枠内すべてがあなたの顔
画面を通して、気軽に世界へ発信できる時代になりました。画面越しの顔の印象は、目で直接見たときとは違い、映っているもの全体、姿勢やメーク、ヘアスタイル、時計などの小物だけでなく、壁、部屋の置物までが人の印象に影響する特殊性があります。プライベートな空間からの映像となると、一層気になるのが人の常です。
嘘のものは話が嘘くさくなる
見ている人は、ちょっとしたことが気になります。爪の汚れや伸びすぎ、深爪、ボタンのかけ方、取れそうなボタンに目がいきます。髪の乱れや無精ひげなどラフな感じを狙ったのに不潔に見えてしまうときは、観葉植物を置くとカバーしてくれます。
「造花を飾っている人がいるけど、言葉が嘘くさくなる。枯れ気味でもいいから本物がいいわよね」
そう言ったのは女優の樹木希林さんで、人工物と天然物の与える印象の違いをよくご存じでした。
相手に読み取ってもらう
こう思われたい、見てほしいという希望がある場合は、背景で演出するのもよいでしょう。生花や観葉植物を置くと清潔感が出ますが、わざと造花を置いて異世界の雰囲気を出すのもおもしろいかもしれません。大胆に置かれたものより、ちょっとした置物などの色や形、それらの素材が、相手の心に引っかかります。
TV界では頭のよさを見せるときに使うのが本棚で、イメージしてもらえそうなタイトルの本や種類、組み合わせ方まで考えて並べます。そこから相手に読み取ってもらうのです。
背景を効果的に使う
首相官邸で行われる総理の記者会見場は数カ所用意されており、濃紺のベルベットの壁を使うときは、大事な問題について話すときで、総理が浮き出て見え、見る側も話に集中しやすい画面になります。
個人的な会見には、ベージュ系統の優しい色が組み合わされた壁に淡いグリーンの厚織のカーテンがかけられた旧官邸が、難しい話や重い話には、角がなく丸みを帯びた廊下兼居間が選ばれ、話をやわらかく進められるようになっています。孟宗竹(もうそうちく)や庵治石(あじいし)、和紙などの天然素材が多く使われている首相官邸は、日本らしさを伝えるだけでなく、言葉に重みや、やわらかさを与えてくれる背景になるのです。
姿勢で印象づける
枠で切り取られると一層気になるのが姿勢で、絵画の構図のように、印象を大きく左右します。
新人アナウンサー研修では、美しい基本の姿勢を教えています。立ち、座り、どちらのときも背中で手を組み、反対側のひじを持ちます。背骨を引き合わせたら手を放して下に降ろし、あごを引いた状態を保ちます。背で組んだ手がひじまで届かない人は、背が丸まっており姿勢が悪く見えているので、無理のない範囲で腕を多く組めるようにしましょう。
視線をどこに向けてよいのか迷うという声を聞きますが、カメラに真っすぐ視線を向けると強すぎるので、カメラの脇を見ると、よい塩梅になります。
あか抜けて見せたいなら、カメラに対して体を斜めに構え、片方の肩を少し下げ気味にして前に出すとよいでしょう。相手にぐっと歩みよった感じになります。元NHKエグゼクティブアナウンサーの松平定知さんは、片ひじだけをテーブルに置いて身を乗り出した姿がトレードマークとなり、たいへんな人気を得ました。
画面越しの顔にはなかなか慣れないものですが、あなたなりの自分の印象を作ってみてください。
© K’s color atelier
背景の色でもイメージは変わります
今月のレッスン
伝えたい内容によって、背景を変えてみましょう。
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