子育てあるある
まずは、左ページの5枚の絵を見てください。「あせって自転車をこぐママ」「イライラしながら子供のお支度を見張るママ」「うろたえてパニックになるママ」「笑顔で子供の頭をなでるママ」「怒ってドカーンと雷を落とすママ」正直私には、過去にどれもたくさん身に覚えがあります(汗)。
しかし、あるとき気づいたのです。焦ったり、イライラしたり、怒ったりしているとき、自分の心から黒い煙がモクモクと立ち上っていて、その煙の煤(すす)が、自分の心を汚しているということに。自分だけでなく、子供の心も汚していることに気づきました。そしてときには、焦りやイライラや怒りが、物理的な力をもって事故や怪我にもつながるということを知りました。
イライラ・ドカーンの代償
心が、焦りやイライラや怒りの感情にとらわれているとき、人は、心が正しく機能しなくなります。視野が狭まり、思考力が低下し、落ち着きを失い、正常な判断力を失います。私にも経験があります。
ある日のこと、子供の習い事に遅れそうになって、自転車の後ろにお兄ちゃん、前に妹を乗せて幹線道路脇の歩道を全力疾走していました。(もうっ、なんでこういうときに限ってうちの娘は泣きぐずるかなあ。いや、そもそも私の段取りが悪いのか。あー、やばいやばい!)と心の中でぐるぐるしながら、足だけは力いっぱいペダルをこいでいました。
そして、交番前の信号が黄色から赤に変わったタイミングで、ためらわずに交差点に突っ込んでいったのです。次の瞬間、交番のスピーカーから「お母さん! お子さんの命が危ないですよ!」とお叱りの声が飛んできました。が、私はスピードを落とさないまま走り続けました。自分では、事故に遭わないギリギリのタイミングを見計らったつもりだったからです。
塾に着いたとき、突然、頭の中に子供が事故に遭う映像が流れ込んできました。ハッと正気に戻った私は、自分と子供の近い未来を見たような気がして寒気がしました。そして、焦りやイライラが、自分から正気を奪っているという事実に気づいたのです。
ママって、朝、イライラ・ドカーンのスイッチが入りやすいですよね。「さっさと起きないとまた遅刻するわよ!」「だから夕べのうちに時間割をそろえなさいって言ったでしょ!」「さっさと着替える!」「いつまでごはんを食べてるの!」こう言って家から送り出した後のわが子の心の中や頭の中で何が起こっているか、考えたことがありますか?
一度、想像してみてください。ママの心からモクモクと出たイライラや怒りの黒煙をいっぱい浴びた心は、とても平常心ではいられません。黒い雲におおわれたような状態になっています。ママの言葉が頭の中でリフレインしているかもしれません。そうすると、普段なら気がつく車の気配に気づくことができないかもしれません。大事に至る前に、自分の心の黒煙に気づき、ブレーキをかけてほしいのです。
さあ、新年度です。「あせらない・イライラしない・うろたえない・えがおを忘れない・おこらない」を自戒の言葉にしましょう。笑顔で子供が守れるなら、安いものです。
(「Are You Happy?」2018年5月号)
奥田敬子
早稲田大学第一文学部哲学科卒業。現在、幼児教室エンゼルプランVで1~6歳の幼児を指導。毎クラス15分間の親向け「天使をはぐくむ子育て教室」が好評。一男一女の母。