ひと手間がきれいを生む〔岡野宏のビューティーレッスン〕

カラヤンのひと手間

魅力的な人は、ひと手間をかけています。
ちょっとしたことですが、そうするか否かで、大きな差がつく大切なことです。

指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤンが舞台に上がる前、彼のシルバープラチナの髪はカーラーで巻かれ、スプレーで固めて形付けられます。
さあ出来上がりと思っていると、カラヤンが鏡越しに注文してきました。
「ブラッシングをしてください」せっかく整えて固めた髪にブラシを入れ崩してしまいます。

前髪の根元にだけスプレーを吹くと、彼は頭を左右にぶるぶる振りました。

「OK」これは、カラヤン流のひと手間です。
なるほど舞台上では、指揮棒とともにシルバープラチナの髪が揺れて輝き、目でも楽しませてくれました。
スプレーを使っているので、揺らしても乱れすぎずに美しいスタイルを保っています。

最近のヘアーの流行は、風にさらさらと動くようなスタイルですが、形をキープするためか、ヘアースプレーでがっちりと固めてしまう人が見られます。
しかし、そうすると動きが消えて、今ひとつ時代の波に乗れていません。
カラヤンのようにスプレーをした後に、一度ブラッシングをしてみてください。
ひと手間が、今を生きている雰囲気を醸し出してくれます。

5分がものをいう

さて、メークにおいてもひと手間が、きれいに差をつけます。

昭和を代表する女優・山田五十鈴さんが、長時間の舞台や深夜までかかる過酷な撮影でも化粧崩れが少なく、美しくいられた秘密は、ファンデーションを塗る前のひと手間にありました。

山田さんは乳液や美容液を塗ってから5分ほど時間を置かれます。

「吸収するのを待って、残った油分や水分をティッシュで押さえて取ると、ファンデーションのノリが違うの」この時間を作るのは容易ではないでしょう。
しかし、ムラやヨレの原因は、乳液や美容液、下地クリームなどの余分な油分です。
肌に吸収する時間(人によって異なりますが、おおよそ5分)を待ってから、余分な油分をぬぐうことでファンデーションがきれいにのり持ちもよくなるのです。

仕上げのひと手間として、一度塗ったほうれい線、まぶた、口周りのファンデーションをきれいなスポンジで半分ほど取り去れば、さらにメークのヨレを防ぐことができます。

ひと手間が心を引き締める

さて、ひと手間はよくなるためにしますが、ふた手間はいけないのでしょうか? それは、いけません!

日本画家の平山郁夫さんが初雪の富士山を描くとき、山の頂上の雪には絶対的な分量があり、最後の決めのひと手間は、そこに筆を入れて仕上げに持っていくことを教えてくれました。

また、料理人・辻嘉一さんの店に食事に伺ったとき、出された椀物の蓋に描かれた菖蒲の葉に雫が2〜3滴打ってあるのを見て、「ああ、ひと手間は、〝それをすれば完成〞ということを意味するものなのだ」と感じました。
ですから、ふた手間はないのです。

自信をつける儀式

同様に、メークの最後のひと手間は、自身の心に響かせましょう。
山田五十鈴さんも、森光子さんも、メークが終わった後、締めにもう一度スポンジで一、二度叩き、必ず鏡越しに私とうなずき合いました。
「これで大丈夫ですか」の確認を取るためで、私がうなずき返すのは「大丈夫ですよ。自信を持って行っていらっしゃい」の安心を与えるためです。
すなわち、彼女たちのひと手間は、自信を持って出向くための儀式です。

お出かけ前、ひと手間の後、鏡に映った自身の姿にうなずきましょう。
それは胸を張って一日を過ごせる大きな自信となります。

© K’s color atelier

未知なる場所も ひと手間が 心のお守りに

今月のレッスン

ひと手間の後、鏡に映った自分にOKを出しましょう

 (「Are You Happy?」2020年5月号)


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第73回 「その飾り要りますか?」

(2023年5月号)