その不調、心が原因? ストレスによる不調に打ち勝つには

このごろ、なんだか体調が悪い……。
それは、あなたの心がSOSを出しているのかも。不調の原因は、あなたの心にあるのかもしれません。

ストレスによる不調

 

ストレス不調体験

仕事がなくなる恐怖から体調を崩し、うつ病に

派遣社員として働くA子さん(32歳・独身)。この不況下で、契約満了後に次の派遣先が見つかるか不安で仕方がなかった。

身体にはまず不眠症状が表れ、次にめまいや胃痛が襲った。内科や耳鼻科では原因不明と言われ、薬を増やされる日々。

通勤に支障が出るほどの症状だったが、仕事がなくなる恐怖から休めない日々が続き、ついにベッドから起き上がれなくなってしまう。
心療内科でうつ病と診断されたA子さんは現在、実家の両親の元で心の回復に専念している。

 

ADHDの子どもに悩み、精神的ストレスはピーク

Bさん(38歳・主婦)は子育てに苦戦していた。
まったく言うことを聞かず、ぐずる息子にイライラし、つい手をあげてしまい自己嫌悪に陥る毎日。

イライラは夫との仲も壊しはじめ、誰にも相談できないBさんは食欲不振や急な動悸、無気力に悩まされた。その後子どもが心療内科でADHD(注意欠陥多動性障害)という診断を受け、医師に虐待を打ち明けたBさんも同時にストレスによる不調と診断された。適切な薬が処方され、Bさんは現在前向きに子育てに取り組んでいる。

 

パニック障害の原因は上司の怒鳴り声

ある会社の事務職C美さん(33歳・独身)は、すぐに怒鳴り散らす上司が苦手だった。
自分が怒られたことはないが、同僚が毎日怒鳴られている姿を見るたびに、(自分もいずれ怒鳴られるのでは……)と恐怖で仕事が手につかなくなってしまった。ある日、出社しようと駅に向かったC美さんはなぜか強烈な恐怖を感じ、電車に乗ることができない。

精神科でパニック障害と診断されたC美さんは適切な治療を受けて転職。
今は穏やかな上司や同僚に囲まれて働いている。

 

体調不良の根本はストレスやプレッシャー

ストレスによる不調①

原因不明の体調不良に悩む女性が増えています。女性には月経周期もあり、天候、環境の変化などにも敏感ですが、不調の根本にあるのは、さまざまなストレスやプレッシャー。職場や家庭、人間関係など、不安の種はいたるところにあり、知らず知らずのうちにストレスを溜め込んでしまうのです。

そして、心と体は密接に関わっているため、心の負荷は体に表れます。心因性の不調はまず「不眠」と「食欲不振」として表れることがほとんど。
初期の不調が表れると、ほとんどの方は風邪などを疑って内科を受診します。そして表面的診断をされ、処方されてしまうのは簡単な睡眠剤や風邪薬などの、対症療法のみの薬です。ストレスなどの根本原因を解決しないまま薬によって症状を押さえられた体はさらにSOSを出し、別の不調が表れてしまうのです。

適切な治療が遅れた場合は、うつ病や不安障害などの精神疾患として深刻化することも多く、注意が必要です。

 

女性のストレスは時代によって変化している

働く女性のストレスは、職場によるものがほとんどです。
昇進したとたん責任の重さに耐えられなくなる方や、契約が終わったら無職になってしまうという不安でいっぱいの派遣社員の方など、以前は働き盛りの男性に多くみられた症状が増えています。

主婦の方は、義父母や近所付き合いなどの人間関係や、夫や子どもといった家族もストレスの原因になります。とくに最近は子育てに悩み、うつ状態になってしまうお母さんも多いと感じます。

そして、親や友達、夫などの回りの人につらい現状を相談できず、ひとりで抱え込んでしまうと、体の不調はさらに深刻化します。心もストレスに耐えられず、必死にサインを出しているのです。

 

根本解決は、自分を見つめなおす心

ストレスによる不調2

ストレスを感じ、体調を崩してしまう心の奥にあるもの。それは不安でしかたない心、そして愛や理解を求める思いです。
たしかに体調を崩すほど追い詰められるのは非常につらい状態でしょう。しかし、そんな自分をかわいそうと思い、周りの人や環境のせいにばかりしていては、たとえ病院で適切な治療を受けても、根本的な解決にはなりません。

どんなにつらいことでも、逃げずにクリアしなければ前に進めません。生活習慣や自分の心の傾向性を見直し、休息が必要ならば休む努力をし、ときには医師や適切な薬の力を借りましょう。
憂うつだった心がすっきりと晴れ、生きていること、そして家族や友人、仕事など周りの人や環境に感謝できたとき、あなたはストレスに負けない心を手に入れているはずです。

 

ストレスによる不調に打ち勝つには

1.自分の生活を点検してみる

毎日の生活を思い出してみましょう。多忙に伴う暴飲暴食、睡眠不足など、体調を崩すのも当然な日々を送っていませんか? また、ストレスの原因もわかってくるはずです。

2.自分の心を点検してみる

寝る前に、一日の行動や自分の感情を思い出してみましょう。心からの笑顔や、うれしいと感じた瞬間はいくつありましたか? 怒りや悲しみ、苦しみはありませんでしたか? 一瞬一瞬の思いが心を乱し、身体の不調につながっていきます。悪い思いや行いは、素直に反省しましょう。

3.病院で正しい治療を受ける

精神科や心療内科、と聞くだけで拒絶反応を起こす人もいますが、カウンセリングなどを通して適切な治療を行う頼もしい機関です。薬もあなたが元気になるためのツールのひとつです。

 

人生という航海に、順調なだけの旅はありえません。

私は、人生は長い航海のようなものだと思っています。
天気のいい日は帆を風にまかせていれば目的地に向かって進めますが、エネルギーがなくなったら休憩して、燃料を補充しなければいけません。そして嵐の日は帆をたたみ、港に寄ることも必要です。

医者である私たちには燃料の補給や修理はできますが、あなたの船の舵を取れるのはあなただけです。ときには転覆しそうになることもあるでしょう。でも、順調なだけの旅はありませんし、逃げてばかりいては本来の目的地にたどり着けません。

目的地を見据え、大海原を少しずつでも進んでいきましょう。そして、つらいときは無理をせず港(病院)に寄ってください。カウンセリングや適切な薬で、あなたの航海をサポートします。

Illustration by Meguwo

 
(「Are You Happy?」2010年9月号)

小林城治 

精神科・心療内科医

医療法人社団ヘルメス会「J戸越銀座クリニック」理事長。

高い実績を認められた復職支援(リワーク)の専門機関、薬だけに頼らない療法で社会復帰をサポート。現代書林『赤ひげ名医シリーズ』に掲載他、日本テレビ『ニュースゼロ』TV東京『ワールドビジネスサテライト』等、テレビ出演も多数。

書籍『2014最新版 現代の赤ひげ 医療最前線の名医12人』に選ばれている。

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