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季節の変わり目を楽しむ〔岡野宏のビューティーレッスン〕

季節の変わり目にリセット

モニターに、小説家の遠藤周作さんがダークブラウンのスーツにくすんだオレンジ系のネクタイを合わせた衣装で映っていました。通りがかりのスタッフが足を止めます。
「ああ、もう秋なんですね。なんだかほっとしますね」
その衣装は「初秋の、もの寂しいおしゃれパワーを着るもので見せたい」という遠藤さんの希望で揃えられたものです。
遠藤さんは、こんなことをおっしゃいました。
「忙しい毎日に追われていると、季節のうつろいを感じる間もなく日々が過ぎ去っていく。でも、四季の変化は気持ちをリセットしてくれるから大事にしたいんですよ」
季節の境目が曖昧になる近年ですが、おしゃれから心身穏やかに秋を感じてみたいものです。

季節の少し先を行く

ニュース番組のアナウンサーは、着る服の季節の目安にされる存在で、新人アナウンサーの研修では、「衣装の季節は少し先取りしよう」と教えています。それは、未来への希望、爽やかさを感じさせるためと、もうひとつは、季節遅れの外見から発する言葉は、内容を古臭く感じさせてしまうからです。少し先の感じを外見に見せると、言葉にも勢いを与えます。どんくさい、やぼったい、あか抜けない印象を取り除きたいときは、季節を少し先取りしてみてください。
世の中で、「素敵」と言われる人たちは、季節が巡ってくる前からアンテナを張り、「この秋はどんな風に着こなそう」と準備しています。俳優の森繁久弥さんも、そのひとりでした。

季節のアイテムは少しずつ加える

森繁久弥さんがダウンジャケットを着て撮影現場に現れました。「オヤ、珍しい」と、みんなの視線を引き寄せたところで、ジャケットを脱ぎポロシャツ姿になりました。趣味の船でいつも着ている真っ白なシャツです。ヨーロッパでの留学から帰国したばかりの桃井かおりさんが、親指をグーと立てました。
「このダウンに、着なれたポロシャツを合わせるのって良いだろう」
森繁さんは胸を張ります。
「シックリくるのはそこよ。若者のマネでなく、片肘張らず、自然に季節と向き合っているのが素敵」
一日の気温の変化が大きい欧米の若者が季節の合間、おしゃれに着こなしていたものを桃井さんが真似て、それを見た森繁さんが自分なりにアレンジしたのです。次の季節のものを一度に取り入れるのではなく、次に来る季節のものを少しずつ足していきます。気温の変化にも対応でき、季節のファッションにこなれた雰囲気が演出できます。

重宝するコットン・カーディガン

季節の変わり目は、見た目が重くなりすぎないように、見えない部分での寒さ対策が必要です。女優は、外からは分からないよう、足の裏にホットシップを貼り、ごく薄い断熱用シャツや、タイトパンツの中に七分タイツを着込んで寒さ対策をしています。
一枚持ち歩くと重宝するのが、コットン素材のセーターやカーディガンです。首元に巻けば冷えを防ぎ、毛物ほど重すぎずに暖かさを演出できます。
イヴ・サンローランのショーのモデルたちは、コットンのカーディガンをショルダーバッグやリュックに結んでいました。冷えを感じたらバッグからほどき、マフラーのように首や腰に巻いたり、背中に斜めにかけたり羽織ったりするのです。
秋色が、パンツやスカートに程よく映えるアクセサリーになっていました。
昨年から繰り返される自粛生活で、時の流れに鈍感になりがちです。これから迎える季節のものを少しだけ先取りし、未来を暖かく迎える準備をしてみませんか。

© K’s color atelier

はじめましょう 秋のおしゃれ計画

今月のレッスン

9月に入ったら、ファッションに秋物や秋色を一つ加えてみる。

 (「Are You Happy?」2021年9月号)


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