
東証一部上場企業で一社員から取締役になった経験を持つ佐々木常夫さんに、「妖怪仕事」をする人への対処法や、自分がそうならないようにするための心がけを聞きました。
悪口にも作法がある
正直に自分や自分の周りの人を見たら、ごまかしや自己保身、悪口や噂話は、多かれ少なかれ誰でもしていることです。もう、上司の悪口はビジネスマンの醍醐味じゃないかというくらい(笑)、私もしょっちゅう言っていました。
共鳴してくれる人がいますから、そういう人となら許されるのです。ただし、悪口を広めてはいけませんし、やりすぎると周りに迷惑をかけたり信用をなくしたりします。
嘘や自己保身もそうです。例えば本当は行きたくないとき、「多忙につき出席できません」と返事をするのは、ごまかしと言えばごまかしですが、「行きたくありません」と返せば喧嘩になりますから、許される嘘です。
自分の弱い心や悪い心を自覚しながら、ある程度までは許されるけれども、それ以上は我慢しなければいけないという「作法」もあるということです。
貢献と成長を通して幸せになれる
少し大きな話になりますが、「人は何のために生きるのか」といえば、私は「何かに貢献するため」と、「自分を成長させるため」の二つがあると考えています。この二つは、どちらも生きる喜びであり、人間の本能だと思います。
なぜ貢献したい、成長したいと思うのかといえば、職場やお客様のために一生懸命働けば相手から感謝されますし、信頼されます。自分が成長していい判断ができるようになったり、知識が増えたりしたら、みんなに信頼されたり尊敬されたりします。それは自分も幸せになるということ。ですから、貢献と成長を通して、自分の幸せのために生きているということになります。
しかし間違えてはいけないのは、幸せになるためだったら何をやってもいいわけではないということです。世のため人のため、あるいは自分を成長させる結果として幸せになるのです。だから、ときには嘘を言ったり自己保身をしたりするとしても、自分の幸せを先に考えてはいけません。
何かに貢献したり、成長しようとすることを考えて、周りの人や自分を傷つけないように抑える努力が必要なのです。
佐々木さんに聞く妖怪仕事への対処法Q&A
周りに妖怪仕事をする人がいて困っているときはどうすればいいのかを佐々木さんに聞きました。
Q.ごまかしたり言い訳したりする部下に困っています
A. 親身になって 「幸せにつながらない」 ことを伝えましょう。
“困ったちゃん”の部下には、そうした行為が幸せにつながらないことを、親身になって伝えなくてはいけません。私は、「この仕事はこうやってやるんだよ」「お客様のところではこういうふうに……」と丁寧に教えていました。それは育ってほしい、直してほしいという気持ちがあったからです。部下は、上司が自分のためを思って言ってくれているのか、上司自身のために言っているのかはすぐ分かるものです。「この人は自分のために言ってくれている」と感じたときには従ってくれるものですよ。
Q. 上にはごますりをして下には厳しい上司に困っています。
A. まずは「信用してもらうこと」が大事です。
上司への対処法は「信用してもらうこと」。これに尽きます。上司は自分の評価を決め、異動を決め、仕事の方向性を決める人ですから、絶対にうまくやらないといけません。そのために私がしていたのは、「定期的に報告と相談をすること」と、「上司の注文を聞きまくること」です。その仕事が終わってからではなく、途中で報告したり相談したりして、上司の意見を聞くのです。すると「あいつは必ず報告に来る、聞きに来る」と信用されますから、仕事もしやすくなりますよ。上に対してごますりをするのは、自信がないからです。でもそういう人は、本人も自分の弱さを分かっているものです。だから部下としては、「大変ですね」と言ってあげればいいのです。気持ちを分かってあげることがうまくいくコツだと思います。
Q. 直したほうがいいと言ったら反発されてしまいました……。
A. 喧嘩になるよりは黙って見ているほうがいい場合もあります。
反発する人にまで無理に言う必要はありません。人は、どんなに鈍感であっても、相手が自分にどういう気持ちを持っているかは感じるものです。だから、“困ったちゃん”は、どうも人とうまくいかないということは、自分で分かっているわけです。それを注意されるよりは、黙って見てくれている方が、まだいいということもある。
喧嘩になってしまうだけだからです。孤立して寂しくなって、自分で損だと感じてもらわないと直らないこともあるということです。
自分が妖怪にならない心がけ すべての人をリスペクトする
私は30歳のときから、年下も年上も、みんな「さん」付けで呼ぶようにしました。なぜなら、私より年下でも私を超えるものを持っているからです。みんないいところを持っているから、それをリスペクトして組織運営していくと、組織が活性化するということにも気がついたのです。
例えば、「○○さん、忙しいだろうけど、これ明日までにできるかな?」と言われたら、ちょっと難しくても「やってみます」となるじゃないですか。それは、私自身が上から指示されたときに、「なんでこんな、人をバカにしたような言い方をするんだろう」と思っていたからです。しかも、夕方になってから明日の朝までにやってくれと言う上司もいる。私は自分が管理職になったら、絶対そういうことはやらないようにしようと思いました。
それにはどうしたらいいか。それで「相手をリスペクトすればいいんだ」と考えたのです。部下を大事にしているから、事情を聞いたり、意見を聞いたりする。そうすると、相手はいろいろなことを言ってくれるようになります。例えば、「こういうやり方はどうでしょう?」と提案してくれたりします。リスペクトすることによって部下は、自分で考えようとか、自分で提案しようという気持ちになるのです。仕事の成果も出ますし、とてもいい雰囲気になりますよ。
佐々木さんの体験談 正しいことをした方が結果的に幸せになれる
東レにいたとき、ある大きなミスで取引先に損害を与えそうになったことがあります。取引先は漁網の製造会社で、私は誤って、先方から指定された強度に満たない原料を出荷してしまったのです。しかも、ミスに気付いたのは、先方がその原料で製品を作った後。私はすぐに原料の代替品を納め、出来上がった製品を時価で買い上げました。もちろんこちらは大損です。しかしその後、この対応を先方の社長がとても評価してくださり、取引を増やしてくれたのです。
私はどちらかというと、正しいことを常に言い続けて、会社もそれを受け入れてくれて出世しました。ところが、役員になって会長に意見を言っていたら、1期で役員をクビになってしまった。最初はショックでした。
でも、置かれた場所で咲きなさい、じゃないですが、子会社の社長として、「ここで頑張ろう」と思って仕事をしてみたら、社長ですから、いろいろなことが自分の思うとおりにできる。仕事を効率化して残業をなくしたり、みんなの意見で組織を変えたりしているうちに、私のことが雑誌に載って、本を書くことになりました。そうして今も本を書いていますし、講演の依頼も来ます。だから、東レに残っているよりずっとよかったと思います。
自分のなかの「妖怪性」を発見し、反省を深めるのにおすすめ

生きた人間にも宿る妖怪の特徴を明かした、大川隆法・幸福の科学総裁の箴言集。「自分の正体を見せない」「事実をねじ曲げる」「相手を見下す」「生産性がない」「自己保身に走る」などの妖怪の総論は、誰しも一部当てはまるところがあり、自らの「妖怪性」を反省するのに最適の一書です。
『妖怪にならないための言葉』大川隆法 著 幸福の科学出版
(「Are You Happy?」2023年9月号)
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佐々木常夫 ささきつねお
東レ取締役、東レ経営研究所社長を経て、2010年より現職。さまざまな事業改革に努めながら、プライベートでは自閉症の息子、病を抱える妻を支えてきた。著書は『ビッグツリー』(WAVE出版)ほか多数。2024年4月永眠。



