつかわいさを加えてみてください。樹木希林さんや桃井かおりさんのように、モノトーンの装いの中に、シャツの襟先を丸くしたものや、優しい色のものを少しだけ加えるほうが、効果的にしゃれた大人のかわいさを演出できま
す。

 

心に残るかわいさ

あるとき、遠藤周作さんが「かわいい人が思い浮かばない」と困っていました。記者から記事のためにかわいい人を紹介してほしいと頼まれたのだそうです。

「顔の造りがかわいい人って案外忘れてしまうね。思い出すのは笑顔がかわいい人ばかり」

私は、朝のテレビ小説の主演女優と「仕上げのパウダーを忘れても微笑(ほほえ)みだけは忘れないように」と約束しています。笑みがないと相手の心に残らないからです。

「岡野さんの心に残るかわいい人は?」

ぱっと浮かんだのは、政治家の田中角栄さんです。彼の顔の脂汗をパウダーで抑えたとき、「悪いねー」というように見せた笑顔のかわいらしかったこと。強面(こわもて)の顔からのギャップが大きく、強く心に残りました。真剣な顔の合
間から表れる笑顔のかわいさは、化粧や衣で装うより相手の心を動かし印象に残るのです。

面長の人や、目力のある美人系、強面の人は、表情が伝わりにくいので、丸顔の人より少し余分に笑顔を見せましょう。

「どんな顔でも笑顔がいいとかわいい人として記憶している。〝かわいい〞の決めては、笑顔きりないね」と遠藤さんはおっしゃいました。

岡野先生第7回-本文

© K’s color atelier

「かわいいはまるい。まるいはかわいい。それ ほんとにかわいい?」

 

今月のレッスン
メークの仕上げは笑顔です。上手にできたか否かは、相手の微笑み返しに表れます。

 
(「Are You Happy?」2017年11月号)

 


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岡野宏先生

岡野宏 

1940年、東京都生まれ。テレビ白黒時代よりNHKアート美粧部に在籍。40年以上にわたり、国内外の俳優だけでなく歴代総理、経営者、文化人まで、延べ10万人のメークやイメージづくりを行う。“「顔」はその人を表す名刺であり、また顔とは頭からつま先までである”という考えのもとに行うイメージづくりには定評がある。NHK大河ドラマ、紅白歌合戦等のチーフディレクターを務め、2000年にNHK退所後は、キャスターや政治家、企業向けにイメージアップの研修や講演活動などを国内外で行っている。著書に『一流の顔』(幻冬舎)、『渡る世間は顔しだい』(幻冬舎)、『トップ1%のプロフェッショナルが実践する「見た目」の流儀』(ダイヤモンド社)、『心をつかむ顔力』(PHP研究所)等。

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