幸福の科学学園・那須本校と関西校のふたつの中高一貫教育校で、宗教教育を指導してきた竜の口法子さん。今回は番外編として、那須本校の野球部が、夏の栃木県大会で初の3回戦進出を果たした軌跡を紹介します。(2021年10月号掲載)
7月16日、下野新聞の朝刊を広げ、再び涙があふれた。那須本校の高校野球部は2010年に創部し、夏の栃木県大会でやっと一勝できたのが創部10年目。それからわずか2年後の今年、創部12年目に栃木県ベスト16になったのだ。
私は生徒たちを心から愛しているが、スポーツの勝敗は冷静に見極める。抽選会で組み合わせが決まると、「何回戦までかな」と、運営を考えるのだ。今年は、2回戦で当たる相手がベスト8常連のシード校。うちとの戦力差は10倍はあり、コールド負けもありうる相手だ。私はその試合が最後になると読んで、2回戦は全校応援をすると決めた。
初戦は昨年に続き勝利し、7月15日、シード校との対戦を迎えた。
(控え選手がこんなに……)
試合当日、スタンドに集まった相手校の部員数を見て驚いた。熾烈なレギュラー争いに勝った精鋭がベンチに入っているのだと改めて現実を見せられた。うちは、正規部員がギリギリ9人。他の部活からの助っ人をあわせて、やっと14人になるチームだ。
試合が始まった。先制したのは学園。4回にはさらに4点を追加し、途中で職員から「3回戦はどうしましょうか?」と運営の話を持ちかけられたが、私はまだ勝利を確信できなかった。
6回で同点に追いつかれたが、いつもの野球部とは違い、守りは固く、ピッチャーも崩れない。たった一人のエースを全員で助けていた。結局、コールド負けどころか、9回でも決着がつかず、試合は延長戦へ。私はここでようやく勝てると確信した。全校応援の生徒、吹奏楽部、チアダンス部、保護者、教職員、学園のファンの皆様が一丸となって心の中で祈っていた。
選手たちの合言葉は「ウィズ・セイビア!」。ピンチのとき、心をひとつにしたいとき、マウンドで円陣を組んで合言葉を叫ぶ。すると本当に展開が変わることを選手たちは確信していた。選手と応援する人たちの思いは一つになった。
延長戦は過酷だ。暑さで体力と気力が奪われ、ほんとうの実力差が出てくる。すでにエース一人で、1回戦と2回戦を投げ抜き、体力は限界だ。そのエース阿座上(あざかみ)くんが延長10回、自らスリーベースヒットを打って三塁に走った。この回で決めないと後はない。打順は入学したばかりの1年生。監督のサインでスクイズをし、みごと成功! 三塁の阿座上くんがホームべースに帰り、サヨナラで試合終了。勝った、本当に勝ったのだ! わずか14人でシード校を延長戦にまで持ち込み、粘り勝ったのだ。しかし、球場に流れた校歌「未来をこの手に」を聞き、学園野球部の美しい「礼」の姿を見たとき、「勝ったのではなく、勝たせてもらった。目に見えない力に導かれ、勝利の女神が微笑んでくれたんだ」と思った。私は泣きながら、掲揚された校旗を見つめた。扉を開いたミラクル。小さな学校が強豪校に打ち勝った奇跡を、いつまでも忘れない。
(「Are You Happy?」2021年10月号)