「最初は苦手だったけど、実はいい人」より、「最初から好印象で、話してみるともっといい人」になりたいもの。人前で話すプロを養成する「Oh! YEs」のおふたりにきいた第一印象をアップする会話のコツをお届けします。
ニーズを見つける
第一印象をアップする会話のコツとして、相手の心を動かすためのポイントについてお話します。
相手の心を動かすというのは、就職活動であれば「この人を雇いたい」と思ってもらうことですし、商品のおすすめであれば「これを買いたい」と思ってもらうことです。
そのためのポイントは、相手の気持ちを意識すること。相手の求めているものが何かを知り、それを自分が提供できるということを伝えるのです。
たとえば、自分は「9時~5時で働けるから雇ってほしい」と思っていても、相手が「忙しい時間帯だけ働ける人」を探していたら話はまとまりませんよね。
会話のキャッチボールのなかで相手のニーズを見つけながら、“プレゼンテーションは贈り物(プレゼント)”だと思って、相手に喜んでもらえるものが何かを想像しながら話すといいでしょう。
目的を明確にする
さらに、もうひとつ大切なのは、目的を明確にすることです。
第一印象をアップして質問力を磨き、相手のニーズがわかったとしても、自分の目的があいまいだと、中途半端な結果に終わってしまいます。「商品を買ってもらう」「雇ってもらう」「発表会に来てもらう」など、目的を明確にして、事前に話の組み立てを考えておきましょう。
もちろん、これらはすべて、外見や声の第一印象がよく、会話のキャッチボールができていることが前提です。
第一印象で「感じがいい」と思われるほうが、話の内容も聞いてもらいやすくなりますよ。
レッスン1 話の組み立て
話の組み立ての基本は、「1、イントロ(導入)」「2、本題」「3、まとめ」の三段階です。目的が明確になっていることが前提ですから、その目的に合わせてそれぞれの内容を考えておきます。「まとめ」の時間が短くなってしまうことも多いので、それぞれの時間配分にも気をつけましょう。
【イントロ(導入)】-自己紹介を簡潔に
自分のすべてを知ってもらう必要はないので、目的に合った内容の自己紹介を簡潔にしましょう。全体の話の長さにもよりますが、5分程度のスピーチならイントロは1分程度が目安です。
【本題】-プレゼンテーションは贈り物
相手が求めていることに、自分がどのように応えられるかをプレゼンします。ポイントは、相手のニーズと感情を意識すること。プレゼンテーションは贈り物だと思って相手が喜ぶことを話しましょう。
【まとめ】-結果につながる一言を
きちんと目的を果たすためには、まとめが必要です。本題で話したことのくり返しになる場合もありますが、自分が目的としていた結果につながるひと言を伝えましょう。これも5分ほどのスピーチであれば1分程度が目安です。
Lesson.2「Youメッセージ」を使う
ついやってしまいがちなのが、「私が~」「私なら~」など、私を主語にした提案の仕方です。
相手の心に響くのは、You(あなた)メッセージ。
「○○さんがこれを使ったら~」「○○さんなら~」など、相手を主語にして、自分の提案を受け入れるとどんなメリットがあるかを説明するのです。あるいは、「私たちは~」というWe(私たち)メッセージもおすすめです。
ニーズを見つけ、話の組み立てる-ケーススタディ
ケース① 自分を採用してもらう
就職活動であれば、目的はその会社で働くことですよね。ですから、印象をよくして採用担当者に気に入られることがまずは必要ですが、それだけでは目的を達成したとは言えません。
採用担当者、つまりその会社がどんな人材を求めているのかを探りながら、自分ができることをうまく提案していきましょう。
必要なのは、相手のニーズと、自分が提供できる能力を見極め、それを合致させていくことです。
ケース② 5分間で自己紹介をする
初対面の人の集まりでは、「では、順番に5分間で自己紹介をしていきましょう」なんていう場面があります。
こんなとき、まず考えるべきなのは、5分をどう埋めるかではなく、集まっている人たちに自分のどんな面を知ってもらうかという目的です。
この目的に合わせて「イントロ」「本題」「まとめ」と話を組み立てましょう。本題のところに特徴的なエピソードなどを入れると、素敵な自己紹介になるはずです。
ケース③ 自分にも夫にもピッタリの車を買う
たとえば車を買い換える場合、まず家族のニーズを知りましょう。
夫は家族や近所の仲間を乗せてレジャーに行くから多人数が乗れる車がいい。車庫の広さを考えるとスライドドアがいい。おじいちゃんの介護があるから車椅子の乗り降りが楽なものがいい……と書き出します。
家族に合った車を選ぶ出発点も、ニーズを知ることなのです。
(「Are You Happy?」2013年6月号)
講師
Yuko ANZAIとEmiko ITOによるユニット。コーチングや人前で話す人材養成を行っている。
Yuko ANZAI 会社員、海外ひとり旅を経て、アメリカの会社で国際ビジネスの立ち上げに携わりながら、コーチ ングを本格的に学ぶ。現在は、経営者や組織リーダー向けにコーチングを中心としたサポートを行う。国際コーチ連盟会員、生涯学習開発財団認定コーチ、 (社)日米コピーライトオフィス会員。
Emiko ITO 20代で選挙ウグイスのトレーニングを受け、国政選挙を含む数々の選挙戦を経験。結婚、子育てで 一旦退くが、郵政選挙と言われた2006年衆院選で復帰。その後プレゼンテーションマスターコースを修了し、現在、表現力の高い話し手の養成と自らのライ フワークである食育講師として活躍。