怒らない自分になるための3つのレッスン

総本山・日光精舎の講師に霊的に見た怒りのメカニズムや、怒りの心を取り除くための方法をうかがいました。

霊的に見た怒りの心とは?

今から約2600年前に発祥した仏教において、怒りのコントロールは、とても大切なこととされてきました。怒りとは欲望の一つであり、「煩悩(ぼんのう)」です。仏教における心の修行では、煩悩の炎を鎮めて、天国や仏様とつながるような透明な心を取り戻すことが目的とされてきたのです。

怒りのコントロールは、最近ではアンガーマネジメントやアンガーコントロールなどと言われて注目されていますが、仏教だけでなく、日本神道やキリスト教などにおいても、何千年も前から取り組まれてきたことです。そういう意味で、アンガーマネジメントは宗教が本家であると言えるでしょう。

ではなぜ、怒りをコントロールすることが大切なのでしょうか。それは、怒りによって引き起こされる霊的な影響が、さまざまな不調和を引き起こすからです。

心の世界には、「波長同通の法則」というものがあり、同じ心の波長を持った者同士が呼応し、引き寄せ合います。怒りの心を持つと、悪霊や悪魔と心が同通してしまい、逆に、天使などの天国的な存在が離れていきます。また、周りにいる人もそのトゲトゲとした波動を感じ、なんとなくその人を避けるようになってくるのです。

悪霊に憑依されると、怒りが増幅され、止まらなくなります。すると、次々と嫌なことや気に入らないことが起きてくるなど、悪い循環に陥ってしまうのです。その状態が長く続くと、悪霊に肉体を乗っ取られてしまい、主体的に生きることが難しくなります。そのため、どこかで怒りの心に気付いてブレーキを踏み、「自分でコントロールが効く範囲」に留めておく必要があるのです。

体にも悪影響を与える怒りの‟毒”

怒りの心を持ち続けることは、体にも悪い影響をもたらします。‟キレる”という状態が日常的に続くと、血圧が一気に上がり、血管が切れるなど、心臓や脳にも悪い影響を与えてしまいます。肉体の内側の幽体(ゆうたい)を傷つけます。すると、その人の臓器の弱いところにガンなどの病気として現れてくることもあるのです。

心の毒素を排出するための特効薬は、周りの人に対して感謝の思いを持ったり、親切にするなど、愛を与える方向に心を向けることです。また、どういうときに怒りの心が出てくるか、自分のパターンを把握することで、新たな毒素を出さないようにすることができます。

Lesson 1 自分の「怒りが出るパターン」を把握し、対処法を考えましょう。

①怒りが出やすくなる状況を書き出してみよう。

〈例〉を参考に、あなたの怒りが出やすくなる状況を書き出してみてください。その後、それに対する対処法も考えてみましょう。例えば「睡眠不足のとき」なら、スマートフォンを触る時間を減らし、少しでも早く布団に入る。「仕事が忙しいとき」なら、優先順位を決めるなど仕事のやり方を工夫するなどです。

〈例〉
・ 睡眠不足のとき
・ 自分の意見を否定されたとき
・ 体調が優れないとき
・ 仕事が忙しいとき
・ 自分のキャパシティを超えた仕事を頼まれたとき

Column
「私憤(しふん)」と「公憤(こうふん)」の違いとは?
怒りには2つの種類があるとされています。ひとつは「私憤」で、もうひとつは「公憤」です。感情のままに怒りをぶつけたり、自分の行動を正当化するために怒ったりするならば、私憤。一方、世の中や周りの人々をよくしたい、幸福にしたいという愛の心や、愛に裏打ちされた「智慧」や「理性」を伴ったものは公憤です。

怒りの心が強い人が行く地獄とは?

「怒りの心を出すと悪霊が寄ってくる」という話をしました。そういった悪霊が住んでいるのが地獄です。人は死後、心境に応じた世界へ還ります。神仏を信じ、善なる行いをした人は天国へ。逆に、神仏を否定したり、煩悩のままに生き、人を害するような生き方をした人は地獄へ行きます。
地獄の世界は心境によってさまざまな種類があり、怒りの心が強い人は、「阿修羅(あしゅら)地獄」や「炎熱(えんねつ)地獄」などの、闘争心や破壊的な心を持つ存在が住む世界に行くことになります。しかし、生きている私たちであっても地上において同じ心を持てば、一瞬でその世界に通じ、地獄霊からの影響を受けてしまいます。日ごろから心を天国的な方向へと向けられるよう、下のチェック項目を参考に、心の状態を見つめてみてください。イライラすることが日常的になっていると、なかなか自分の怒りには気付けないものです。
また、仏教の教えに「心の三毒( 貪(とん)・瞋(じん)・痴(ち))」や、「六大煩悩(心の三毒に慢・疑・悪見を加えたもの)」がありますが、これらの煩悩も、行動においては怒りとして現れてくると言われています。「以下、➁怒りのもとになる煩悩をチェックしよう。」もあわせて実践してみましょう。

➁怒りのもとになる煩悩をチェックしよう。

六大煩悩のうち、「瞋」以外の下記の項目の中から、あなたの怒りを引き起こしやすい煩悩を診断します。当てはまるものにチェックをしてください。ひとつでも当てはまった場合、「心の処方箋」を確認しましょう

貪(とん)

□認められなくて苦しい
□欲しくても手に入らないものがある
□羨ましくてたまらない人がいる

心の処方箋
欲しい物や立場が得られないと怒りが出やすいかもしれません。すでに与えられているものに目を向け、「足ることを知る」ことが大切です。

癡(ち)

□人は死んだら終わりだと思う
□人の話を聞いていないことがある
□計画せずに行動して失敗することが多い

心の処方箋
原因と結果の法則や、物事の道理に無知なために失敗し、怒りを引き起こしてしまいそう。すべてを「自己責任」と捉えるように心掛けましょう。

慢(まん)

□人を見下しがちだ
□周りからの扱われ方が気に入らない
□自分は生まれながらの天才だ

心の処方箋
今の待遇が気に入らないという思いが、怒りのきっかけになりそう。慢心すると、自ら足をすくわれることに。「謙虚さ」と「礼儀正しさ」を忘れずに。

疑(ぎ)

□善人なんていないと思う
□みんなが自分のことを責める
□信じて騙されるのが怖い

心の処方箋
人から裏切られた経験があり、似た状況に陥ると、怒りの心が湧いてくるかもしれません。「すべては自分を向上させるための砥石」と捉えましょう。

悪見(あくけん)

□努力しても無駄だと思う
□神なんて信じるから不幸になると思う
□魂なんてないと思う

心の処方箋
神仏はいない、あの世はないという考えが善悪の判断を誤らせ、怒りを引き起こす原因になりそう。「仏法真理」を学ぶことが、転ばぬ先の杖に。

怒りの毒を溜めない言葉の聴き方

普段の生活において、人のちょっとした言葉や態度がひっかかり、ついカッとなったり、根に持ったりすることもあるかもしれません。しかし、相手としては無意識に発した言葉であり、たまたま〝小石を踏んだ〞程度のことであることも多いのです。
また、その「ひっかかる言葉」の内容を客観的に見ると、大抵の場合は大したことではないもの。「よくあること」と、さらりと聞き流し、あまりひっかからないようにすることが大切です。〝人生の問題集〞として乗り越えるべき課題は、出来事や事象として現れてくるはずですので、それ以外のものに心をとらわれないようにしましょう。
そのときに意識したいのが言葉の聴き方です。「レッスン2」で、普段のあなたの聴き方をチェックしてみてください。

Lesson 2 自分が普段、どのように言葉を受け止めているかを確認してみましょう。

「言葉の聴き方」について、当てはまるものをチェックしよう。

幸福の科学の教えでは、言葉の聴き方には「字を岩に刻むように聴く」「砂に字を書くように聴く」「水に字を書くように聴く」の3通りがあると言われています。下記の項目の中から、当てはまるものにチェックし、いちばん多かった項目のアドバイスを確認しましょう。

に刻む

□根に持ちやすい
□人の言葉にショックを受けやすい
□つらいことがあると、過去の思い出が甦よみがえる

アドバイス
単なる不用意な言葉でも、敏感に感じてしまうタイプかもしれません。反すうするたびに、言葉がさらに心に深く刻まれてしまうので、受け流せるものは受け流し、逆に、幸福な言葉を心に刻みましょう。

に書く

□「でも」「だって」が口癖
□嫌なことがあると、2、3日は引きずる
□どちらかと言えば落ち込みやすい

アドバイス
誰かから注意を受けると、つい言い訳をしたくなるかもしれませんが、思いあたる節があれば、素直に受け入れ、相手への感謝を心掛けましょう。さらりとした心を保つと、怒りの心も出にくくなるはずです。

に書く

□さっぱりとした性格だ
□嫌なことも、一晩寝たら忘れられる
□注意を受けたときも感謝できる

アドバイス
サラサラとした小川のようにこだわらない心の持ち主のようです。必要な言葉と、そうでない言葉の取捨選択が自然とできており、怒りの心が出ることも少ないはず。その状態を維持しましょう。

どうすれば怒りが出にくくなるのか

出てきた怒りをコントロールする対処法を知っておくことは大切です。しかし、自分の心の世界にもう一歩踏み込んで、理解を深めようとするならば、怒り自体を出さないようにする術を知っておくことも重要です。根本的な解決法は心の修行ですが、いちばん簡単に取り入れられるのは「呼吸法」でしょう。「それだけ?」と思われる方もいるかもしれませんが、これがとても〝効く〞のです。「レッスン3 ①呼吸法」を参考にして、一日の終わりに、5分でも10分でも、静寂な時間を取ってみてください。
また、単純なことですが、しっかりと睡眠を取ること、普段の生活を調えることも、心の余裕につながり、怒りを出しにくくするのに効果的です。

Lesson 3「呼吸法」と「慈悲観」をマスターし、心の静寂と、怒りにくい心を手に入れましょう。

①呼吸法 一日の終わりに時間をつくり、1、2の順番で呼吸法を行いましょう。

やり方
1 リラックスできる状態で座り、丹田(へその下あたりの下腹部)を使って深く、ゆっくりと呼吸をしてください。
2 心が落ち着くまで5~10分ほど行います。そのとき、雑念が鎮まっていく様子を感じながら行うとよいでしょう。

Point なかなか集中できないときは
自然には心を鎮め、呼吸をゆったりさせる作用があります。普段から忙しく、なかなか呼吸法に集中できないという方は、美しい自然の写真を眺めるだけでもリラックスできるでしょう。瞑想曲など、静かな音楽を流しながら行うのもおすすめです。

➁慈悲観 まずは前ページの①「呼吸法」を行って、心を穏やかに調えましょう。それから1~3の順番でワークに取り組んでください。

1  怒りを感じた出来事を振り返る

今、あなたが怒りを感じている相手を思い浮かべてください。あなたは、相手のどこに怒りを感じていますか?

2  相手を平等視する

この世に完璧な人間はいないように、神仏の目から見れば自分も相手も未熟な人間です。1で書き出したことについて、右の<点検項目>に照らし合わせて思いを巡らせてみましょう。

〈点検項目〉
・ 自分が相手の立場ならどうだったか
・ 相手も苦しんでいたのではないか
・ 他の人も、同じようなことがあるのではないか
・ 自分には慈悲の心が足りなかったのではないか

3 相手の苦しみを抜く

相手があなたにそのような言動を取ってしまったのには、何か理由があるのかもしれません。あなたが相手の苦しみを抜いてあげたり、相手の幸せのためにできることはないでしょうか?

怒りの心を鎮める「慈悲観」

怒りを抑え、収めるための修法として、よく日光精舎の研修で取り入れているのが「慈悲観」です。慈悲観とは、「人間は平等なのだ。自分も相手も、仏性を持った仏の子なのだ」と、仏の心や慈悲の心が、すべての人の心に宿っていることを知り、「怒りの心が出るのは、慈悲の思いが足りなかったのではないか」という観点から出来事を見つめることで、怒りの心を鎮める心の修行です。
怒りは、相手に対して「こうあってほしい」と求めすぎていたり、期待を裏切られたりして出てくるもの。慈悲観を行うことで、「今怒りを感じている相手も、いろいろと苦労しながら頑張っている存在なんだ」「相手の苦しみを抜くために、自分ができることはないだろうか」と、大らかに捉えられるようになるでしょう。

仏が創られた世界に無駄は何ひとつない

生きていると、楽しいことばかりでなく、悲しいことも、怒りが湧いてくることもあると思います。しかし、その出来事があったからこそ、心を深く見つめ、心を成長させるきっかけが与えられたと捉えればいいと思います。仏が創られた世界に、無駄なものは何ひとつありません。
不幸になるために不幸な経験をしているわけではなく、つらいことがあったとき、「そこから何を学ぶか」が大切なのです。心を深く見つめ、そこから心の糧を見つけることができたならば、それ自体があなたの宝物になります。それがあなたの人生をより輝くものにしてくれるでしょう。
最後に、大川隆法総裁の法話「アンガー・マネジメント」から、心に刻んでおきたい言葉を抜粋でご紹介します。

“相手から批判されたり攻撃されたりしたときは、ゴムまりのような「柔軟性、弾力性のある心であろう」と思うことが大事です。
また、正義という観点から見て見逃してはならないものに対しては、悪を増長させないために、言うべきことをピシッと言う勇気や態度も必要です。それが煩悩的に出た「怒り」にならないためには、理性と智慧を持って「正義を実現するために、その言葉を使っているのか、その行動をしているのか」を点検することです。
このように、ときには正義の観点から怒りを出さなければいけないこともありますが、一般的な心の修行においては、できるだけ穏やかな心で生きるということが前進のもとになります。
アンガー・マネジメントは、自分の修行が進んでいるかどうかを自己チェックする簡単な指標の一つなのです。”

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(「Are You Happy?」2019年5月号)

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