成熟した大人にとってみれば、ゲームは他愛もない玩具です。しかし、子供がゲーム機を手に入れて自由に遊び始めると、いろいろな問題が生じてきます。前回は、「子供は大人に比べて自制心が未発達なので、ゲームの中毒性にハマると自分で抑制することが難しくなる」「ゲームに熱中し過ぎると、豊かな知性や情操を育む時間が削られていく」という二つの点についてお話ししました。今回は、よりハードなお話になります。
論点③【自己中心性の助長】
ファミレスで食事を待つ間、子供が周りも気にせず、親ともしゃべらず、手元の小さな画面だけを見てゲームをしている光景を目にすることがあります。親はというと、子供に無関心な様子でスマホをいじったりしています。そんなとき、「もしこの世にゲーム機もスマホもなかったら、この親子は、外食の時間をどう過ごしていただろうか。そこには特別な会話が生まれたのではないだろうか」と想像せずにはいられません。
傍若無人(ぼうじゃくぶじん)という言葉がありますが、意味は「まるで傍(そば)に人がいないような自分勝手な振る舞い」のことです。私は古い人間かもしれませんが、家族や知人が目の前にいるのに、ゲームやスマホをいじるのは、その人を蔑ないがしろにした失礼な態度だと思います。
もし親がけじめやルールを示さず、時も場所もわきまえずゲームをすることが許されたなら、子供の中に、自己中心性が育つ可能性があります。自己中心性とは、「自分しか見えておらず他者に無関心」「自分はかわいいが他の人は尊重しない」という傾向性です。他者の気持ちを想像する力も弱い。子供をそうした自己中にしないためには、「人の話を聞く」という経験、「人に話をする、話を聞いてもらえる」という経験、また「人を観察する」「人の気持ちを想像する」という当たり前のことを大事に考え、毎日の生活の中で経験させてあげることです。それによって、人への関心や思いやりの心が育っていくからです。
論点④【ゲームを止められてキレるのは頭がハイジャックされているから】
小学五・六年生や中高生の親御さんからは、「一日何時間もゲームにのめり込んで、止めさせようとするとキレる」というご相談もいただきます。キレたときのお子さんの様子を尋ねると、「目が怖い」「急に人相が変わる」「怒鳴る」「暴力的になる」と言います。この症状、何かに似ていませんか? そう、アルコール中毒や麻薬中毒、ギャンブル中毒の人の禁断症状によく似ていますね。分かりやすく言えば、お子さんは頭の中をゲームにハイジャックされているのです。一日の大半、頭の中でゲームの音が鳴り続け、画面が動きまわり、ゲームをすること以外考えられなくなっています。憑依(ひょうい)状態と言っていいでしょう。最初は、ただ楽しんでいただけ。でも、脳の深い所にまで影響するような遊び方をしてしまうと、コントロール不能に陥ってしまいます。
人生経験のない子供には、「このままいけばどうなるか」が分かりません。だから、ゲームを買い与えるという選択をするのなら、大人が責任を持って時間や場所のけじめやルールを教え、それを守らせながら安全な範囲で遊ばせてあげましょう。ゲームを購入する前に、まず親が方針をしっかり決めておくことをお勧めします。
(「Are You Happy?」2020年1月号)