子供の叱り方、そのままでいい?
以前、「ガミガミ叱ってばかりもよくないし、まったく叱らないのもよくない」というお話をしたことがあります。
ガミガミママも、まったく叱らないママも、「正しい叱り方を知らない」という点では一緒です。子供の心にきちんと届く叱り方、子供が自立し成長していく方向へと導く叱り方を知っていれば、親は、毎日ガミガミ叱る必要がなくなるはずです。
「言っても言っても子供が同じことをくり返す」のは、子供の性格の問題ではなく、親の叱り方の問題でしょう。
また、まったく叱らない親は、「叱るのは悪」という強固な信念を持っているのかというと、そうでもありません。「どう叱っていいかわからない」「叱ったら子供の性格が歪むんじゃないかと不安」「ともかく頑固なわが子にお手上げ」などなど、ネガティブな感情で叱らないことを選択しているように見受けられます。
どちらのママも、内心では「子育てが苦しい、難しい」「本当は、これでいいはずがない」と、きっと感じていることでしょう。それなら、今日から間違った叱り方を止めて、正しい叱り方を実践する努力をすればいいのです。
三大・間違った叱り方
よく見かける〝三大・間違った叱り方〟は「にらむ・怒鳴る・叩く」です。
動物は、相手を負かしたり言うことをきかせたりするために「威嚇」という方法をとります。歯をむいたり、吼えたり、攻撃をしたりして恐がらせ、「私のほうが強いんだぞ。逆らったら恐い目に合うぞ」と脅すわけです。
ママの中には、動物的本能でこれをやってしまう人がいますが、もし自分が同じことを他の人にされたらどう感じるかを考えてほしいのです。きっと心が傷つくはずです。叱ることは必要ですが、愛のない方法や心を傷つける方法で叱ってはいけません。
温かいまなざしと、真剣み
子供には、日ごろは温かいまなざしとやさしい愛を注ぎ、悪いことをしたら、真剣に叱りましょう。恐い顔はいりません。子供を恐がらせるのではなく、「いけないことだ」と悟らせるのです。幼くとも侮らず、人間として誠実に向き合い、真剣なまなざしと真剣な言葉で愛を込めて導きましょう。
特に3歳半未満の子供には、言葉や理屈はまだ十分に届きません。その分、大人の真剣みこそが伝わります。
お教室で、3歳になったばかりの女の子がよその子のおもちゃを取って泣かせてしまい、ママは「どうせ言ってもきかない」とあきらめ顔でしたが、私はその子を抱きしめ、お顔とお顔10センチの距離で、穏やかに真剣にお話ししました。「お友達のおもちゃを取ってはいけないよ」「やだ」「いやでも、取ってはいけません」「やだ」「おくだせんせいは、一歩も引かないよ。一時間でも二時間でもこうしてキミにお話しできる。おもちゃはお友達に返しましょう。キミならわかる」―― やがて女の子は、自分から歩いていっておもちゃを返し、誇らしげな笑顔で私を見て、また楽しく遊び始めました。
大切なわが子です。どうか恐れず、信じて、真剣に導いてあげましょう。
Illustration by Mika Kameo
(「Are You Happy?」2015年1月号)
奥田敬子
早稲田大学第一文学部哲学科卒業。現在、幼児教室エンゼルプランVで1~6歳の幼児を指導。毎クラス15分間の親向け「天使をはぐくむ子育て教室」が好評。一男一女の母。