最近、ひとり娘(26歳)が結婚しました。お婿さん(34歳)もとても誠実な方で、親としてほっとひと安心しています。
しかしお婿さんは神仏を信じていない「無神論者」です。お父さんは理系の大学教授で、ご両親はお葬式やお墓参りといった行為を“無駄”とし、「死んだら海に散骨してほしい」とおっしゃっているそうです。
わが家は田舎ということもあって地域のお寺の檀家で、家には仏壇や神棚もあります。娘は法事やお墓参りにはきちんと帰省して参加していますが、信仰に対してそこまで真剣に考えているとは思えず、お婿さんに影響されて同じく無神論になってしまうかも……。
孫が生まれた場合の信仰や、やがて私たち夫婦がこの世を去ったあと、仏壇や神棚、お墓がどうなるかを考えると、不安な気持ちになります。
ご自身の気持ちを素直に娘さんに伝えてみましょう
“自分たち夫婦が死んだあと、お墓や仏壇はどうなるのか……”。少子化が進む現代では、こうした悩みをお持ちの方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
死後にご家族を煩わせないためにも、“人生の終わりをどのようにしたいのか”について意思表示したり、ご自身の宗教観を家族に話したりしておくことは、ひとつの思いやりでもあります。娘さんには一度、素直なお気持ちを伝えてみてはいかがでしょう。ただし、既に嫁がれているわけですから、あまり押し付けにはならないよう、少しずつお伝えできるといいですね。
お葬式やお墓にはとても重要な意味がある
最近では、お葬式を一種のイベントのように捉えたり、お墓を単なるモニュメントだと考える“唯物的”な風潮も見られますが、実はお葬式やお墓にはとても重要な意味があります。
なぜお葬式が必要かというと、死んで肉体が焼かれても、“意識”は消えてなくならないので、多くの人たちは自分が死んだことに気付けないからです。
特に無神論の方で、「肉体こそが自分であり、死んだら終わり。霊やあの世など迷信に過ぎない」と強く信じている方は、そう簡単には自分が死んだことを受け入れられません。亡くなって霊になっても、葬儀の様子が見えたり、集まった人たちの会話が聞こえたりするからです。
だから葬儀のなかで、故人の霊に対して「あなたは死んだのですよ。肉体やこの世への執着を去り、霊としてあの世へ旅立つために、仏へと続く修行の道に入りましょう」と諭し、“引導を渡す”のです。
また、お墓や仏壇、神棚は、この世に遺された人たちが故人を偲んだり、感謝の心を届けたり、神仏を敬ったりする際の“あの世へのアンテナ”の役割を果たしています。亡くなったご先祖も家族の生き方をよく見ておられますから、供養する側も自身の心をよく振り返り、日々正しい生き方を示すことが大切ですね。
このような宗教知識をご家族で共有され、もし娘さんが納得されたなら、それはお婿さんやお孫さんにも自然に伝わっていくと思います。
心の処方箋
供養とは単に遺された家族たちの“心の慰め”だけが目的ではなく、故人の魂の“あの世での幸福を願い、悟りと導きを与える”という徳を積む行為でもあります。そのような“宗教的な意義”をきちんと伝えていくことで、きっと娘さんにもお墓を受け継いでいくことの大切さが伝わることと思います。
(「Are You Happy?」2016年9月号)
伍井美知子
幸福の科学 総本山・那須精舎講師。1992年に幸福の科学に奉職し、東京正心館講師やスター養成部部長、幸福の科学学園那須本校 宗教教育担当などを歴任。現在は研修などを通して研修生や参拝者の悩みに親身に答え、シニア世代が生涯現役で活躍できるようアドバイス等も行っている。