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きみたちはなぜ、勉強するのか?―第5話「よく勉強すること」

子育て奥田さん201301月号

高い志を持って勉強しよう

 「ママも学校の先生も『勉強しなさい』って言うけれど、どうして勉強しなくちゃいけないの?」

 これは、とても大事な疑問です。
 人はいったい何のために勉強するのか。あなたはその答えを知っていますか? 勉強することの意義を、わが子に自信をもって教えることができますか? 30年前の学園ドラマに出てきた教育ママなら、こう答えたでしょう。
 
「勉強していい大学に行って、いい会社に入ってエリートになれば、地位とお金が手に入るからよ」
 
 たしかに、そういう風潮が日本の社会全体に流れていた時代がありました。
 そのころ受験生だった私は、何のために自分が勉強をするのか、明確な答えはまだ持っていませんでしたが、少なくとも「自分ひとりの出世のため、なんてちっぽけな目的のために勉強しているわけじゃない。人は、何かもっと高く尊い志を持って勉強するべきだ」と思っていました。
 
 『しあわせってなあに』第5話「よく勉強すること」には、「人はなぜ勉強するのか」という問いに対する最終的な答えが書かれています。それは、《多くの人々を幸せにするため》です。

 

エジソンたちの願い

 もちろん、勉強そのもののなかにも大きな喜びがあります。知る喜び、問題を解き明かす喜び、認識力が上がる喜び、達成感や成長感など。しかし、勉強したことが自分ひとりの幸福で終わってしまったら、そこにどうしても虚しさが残るでしょう。
 磨いた知性と蓄えた知識、創造性など、勉強で培(つちか)った様々な力を使って、人々を幸福にしたり、社会を発展させたりしてはじめて、人は勉強に尊い意義を見出すことができるのです。

 二千年前に中国で紙を発明した蔡倫(さいりん)、活版印刷を発明したドイツのグーテンベルク、飛行機を発明したライト兄弟、電球を発明したエジソン……。自分たちが勉強に勉強を重ね、努力に努力を重ねた結果が、人類をこんなにも豊かにし、幸福にしている様子を天上界から眺めたら、彼らはさぞかし幸せなことでしょう。そして、これからの時代の人々がさらに勉強を積み重ねて、科学も心も共に豊かな時代を築いていってほしいと願っていることでしょう。

 

勉強で挫折しない子どもの特徴

 勉強の意義をどうとらえるかで、勉強で挫折しやすい子になるか、簡単に挫折しない子になるかが分かれると、発達心理学でも言われています。
 自分ひとりの出世や成功のために勉強する子は、遊びたい欲求や怠け心が強くなったとき、それに抗(あらが)うだけの値打ちを勉強に見出せなくなって、どこかでボキッと折れることがあります。

 ところが、将来、人の役に立つために勉強しようと思っている子は、自分の努力を人々の幸福という大きな価値に結びつけてとらえているので、簡単に心が折れません。「自分が勉強することには大きな社会的意義がある」と知っておくことは、長い時間にわたる努力精進を支える力になるのです。

 「よく勉強し、立派な人になって、たくさんの人を幸せにしたい」そう思って努力する子どもたちが増えれば、社会はこれからも豊かに発展しますね。

(2013年1月号「子育て110番」)

 


・エンゼルプランV「お悩み相談」
子供が小学校に入学しますが、勉強のコツを教えてください。

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奥田敬子 

早稲田大学第一文学部哲学科卒業。現在、幼児教室エンゼルプランVで1~6歳の幼児を指導。毎クラス15分間の親向け「天使をはぐくむ子育て教室」が好評。一男一女の母。

 

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