男性のものだったセーター
「イギリスの伝統スポーツ・ポロは、騎乗して駆ける姿は格好良いが、何しろ寒いし汗もかく。そこで、汗を吸い寒さをしのぐスウェットシャツができたんだ」
映画監督の伊丹十三さんが話してくれました。編み物であるセーターは通気性が良く、織物に比べて伸縮性があります。
「今から200年ほど前、そのスウェットシャツがなまってスウェッーター、セーターになったそうだ」
セーターはそもそも男性の着るものでした。アイルランドにあるアラン諸島の漁民発祥のアランセーターや北欧のノルディックセーター、カナダのカウチンインディアンセーターは、太い毛糸で二重に編まれています。一度入った空気は外に逃げないため保温性が高く、中に着るセーターというより厚手のオーバーコートのように使われるものです。その素朴な風合いと単純な柄、そして天然の色彩は飽きることがなく、普通のセーターに物足りなくなったおしゃれな男性が好んで手に取ります。
女性のセーターの歴史
男性のものだったセーターやジャージを女性のスーツに取り入れ革命を起こしたのは、デザイナーのシャネルで、それをおしゃれなものに格上げしたのがソニア・リキエルです。
ソニア・リキエルのニットの着方は、全体をやわらかくルーズにし、1カ所だけを引き締めます。歩くたびにニットワンピースに浮き上がるソニアのやせた体の線、その押さえた色気は世界のおしゃれファンの憧れでした。ニットは細身の体を装飾するもので、太っている人には似合わないという神話を作ったのは彼女です。
セーターを着こなすコツ
セーターは、やせた人も、ぽっちゃり体型の人も、体の線を拾いすぎないゆとりのあるサイズを選び、首、ウエスト、手首など、どこか1カ所締めることで上手い着こなしに見えます。流行りのオーバーサイズのセーターは、Vネックの開きを深くし、縦の線を強調するとすっきりし、また、骨ばったデコルテを見せることで軽さが出ます。
肩落ちタイプのデザインのセーターは、いかり肩、肩幅の広い人に似合います。なで肩、ドロップショルダーの人は、くっきりと肩のラインが出るセーターを選ぶと良いでしょう。やせている人、首にしわがある人は、タートルネックでカバーします。
女優たちがニットワンピースを着るときは、体の流れに気を配ります。全身が映る鏡の前で椅子に座り、足を組み替え、しわの見せ方、生地の張り、ツレがどのように出るかを確認します。
次に立ち上がり、横からはS字に、正面からはひょうたん型に見えるよう、胸やヒップのふくらみが足りなければパットなどを使って体型を補正しています。着物の体型補正と同じと思ってもらえれば良いでしょう。
下着のラインは見せない
近ごろのセーターはユニセックスなものが増え、女性が男性物を着ることも珍しくなくなりました。デザインがシンプルな分、編み目の大きさが雰囲気を変えます。目の細かいハイゲージニットは、繊細な作りから上品でシックな印象を与え、フォーマルな席でも着られるようになりました。
ざっくり編まれたローゲージニットはカジュアルな場に合い、人柄の温かさを引き立てます。
とくにワンピース・ニットは、その違いがはっきり表れます。シンプルなセーターは下着のラインが目立ちやすいので気をつけましょう。
迎える冬を暖かいセーターで乗り切りたいものです。
愛着のある一枚で 心も暖かく
© K’s color atelier
今月のレッスン
着飽きたセーターには、小さめのスパンコールやビーズを付けてリフォームしてみましょう。
(「Are You Happy?」2022年1月号)
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