看護師として50年以上にわたり看取りの現場に立ち会ってきた荻田千榮さん。
死を目前にした人とその家族との触れ合いのなかで垣間見える「あの世」について聞きました。
「お迎え現象」は確かにある
「お迎え現象」という言葉を聞いたことはあるだろうか。死を目前にした人が、先に亡くなった両親や伴侶の姿を見る現象のことだ。高齢化にともなって終末期医療の充実が進む今、医療現場でも注目されている。
「それほど多くはないですが、『お迎え』は確かにあります。あるお寺のお坊さんは亡くなる前に、『お偉いさん』のような人たちが何十人も玄関から入ってきて、お祭りみたいににぎやかだと話していたと、ご家族から聞きました。そうしたら2日後くらいにスッと逝かれましたね。信仰心が篤くて徳のある方でした。
ご家族が夢で死期を知るケースもけっこう多いです。リアルだったのが、『お母さんがお店のシャッターを閉めて出ていく夢を見たから、今日お別れだと思います』とおっしゃっていた文房具店の娘さん。本当にその日に、お母さまは亡くなりました。
夢でありがとうと言われたりした場合のご家族の反応はさまざまです。分かってはいても別れはつらいものですから、『そんなの違う』と、夢は死期とは関係ないとおっしゃる方もいます。一方で、あいさつに来てくれたと受け止める方や、『ニコニコしている姿を見て、自分も死ぬのが怖くなくなった』とおっしゃる方もいます。私は、ご家族が“その日”を受け入れるために夢に出てきてくれているのではないかと思っています」
続きは本誌でお読みいただけます
▶ 日本人の「死」に対する向き合い方
▶ 美しく穏やかに逝くためには
▶ 最後まで看取る決意
▶ 大切な方を亡くされた人へ
看護師
京都市生まれ。1969年、京都府立医科大学附属看護学院卒業後、同大学附属病院の内科・小児科・救急外来・混合外科病棟に勤務。1977年、京都府立医科大学附属看護専門学校の教壇に立つ。2011年、株式会社プレアデスを設立し、訪問看護事業を始める。著書に『あなたがいてくれてよかった。』(幸福の科学出版)などがある。