【子育て110番】 仕事と子育て

「絶対に幸せになってやる」

東日本大震災のドキュメンタリー番組で、あるひと組の家族が紹介されました。中学生の少年とその父親です。ふたりは、共に暮らしていた祖父母と母親、幼い弟の4人を津波で亡くしました。学校から帰って誰もいないリビングにひとりでいるとき、少年は、なぜみんながいないのだろうと考えます。しかし、「家族を守れなかった後悔は、ぼくなんかより、お父さんの方がずっと大きい」と語ります。

父親は「震災前よりも絶対に幸せになってやる」と決意し、日々懸命に働きながら、毎朝4時半に起きて、必ず息子のためにお味噌汁を作ります。いつもおばあちゃんが作ってくれていたお味噌汁の味です。3年の月日がたち、父子はようやく天国の家族の話をしながら笑い合えるようになりました。

父は息子に語ります。「自分たちは災害で家族を失ったけど、勉強だけはみんな一緒だ。言い訳しないで努力しなさい」と。わが子を強くたくましく育てる父性の愛と、バースデーケーキを買って息子を笑顔にしようとする母性的な愛。その両方を静かに受け止めて、父を思いやる息子。互いが互いを思い、幸せを願い、支え合っていく。たしかな家族の絆がそこにあります。少年は、きっとやさしく大きく育つことでしょう。

 

家族にはいろんなスタイルがあっていい

日本では少し前まで、お父さんが仕事をして、お母さんが家事と子育てをして、子どもが2、3人いる家族が「普通の家族」と思われてきましたが、それは、高度経済成長以降、終身雇用や専業主婦という言葉が一般的だったわずかな時代のトレンドにすぎなかったのかもしれません。時代は変わります。

災害や事故、病気で家族の誰かが失われることもあります。ご主人がリストラにあったり、勤め先が突然倒産することだってあります。家計を助けるために、仕方なく仕事と家事と子育てに奔走するお母さんもいれば、仕事が生きがいで、雄々しくカッコよく社会で活躍するママもいます。一方で、仕事にあまり向かない傾向性の男性もいれば、女性以上に気配り目配りができ、“主夫能力”が高い男性もいます。

「専業主婦」が死語になりつつある代わりに、「主夫」「イクメン」「料理男子」という言葉が台頭してきました。
家族の構成や役割は実に様々であり、またそれが、家族の幸福の決定的な要因でもないということです。

 

感謝すること、逃げないこと

男性であれ、女性であれ、社会に出て仕事をし、お金を稼ぐということは、生易しいことではありません。

仕事をするお父さんやお母さん、ご主人や奥さんの苦労を、家族だけはわかってあげたいですね。

また、仕事をするお父さん、お母さんは、自分を支え、信じてついてきてくれる家族への感謝を常に心に持っていたいですね。家族がいてくれるからこそ仕事に励めるのだという感謝の心が家族をつなぎます。また、どんなに忙しくても、家族から決して逃げないこと、目をそらさないことが大事です。

家族はかけがえのない存在です。仕事や使命に生きるからこそ、一緒に笑い合う団欒の時間を、大切なものとして愛おしみましょう。

Illustration by Mika Kameo

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奥田敬子 Keiko Okuda

早稲田大学第一文学部哲学科卒業。現在、幼児教室エンゼルプランVで1~6歳の幼児を指導。毎クラス15分間の親向け「天使をはぐくむ子育て教室」が好評。一男一女の母。