お金に愛される子供に育つ“お金教育”

きちんと教わった記憶がない人も多く、悩んでしまう「お金」の教育。でも実は、お金について小さいうちから正しく学んだ子供は、豊かな人生を送れる可能性が高いのです。富豪の二世教育の専門家・榊原節子さんに、小さいうちから教えておきたい“お金教育”について聞きました。

 

幼少期に始めたいこと

“お金教育”のスタートは?

おじいちゃん、おばあちゃんから少し大きなお金をもらったときなどが、“お金教育”スタートのチャンス。例えば1万円なら「エチオピアという国なら1年かかっても稼げないくらいのお金なんだよ」などと、小さいうちから「お金の価値」を教えると、自然と感謝の気持ちが湧くでしょう。お礼の挨拶をする、肩もみをしてお返しをする、直接渡されたのでなければお礼状を送るなど、「感謝の気持ちを表す」ことの大切さを教えることもできます。

 

お年玉をいただいたら?

お年玉はたいてい子供には大きすぎる額ですから、「本当にやりたいことのために取っておこうね」と伝え、子供名義の通帳をつくって親が管理しましょう。全額を貯金するでのはなく、1割ほどは子供がほしがっているおもちゃなどに使わせてあげて、お礼を言う機会をつくると、あげた側も喜びます。通帳はときどき見せて、金額を確認させてあげるといいですね。

 

お小遣いは成長の度合いを見て

最近はお小遣いをあげない家庭も多いようですが、お金教育をするうえでは大きな役割を果たしますので、成長の度合いを見つつ、だいたい5歳ぐらいからあげ始めることをおすすめします。都度払いではなく、最初は週給制にして、小学校に上がってしばらくしたら月給制にしてもいいでしょう。同時に家族の一員として、お風呂洗いや洗濯物畳みなどのお手伝いも始めたいですね。

 

小中学生になったら押さえたいこと

お小遣いはどうあげる?

小中学生にはまとまった額のお小遣いを渡すことが、やりくりを覚える絶好の機会になります。一度に大きなお金を渡すのは不安かもしれませんが、しっかりと話し合ってぜひチャレンジしてみてください。

金額の決め方

① お小遣いでまかなうものの範囲を決める
お菓子やおもちゃだけでなく、ノートや鉛筆など、学校で必要なものも含めて大体の予算を組むことがおすすめです。成長するにつれて、交通費や洋服代も含めて渡し、責任の範はん疇ちゅうを増やすのもよいでしょう。

② 1 割貯蓄を教える
①の金額に、1 割くらいの余分なお金を加えて貯金もできるようにすると、「貯める」ことも覚えられます。

足りなくなったら
① 一度目は補てんし、反省会を開く
友達の誕生日プレゼントや映画を観に行くなどの大きな出費で不足したとき、一度目は補てんしてもいいですが、その後に反省会を開いて、「臨時費を取っておこうね」などと教えてあげましょう。

② 前払いにして、来月分から差し引く
子供が目の前のものを我慢して収入の範囲内でやりくりすることを覚えるためにも、次に不足したら「前払い」として渡し、翌月のお小遣いを減額するなどして対応します。

③ 値上げの交渉は子供から
成長するにつれて、決められた金額では足りなくなった場合は、子供から「なぜ足りなくなり、今後はいくら必要か」を両親の前で説明してもらうと、プレゼンテーション力も鍛えられます。

 

お父さんに協力してもらうことは?

いつも忙しいお父さんですが、例えば週に一度、仕事の話などをしてあげることも、立派な“お金教育”です。お父さんが働いてお金を稼ぎ、皆が生活できていることや、仕事の内容など、ちょっとしたことでも大きな勉強になります。例えばスーパーで働いているなら、「日本がアスパラガスをたくさん輸入している国で洪水が起きると、アスパラガスが採れなくなるので高くなる」などと教えると、経済がどのように成り立っているのかがわかります。

 

寄付は“させる”べき?

「人のためにお金や時間を使う」という感覚を小さいころから身につけるためにも、機会があればぜひ「寄付」をさせてあげましょう。自然に寄付ができる人は、身近な人が実践する姿を見てきたケースが多いので、親の後ろ姿を見せることも大切です。献血するときに子供を連れて行ったり、使わなくなったおもちゃを他の子に譲るよううながしてもいいでしょう。ある富豪は子供にお小遣いを渡すとき、3 割を寄付するように言っています。

 

高校生や大学生になったら

アルバイトはさせたほうがいい?

「子供は勉強が仕事」という考え方もありますが、社会勉強になるのでアルバイトは経験したほうがいいですね。大学で何を勉強したらいいかに気づくこともありますし、就職に備えることもできます。学校で禁止されているなら、中高生向けのインターンや家庭内でのアルバイトもいいでしょう。家の仕事でも、報酬に見合うものになっているか、きちんと出来を見てから支払ってあげてください。

 

学費は親が面倒を見るべき?

大学の学費をまかなうために、生活を切り詰めて無理をしなければならないなら、奨学金などを検討しましょう。学費は基本的に親が負担するという風潮は決して世界の常識ではありません。欧米では学費や一人暮らしの生活費をアルバイトで稼がせることも珍しくないのです。私の知っているカナダの実業家の方は、家に余裕はあったそうですが、学費の2 割をアルバイト
をして払うように親から言われていたそうです。

 

やりくりを見せたほうがいい?

一人暮らしの予習にもなるので、機会があれば家計簿を見せてあげましょう。難しければ水道光熱費や税金、健康保険など、生活するのには意外とお金がかかっていることを教えるだけでも違います。お金を使っているという自覚が芽生え、電気のつけっぱなしなどの無駄遣いも減りますよ。

代々続く富豪も“お金教育”をきちんとしています

子供が親の手を離れて一人暮らしを始めるまでに、収入の範囲内で暮らすマネジメント力を身につけさせてあげたいものです。私は“お金教育”は“生活力教育”だと思っています。例えば、お小遣いが足りなくなっても補てんしないことで、「学校帰りに友達がアイスクリームを食べていても、予算に入っていなかったら自分は我慢する」という「欲望のコントロール」ができるようになりますし、赤字にならずに1 カ月やりくりできたら、「努力が報われる達成感」を味わうこともできます。
お金教育はマネー・マネジメントだけでなく、人格教育にもつながるのです。

富豪の二世教育を見てみると、欧米で何代も続く富豪に共通するのは、子供に厳しいこと。
お金についても甘やかさずにきちんとしつけています。例えばメイドがたくさんいる家では、「メイドを雇っているのは私たち親であって子供であるあなたではないから、命令してはいけません」と教えます。また、代々続く富豪たちは、子供に一族の歴史や信念、家訓や家風など、これまで培ってきたものを伝え、一族への誇りと自信を持たせています。お金だけをただ受けついでも没落してしまいます。代々受けつがれてきた「価値観」を伝えることで、はじめてお金を次の世代に受けつげるのです。

「富豪」と聞くと別の世界のことのように感じられるかもしれませんが、お金教育の基本は変わりません。普段の買い物や大きな買い物、贈り物、保険や投資といったものまで、何でもお金教育の学びの材料になるのです。
お金は幸せになるためのものなので、子供に教えながらともに学んでいきましょう。

(「Are You Happy?」2017年8月号)

印刷する