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恐怖心に負けないで、親子で明るく元気に人間らしく生きていこう!

恐怖心が免疫力と生命力を弱める

私の両親は、ありがたいことに八十歳を過ぎても元気いっぱいです。気力もバイタリティもたいして衰えず、納豆やキノコや栄養価の高いスプラウト、海の幸、山の幸を毎日バランスよく食べ、日々、遊歩道を一万歩も歩き、「幸せじゃ、ありがたいのう」と言いながらご近所の方々と仲良く暮らし、食欲と生命力に溢れて過ごしています。だから、新型コロナウィルスの感染拡大で自粛が叫ばれても、ピンピン元気に暮らしているものだとばかり思っていました。

ところが4月はじめ、父から、聞いたことがないような切羽詰(せっぱつ)まった声で電話がかかってきました。

「ワシも母さんもコロナが怖くて一歩も外に出られん。家族が仕事から帰ってくると、コロナを外から持って帰ったんじゃないかと心配で、うつされるんじゃないかと思うと腹が立って眠れん。母さんは毎日TVのワイドショーばっかり見て『コロナにかかりたくない』と言って、ノイローゼになりかけて寝込んどる」
私は、両親の心のケアを怠った自分の迂闊(うかつ)さを後悔し、スピーカー越しに力いっぱい話をしました。

「よく聞いてね。二人とも、毎日栄養の良い物を食べて、よく歩いて、本当は人並み以上の免疫力も生命力もあるでしょ。長い人生の中で、今の若い人が経験しないような山も坂もたくさん越えてきたでしょ。私が人生で一番つらかったとき、『ジタバタしたら傷が深くなる。じっと歯を食いしばって堪えろ。必ず笑える明日が来る』と励ましてくれたでしょ! 二人とも本当はもっともっと強いでしょ! 一番怖いのは病原菌より恐怖心だよ。怖がれば怖がるほど生命力も免疫力も減って病気になりやすくなる。自分を守りたい、生き延びたいと思えば思うほど、家族さえ敵に見えて、心の中から、優しさも愛もなんの光も出なくなる。しっかりするの! 神様に生かされていることと、与えられた今日の命に感謝して、周りの人にも感謝して、元気に笑って仲良く明るく生きるの! 神様に御祈願して、後の運命は神様に任せて、一日一日、感謝と御恩返しに生きるのよ!」

生まれて初めて、泣きながら両親を諭さとしました。二人は電話の向こうで「ああ、そうだった、そうだったなあ」と子供のように泣いて、恐怖心や疑心暗鬼が吹っ切れたのか、また元気いっぱい、家族や近所の人たちに笑顔と親切を配るようになりました。

人間の尊厳を守って生きよう

人は恐怖にとらわれると被害意識が強くなり、他罰(たばつ)的になりがちです。それは天国的な心ではなく、地獄的な心です。命は大切ですが、この世の命だけに執着して生きたなら、動物と変わらなくなります。人間は、命より大切なスピリッツやソウルがあるからこそ尊いのだと思います。

パパ、ママ、お子さんとしっかり触れ合いましょう。ハグをしたり、声を出して語り合うことで感じる温もりや愛をいっぱい教えてあげましょう。神様に感謝して、自然にも周りの人々にも感謝して、人間本来の心を大切にしましょう。恐怖心に負けないで、一日一日、親子で明るく元気に人間らしく生きていきましょう。

(「Are You Happy?」2022年4月号)

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奥田敬子 

早稲田大学第一文学部哲学科卒業。現在、幼児教室エンゼルプランVで1~6歳の幼児を指導。毎クラス15分間の親向け「天使をはぐくむ子育て教室」が好評。一男一女の母。

 

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