上司との人間関係の悩みが解決!―読者の“共感力”体験 

人物1

【体験】

嫌いだった上司に挨拶したら、満面の笑顔が返ってきた。
(40代・主婦)

今では懐かしい話ですが、OL時代は上司との相性で悩んだものでした。そのころ私は、メーカーの総務で働いていました。
朝から晩まで、メンテナンスや社員寮のこと、海外赴任している人の住居の案件まで遠隔でやらねばならず、目のまわるような忙しさでした。ところが、直属の男性上司の部長はといえば、部下がどんなに忙しくしていてもどこ吹く風。デスクでのんびり本を読んでいたり、たまに電話で指示をするぐらいで、どう考えても楽をしているようにしか見えませんでした。

 

ぜんぜん動かない上司

例えば、私が200キロもあるコピー機を移動させているのを見ても、知らん顔。
(ちょっと、この部長、何考えてんの! こんな超肉体労働を女子にやらせて最低!)
仕事をどんなに頑張っても労りの言葉ひとつなく、逆に「これはやったか、あれは?」と詰められるばかりで、だんだん部長に対して嫌悪感を抱くようになっていきました。
しまいには目を合わせるのも嫌になり、最低限の会話だけをして、ほとんど無視するように過ごしていました。仕事もたいしてやっていない部長から、とやかく言われる筋合いはないと思っていたのです。

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「愛」ってもらうものじゃないの?

そんなある日、友人からプレゼントされた本『人を愛し、人を生かし、人を許せ』の中に、こんな一節を見つけました。
「愛とは与えることであり、与えた愛は、与えた人のものになる」

(え、愛はもらうものじゃないの?)

愛とは与えること──そんな考え方は初めて聞きました。自分自身を振り返ってみると、「頑張っている自分をほめてほしい、認めてほしい、愛がほしい!」と心が叫び続けているような気がしました。それはほんとうの愛ではなく、奪う愛なのだと、その本は教えてくれました。

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(私は奪う愛をしていたのかな)
自分の心の苦しみの原因になっている部長について考えてみました。何もしない人ですが、(彼が一応、一人ひとりの動きを見ているからこそ、仕事を詰めることができているのでは……。実は面倒見がよかったりして……)
と、思ってもみなかった面がふと見えてきたのです。

 

初めて見る笑顔の部長

与える愛とは、何か一歩でも自分から踏み出すことなのかなと思い、とりあえず、今までほとんどしていなかった部長への朝の挨拶からやってみようと思い立ちました。
翌朝、オフィスに向かう私の心臓はドキドキしていました。勇気を出して部長に挨拶をする、と決めていたからです。
「おはようございます」
入口で挨拶し、顔をあげると、部長がまっすぐ私を見て、
「おはよう!」
と満面の笑みで返してくれました。まるで準備でもしていたかのように、私を迎えてくれたのです。

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人の心はつながっている

そして思ったのです。「人の心はつながっている」ということを。こちらが心を開くと、必ず相手にも通じている不思議を目の当たりにし、「向かう人の心は鏡」なのだということを心から実感しました。
朝礼の後、なぜか部長は、仕事上取得した方がよい資格について、資料を出してきて丁寧に教えてくれました。そして自分が作りためてきたマニュアルも照れながら出してきて、「よかったら」と女子たちに渡してくれたのです。とってもフレンドリーな部長でした。
多分、シャイな部長は、女子たちがツンツンしているから、これまで話しかけにくかったのでしょう。彼も深く苦しんでいたのかも、と思いいたりました。
その日、私は、部長が誰よりも早く、朝一番に出勤していることも知りました。自分の見方がずいぶん歪んでいたと気づかされたのです。

 

部長に心からの感謝を

そして、私の心もじんわりとあったかくなっていました。
「与えた愛は、与えた人のものになる」──。私は心の中で、その言葉を実感しました。
私は、部長の“監督”のもと、なんでもやらせてもらったおかげで、以前はモタモタしていた部分も、スムーズにこなせるようになり、仕事の守備範囲が広がりました。あのときの部長には今でも心から感謝しています。

illustration by YUKIYAMA