子育てや仕事など、人生が一番充実している40代くらいから突然やってくる身体の不調。「更年期」真っ只中の3人が症状や治療法などを語ります。
メンバー
Aさん
53歳・自営業 夫とふたり暮らし
まったくの健康体だったが50代で更年期障害の症状を発症。漢方で緩和しつつ自分に合う医師や治療法を模索中。
Bさん
47歳・ショップ経営
12歳の娘、10歳、6歳の息子の母。数カ月前から更年期障害の症状が出始める。サプリメントや運動などの生活改善で経過観察中。
Cさん
49歳・ヘア&メイクアップアーティスト
夫とふたり暮らし子宮内膜症の治療により30代から更年期障害に悩まされる。現在は「メノポーズ(更年期障害)」について勉強中。
更年期の症状は人それぞれ
C Aさんは最初にどんな症状が出ましたか?
A 私は2年くらい前からめまいやホットフラッシュが出始めました。それまでは睡眠不足でも元気に家事や仕事ができて、病気ひとつしたことのない健康体だったんですが、ちょうど50歳の閉経するかしないかくらいのときに症状が始まって。主人には、朝送り出すときに、だるくてソファにもたれたままだと、「結婚して数十年経つと、ずうずうしくなるなぁ」なんて言われてしまうんです。
B ひどーい!
A ホットフラッシュのとき、主人に「この汗見てよ」と言っても、男性から見れば「それくらい俺もかくよ」って感じらしくて。今はお友達に紹介していただいた先生の漢方のおかげで、だいぶ症状が安定しましたが、季節の変わり目は今もつらいときがありますね。
C 更年期障害はなかなか家族の理解が得られないですよね。
B 私もAさんみたいに元気で、何でもガンガンやるタイプだったんですが、今年の春くらいからやけに気分が落ち込んで、やる気も起きなくて、イライラして。ちょうど母が亡くなったのと、娘の全寮制中学入学が重なったので、「寂しいからかな?」って思ったんですが……。生理もずっと順調だったのに、早くなったり月に2回来たりして。病院でもどこも悪くないと言われて、「もしかして、うつ病?」と不安になりました。
A わかります! 私も最初は「めまいがするんです」と耳鼻科に行きました。
夫を嫌いになっちゃった?
B 私は主人とけっこうベタベタするタイプなんですが(笑)、主人にちょっと腕を触られたときに、反射的に「いやっ!」って振りほどいてしまったんです。「私、主人を嫌いになっちゃったの!?」ってすごくショックで。主人もショックだったと思いますが(笑)。とにかく触られるのがダメで、夜の生活も嫌になってしまって。当時は原因が分からなかったから、かなり落ち込みました。
C そういう精神的なものも更年期の症状ですが、あまり知られていませんよね。
B そんなときにCさんと出会って、相談したら、「それってメノポーズ(更年期)かもよ?」って言ってもらって。ずっと何が原因か分からなくて、自分が自分でなくなったみたいで、不安で仕方がなかったから、それだけですごく元気になりました。
A Bさんのその感覚、すごくわかります。私も今までの自分との違いがつらくて、しかも原因不明でしたから、かなり悩みました。
女性ホルモン補充という選択
A Cさんは更年期について勉強されているそうですが、症状はいつから出たんですか?
C 実は、私は「女性ホルモンに振り回された半生」なんです(笑)。32歳で離婚して、「もう仕事に生きよう」と誓ってバリバリ働いてきたんですね。でも生理痛がひどくて仕事に支障が出るので、生理のことを思うと月の半分は“うつ状態”。そんな思いでいたせいか、子宮内膜症にかかってしまって。二度の開腹手術を行った後は、「リュープリン」を投与する「偽妊娠法」という治療を続けました。
B どんな治療なんですか?
C 生理を半年止めて、また半年起こして……を繰り返すんです。そうすると更年期の状態になるので、私は30代から症状が出て。いわゆる若年性更年期です。その後40歳で再婚したんですが、43歳で閉経しました。
A それはちょっと早いですね。
C はい。最初は「生理がなくなるならラクになる!」と思ったんですが、閉経すると女性ホルモンがほとんど分泌されないので、とにかく“枯れて”くるんです。肌の乾燥が激しくなり、唾液も出にくく、骨も弱くなり……。体力もなくなり、更年期の症状にも悩まされました。いろいろ考えましたが、生涯現役で働くためにも、45歳から女性ホルモンの人工的な補充を決めたんです。でも最初は怖くて。ホルモン補充って、乳がんになりやすいイメージがありませんか?
A 確かに聞いたことありますが、実際はどうなんですか?
C 女性ホルモン補充と乳がんには、関連性がないんです。実際に補充をしてみたら、もう中古車が新古車になったくらい身体の調子がよくて(笑)。まず皮ふが潤いますし、体力も全然変わってきます。生理も復活しました。産婦人科の女医さんで、「生涯現役でいたい」とホルモン補充をされている方が、御年82歳で現役で活躍していますが、ちゃんと生理も来るんですって。
A・B えーっ!?
C 今は自然に年を取り、更年期が過ぎ去るのを待つのではなく、こういう「選択」もあるということなのかな、と思います。
日本の更年期治療は遅れている?
B 実際になってみて、更年期障害は、「いい病院やいい先生に出会えるか」が肝心だと思いました。最初に行った産婦人科では、ちょっと問診して「更年期かもしれません」「はい薬」とポンと渡されるような感じで。どんな症状があるのか、とか、どのくらい続くかとか、何の説明もなかったので不安でした。
A 本当に。私も最初は「お薬出してハイ終わり」みたいな病院にかかって、出していただいた薬も効かなくて、結局お友達に紹介してもらった病院に通っています。
B 紹介や口コミしか頼れないですよね。Cさんが紹介してくれた病院では、骨粗鬆症や女性ホルモンの数値など、保険適応内でしっかり検査ができて、「こうやって少しずつ身体が変わっていくんですよ」と、更年期の段階をしっかり説明してくれたので安心しました。牛乳を豆乳に換える、適度な運動などのすぐできる対策も教えてくれたし。治療方法もいろんな選択肢から、イソフラボンなどの「更年期に効くサプリ」を飲みながらの経過観察を選んだんですが、今はかなり楽です。
C Bさん、最初にお会いしたときからお肌もかなりきれいになりましたよね。
B 本当ですか? よかったです(笑)。主人も「更年期だから」と理解してくれて、今は前よりもすごくいい関係です♥
A (笑)。よかったですね。更年期障害はメディアでもあまり取り上げていなくて情報が少ないので、とりあえず産婦人科を受診しても、ろくに説明もなく終わってしまう。でも情報がないから、次の選択肢がないんですよね。
C 実は、日本の更年期治療は欧米と比べて遅れていると言われているんです。私は自分のためにも最先端の情報を学びたくて、今、NPO法人の元で勉強しています。来年にはメノポーズカウンセラーの資格も取ろうかと……。
A・B すごい!
症状の緩和のためには運動や食生活も大切
A 友人にも、更年期の症状で苦しんでいる人もいれば、まったくない、なんて人もいて。症状が出る人と出ない人には、どんな違いがあるんでしょう? 私みたいに若いころに不摂生してると、やっぱり出やすいのかな(笑)。
C 人それぞれだと思いますが、確かに若いころから運動をしている人は出にくい、とも言いますね。
B 私も病院で運動を勧められたので、主人とウォーキングしてます。1日10分でも、身体を動かすと違うそうですよ。
A 私も友人とジムに通い始めました。週に一度くらいしか通えませんが、習ったストレッチは家で毎日やっています。
C あとは食生活ですかね。私は肝臓もよくないんですが、油をオメガ3系のものに変えたら、肝臓の数値が下がりました。そうなると女性ホルモンも安定してくるんですね。私も食生活まで気にし始めたのはここ数年で、メノポーズの勉強と一緒に、身体にいい食事や生活についても学んでいます。今までは無知で、間違った生活で身体をいじめていたから、反省して切り替えている途中です。
女性ホルモンや更年期の知識を若いうちから学ぶ機会を
C 更年期に入り、症状が出始めてから慌てて情報を探すのでは遅いと思うんです。だから本当は、20代や30代の、女性ホルモンがまだバンバン出ているころから更年期障害や女性ホルモンについて知っておくべきですよね。私も若いときから知識があったら、「女性ホルモンに振り回された半生」を送ることはなかったと思うんです。
A 私も若いころはさんざん不摂生をしてきたのに、それまでの健康を過信して「私は更年期障害なんてかからない」と思い込んでいました。それが50歳を過ぎたら突然身体が変わってしまって、かなりショックでしたから。待っていてもダメなので、今は自分で更年期について調べることの大切さを実感しています。いい先生に出会うことも大切ですよね。
B 自分に合った先生との出会いは本当に大事! 私もこれからは半年に一度くらいのペースでちゃんと検査を受けて、自分の体調を確認しながら、先生と相談して治療のやり方を選んでいこうと思っています。まずは自分の身体に起きていることや、症状の理由を知ることが第一ですよね。
更年期は人生の目標を見つける機会
A あと、自分をもう少し許してもいいのかな、と思いました。「時間がもったいない!」とあれこれやりすぎていたけど、もっと休息の時間を持ってもいいのかも。
B わかります! 私もせっかちなタイプだったから、症状が出てからの落差がひどくて、余計に落ち込んでしまって。あと、私は父の介護もしているんですが、自分が更年期を迎えたと分かってから、親の“老い”に対しても、違う目で見られるようになった気がします。症状はつらいけど、いろいろな気づきがありました。
C 「日本の女性の幸福度は高齢になるほど下がる」という衝撃的なデータもあるんですが、これは更年期も関係していると思います。でも更年期障害って、これをきっかけに人生観を見つめ直し、人生の目標を見つける機会でもあると思うんです。女性ホルモンの補充やサプリメントなど、今は選択肢もありますから、人生の目標によって道を選べばいい。私自身が苦しんだ分、たくさんの方に正しい知識をお伝えしたくて。自分の仕事を生かして、メイクの分野から情報発信のお手伝いができないかな、とも考えています。
A・B 期待してます!
(「Are You Happy?」2016年11月号)