学歴、資格、キャリアなしのシングルマザーが年収1000万円を達成。子育て・仕事の原動力とは。(金田貴子さんインタビュー/2018年3月号)

『「学歴なし」、「資格なし」、「パトロンなし」でシングルマザーの元黒ギャルが28歳で年収1000万円を達成した話』著者、金田貴子さんに、仕事と子育てについてお話をうかがった。

金田貴子さん

 

学歴、資格、キャリアなしのシングルマザーが起業を決意

私が起業という選択をしたのは、ひと言で言えば、シングルマザーを雇ってくれるところがなかったからです。面接に行くと、どの会社も「子供が急に熱を出したらどうするの?」と、シングルマザーの採用にはかなり後ろ向きでしたし、そもそも会社員になっても手取りは月12〜3万円ほどと、子供を育てていくには厳しい額でした。雇われている限りこのぐらいのお給料しか見込めないのであれば、自分で何か事業を起こすしかないと思ったんです。

とはいえ、当時の私は24歳。「このくらいのお給料では生活できないし、自分の好きなものも買えない!」というのが強い動機ではありました(笑)。わが家は両親ともに経営者で、母は飲食店、父は建設会社を経営していたので、自分で事業を始めることへのハードルが低かったというのもあると思います。

 

売上目標・月100万円を開業4年で達成

起業にあたって選んだのは、ファインメイクとまつ毛エクステンションのサロンです。自分の興味があるものではないとがんばれないと思い、いろいろ探してみた中で、アートメイクが進化したファインメイクというものにたどり着きました。ファインメイクは、使っている色素と技術がアートメイクとは違い、変色しないというところが魅力です。

当時、私が住んでいた地域にはまだまつ毛エクステンションの専門店はなく、ファインメイクは岡山に一店舗もない状態だったので、これならビジネスになると思ったんです。当時は出張してお客さまの自宅でも施術ができたので、家賃がかからずに仕事ができること、そして客単価が高いということが決め手になりました。

「100万円稼げば、子育ても自分の生活もある程度豊かになるだろう」と思い、まずは月100万円稼ぐことを目標にしました。その目標を達成した28歳のとき、経営の勉強会で知り合った方からのアドバイスをきっかけに、ビジネスチャンスも情報もあふれている東京で挑戦することに決め、結果的に仕事を大きくすることができたのです。

 

子供を幸せにしたければ親も幸せになることが大事

シングルマザーの皆さんは、「子供が原動力」という方は多いと思いますし、私もそうです。娘は自分の命以上に大事な存在だと思っています。そうであればこそ、「子供のために」と、自分を犠牲にしてしまう方は多いと思うんです。でも、親の心の充実度は、絶対に子供に伝わると思いますし、自分が幸せでなければ、その八つ当たりは子供にいってしまいます。私は娘に、「あなたのためにこうなったのよ」とは決して言いたくなかったので、子供の幸せと同じくらい自分の幸せも大事にしようと思っていました。

金田貴子さん②

「親の心の充実度は、絶対に子供に伝わります。」

 

子供との時間を優先したらサロンの業績もアップ

子育てで大切にしているのはコミュニケーションです。娘は15歳になりましたが、今でも小さいころと同じように「大好きだよ」とか「かわいいよ」とか、愛情を素直に言葉にして伝えるようにしているんです。

あとは、食事は簡単なものでも、なるべく手料理を食べさせるようにしています。子供が小さいころは、夕食は必ず一緒に食べるようにしていました。今はお互い忙しくて時間が合わないことも多いのですが、そんなときも「今日は○○を作って冷蔵庫に入れておいたから、温めて食べてね」といったメモを残したり。そういうことも含めてコミュニケーションだと思っています。私はマメなお母さんではないですし、専業主婦の方に比べたら確実に子供と過ごす時間は少ないので、それだけは意識していますね。

実は、仕事がうまくいき始めたのも、子供との時間を優先するようになってからでした。開業当初は、夜の9時でも10時でも予約を受けていたのですが、それだと子供との時間が取れなくなるし、サロンは不定休になるしで、これではだめだと思いました。何のためにやっているのかを見つめ直して、完全予約制・完全週休2日制で営業するようにしたところ、時間が明確になったことでお客様の利用にもリズムがつくようになり、かえって業績が上がったのです。
 
 

愛あってこその人生

今、あらためて思うのは、私の人生、たくさんの人の愛に支えられているなということです。私がサロンを開業したのは、父の建設会社で物置に使われていた一室でした。建設会社の事務所の勝手口がサロンの玄関という、すごい状況でお客さまをお迎えしていたんです。お客さまは、サロンだと思って来たら「○○建設」と書いてあって、作業着のおじさんたちが仕事をしているデスクの横を通って、奥の8畳の一室に通される(笑)。DIYで自分で床を張って、ピンクのブラインドを用意して電気を替えただけの、初期費用15万円のサロンでしたが、そんな場所にも関わらずたくさんの方がいらしてくれたおかげで、月100万円稼ぐことができたんです。

20代のときの私は、「愛」なんて思って生きていたわけではありません。でも、振り返ってみれば一つひとつが愛だなと思うんです。辞めたいと思ったことは一度もなく、これまで仕事を続けてこられたのは本当にありがたいですし、感謝だなって。その感謝というのも「愛」なんですよね。私はこれからも愛のある生き方をしたいですし、たくさんの愛に囲まれて生きていけたら幸せだなと思っています。

 

稼いだ先には社会貢献がある

これまでずっと個人事業主でやってきたのですが、昨年、事業形態を整え、法人化しました。今は技術者ではなく、まつ毛エクステンションの講師をメインに国内外で活動をしています。まもなく娘が留学してしまうので、ちょっと寂しいんですけれど(笑)、ひとりの時間が増えるので、さらに仕事に力を入れて会社を大きくしていきたいなと思っています。 

私は、お金を稼ぐのはすごくいいことだと思っているんです。楽しいですし。中には「何でそんなに稼ぎたいの?」「月100万もいらないでしょ?」とおっしゃる方もいます。確かに、親子ふたりで生活するだけなら、そんなに必要ないかもしれません。でも、お金があれば、もっと大きなお金の遣い方ができるんです。

以前テレビ番組で観たのですが、ある国の貧しい地域に住む10歳ぐらいの女の子が、毎日ゴミの山に行って鉄クズを拾って生活しているんですね。お父さんはいなくて、お母さんは病気で、日本円にしたら1日30円ほどで生きている。たまたまゴミの山から出てきたボールペンを大事に持っていて、「もし私が字が書けるようになったら、これで書きたい」と言うんです。その子にはすごく夢があるんだなって。その話がずっと頭に残っていて、いつかそういう子供たちの可能性を支えてあげられるようになりたいと思っているんです。

お金を稼いだ先には、絶対に社会貢献があると思っています。教育がないことによって貧困が再生産されるなら、教育支援をしたい。教育は本当に大事です。学校に行きたくても行けない子供たち、字が書けるようになるだけで喜びを感じる子供たちをサポートできるなら、また生きていく価値も広がりますよね。夢に向かってまだまだがんばっていきたいと思います。

 
(「Are You Happy?」2018年3月号)

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