きれいな眉ははじめの一歩
「様になる眉を描けるようになったけれど、これでいいのか不安を感じる。というか、何か物足りない」
とおっしゃったのは、松たか子さんです。眉は、眉間の間隔や眉尻の上下、長短や形によって意志や立場を表し、周りの人に語りかけています。きれいに描くことができても、その意味を知らないと周囲から思うような反応が返ってこず、知れば、ただ美しいだけでなく、その人の個性や、持ち味を生かすことができます。心が気持ちよく感じる眉を見つけましょう。
印象を大きく左右する眉間
眉間は顔の中心にあり、相手が一番気になるところです。眉間の間隔が狭くなると顔が締まるので、相手を説得しなければならない方や仕事で上に立つ方は、眉間を狭めて信頼感を出すとよいでしょう。狭くなりすぎると、性格がきつい印象になります。
間隔が広がると、癒やし系と言われるようなかわいい印象になりますが、広がりすぎると間の抜けた頼りない顔になります。きついしゃべり方の人や明るい感じにしたい方は、眉間を少し広めにすると柔らかさが出ます。
狭めたいときはペンシルやシャドーで薄っすらと描き足し、広げたいときは眉用のハサミで一本ずつカットするか、毛抜きで抜きましょう。
上がり眉、下がり眉で関係を変える
少し上がった眉は二枚目顔に多く、フィギュアスケーターの羽生結弦さんのようにきりりと締まり、女性だと米倉涼子さんのような潔さが出ます。
もう一段高く上げた眉は、相手を威嚇するときなどにも使いますが、報道ステーションのメインキャスター、富川悠太さんのように、しっかり言葉を伝えたい人や上に立つ人向きの眉で、相手に一歩踏み込むような印象になります。
一方、俳優の高橋一生さんやムロツヨシさんのように下がり気味の眉にはやさしさがあり、嫌味なく人を受け入れてくれるような大らかな印象があります。NHK朝の連続テレビ小説の主人公にお人好しの個性を出したいときには、この角度で作ることが多く、さらに下げると愛嬌が出るので三枚目役になり、日常の中でも心が和らぐ存在です。
眉をぐっと下げ、やさしさと母性本能で抱きしめたくなるような雰囲気を出しているのが桑田佳祐さんであり、ジェームス・ディーンさんですが、その人の持っている味を生かした眉は、相手の心に強く引っ掛かります。
上がりも下がりもしない中心の位置にある眉は、きれいですが印象が薄く、顔の表情が入ったときに初めて生きる眉です。
顔と心は繋がっている
ところで、オペラ歌手のルチアーノ・パヴァロッティさんが日本デビューの舞台で、左右印象の違う眉にされました。一方は力強いアリアを歌うために凜々しい上がり眉に、一方は恋の歌を甘く歌うために下がり気味にし、曲ごとに顔の向きを変えて見せたところ、それが評判となり、歌のうまさと相まってたいへんな人気者になられました。
顔は自ら作るものです。どのような印象の眉も、その人の心が描かせたもので、穏やかな生活をしている人がきつい眉を描くことはなく、描いていたとしても、やがて自然な心やさしい眉に変わっていきます。また、その逆もあり、一本調子で上がっていく眉を描いて鏡に映すと強い気持ちが生まれ、眉間を開くと心がほんわかしてきます。顔と心は繋がっているのです。
次回は、顔をおかしくみせてしまう眉や、個性や魅力を引き立てる眉の整え方をお伝えしたいと思います。
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「よせて 上げて、ひらいて 下げて、眉の体操1、2、3」
今月のレッスン
三面鏡を使って横からも眉を確認しましょう。
(「Are You Happy?」2019年2月号)
好評連載中
「岡野宏のビューティーレッスン さあ、はじめましょうか!」
第58回 「若さの穴埋め」
(2022年2月号)