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子供が悪いことをしてしまったとき、どうやって教えるか?【子育て110番】

善悪を教える本文

Aちゃんの涙のわけ

近ごろAちゃんは、幼稚園でのお友だち関係に心を悩ませています。
いつも一緒に遊んでいるBちゃんとCちゃんが、ふたりだけで遊ぶことが増えて、Aちゃんはなんだか仲間はずれにされた気分です。
「わたしだって、いっしょの遊びたいのに……」
Aちゃんは、ちょっぴり悲しくて、ちょっぴり腹も立って、楽しい気持ちではありません。そんなある日、
「Aちゃん、一緒に遊ぼ!Cちゃんとは遊ばなーい!」
突然、Bちゃんがそんなことを言いました。
Aちゃんはびっくりしました。でも、ちょっとうれしかったのも本当です。そして、
「わたしもCちゃんと遊ばない」
と言ってしまいました。

 
その日の夕方、Aちゃんは、晩ごはんの支度をしているママのところにやってくると、黙ってママのからだにしがみつき、シクシク泣き始めました。
「どうしたの?」
「わたし、Cちゃんにひどいことしちゃった……。えぇん……」
ママは料理の手を止めて、泣きじゃくるAちゃんの背中をさすりながら、少しずつ事の次第を聞きました。
「なかまはずれは、イヤだったのに、おんなじこと、Cちゃんにしちゃった……」
Aちゃんは、お友だちにひどいことをしたことがつらくて、心が痛くて、小さな胸にしまっておくことができずに泣きながらママにお話ししたのです。

ママは、娘の小さなからだを抱きしめながら、そっと、安堵の笑みを浮かべました。
お友だちに悪いことをしたと気づいて、後悔の涙を流せる子に育っている。ああ、よかった……と。

 

善悪を損得勘定で教えてはいけない

子どもの心を健やかに育てる上で、善悪を教えることはとても大切です。これからの長い人生の中で、善悪を判断しなければならない場面は、たくさん出てくるでしょう。だからこそ、幼いころから「これは、やってもよいこと」「これは、やってはいけないこと」と、大人が根気よく教えてあげることが大切です。また、なぜやってはいけないのか、その理由も教えてあげるといいですね。しかし……、
「お友だちにイジワルしたら、もう遊んでもらえなくなるわよ」「電車の中で騒いだら、よそのおじさんに怒られるわよ!」こういう叱り方は、よくありません。善悪を、損得勘定で教えてはいけませんね。

イジワルをしたりひどいことを言ったりすると、お友だちは傷つきます。心であれ体であれ、人を傷つける行為は悪い行為です。また、電車という公共の場所で騒いだら、周りの人に迷惑をかけます。恥ずかしい行為ですね。

私たちの心の中には、神様からいただいた良心があります。人を傷つければ心が痛み、ウソをつけば、ばれてもばれなくても心が痛みます。人としてはずべき行為をしたときも、心が痛みます。その痛みを、子どもに自覚させてあげてほしいのです。

この良心の痛みが、これからの一生を通して、悪をおし止める力となるのですから。

Illustration by Mika Kameo

 
(「Are You Happy?」2013年8月号)

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