〔お悩み〕
ある日突然息子が、高校を卒業したらお笑い芸人になりたいと言い出しました。テレビでは華やかに活躍していますが、多くの芸人さんは厳しい生活を送っているということは知っていたので、私はもちろん反対しました。ですが、どうしてもなりたいと言って聞きません。親としてはせめて大学を卒業してからにしてほしいと思っているのですが、息子の夢は応援するべきでしょうか。(岡山県/44歳)
どんな道であってもプロになるのは大変なこと
中高生になると、将来の職業を考え始めますが、希望の職業が時期によって変わることはあります。私が校長を務める学校では、中学のときに志した夢を高校でも持ち続けている子もいますが、変化している生徒は大勢います。まずは、息子さんの「夢」が、お父さんが反対しても心の底から変わらない願いなのかを見極めてください。今後変わっていく可能性が少しでもある場合、人生の選択肢が広がるという意味では、大学進学を勧めて良いかと思います。
お父さんのおっしゃるように、「多くの芸人さんは厳しい生活を送っている」という現実は、息子さんに何度も言うべきでしょう。何十年もプロとして生活していける方はひと握りです。さらに伝えてほしいことは、「日常生活がお笑いのような生活をしている人は、お笑い芸人としては一流にはなれない」という事実です。真面目に勉強し、日々に芸の研究を怠らず、人格力を磨く努力を継続してこそプロになることができるのです。
大勢の人の目を騙し続けることはできない
ある映画監督の話では、「俳優は演技をしていても、日頃の生活態度や、信条、どういう生き方をしてきたか、ということは隠せない。必ず素の自分が出てきてしまう」と言っていました。芸能の世界で、大勢の目を騙し続けることはできません。いろんな角度から自分を見られても、離れず応援してくれるファンがたくさんいてこそ長く続けることができます。
お笑い芸人を目指していても、芽が出ることなく終わっていく人や、一時期人気が出たものの、その後消えていく人がたくさんいます。時代の流れや運があったとしても、成功を続けるには、いろんなことに関心を持ち、勉強熱心で、裏表なく誠実に生き、人間力を磨くといった「努力をする覚悟」が必要なのです。人前で話すことがお笑い芸人の方の仕事ですが、家では寡黙に考える時間を取り、次の仕事のために集中し、バランスをとっている方も多いといいます。こうした現実の厳しさを、人生の先輩であるお父さんから説得力を持って話してあげてください。
どんな現実が現れてもセルフ・ヘルプの精神を
息子さんの決意が変わらないなら、そのときは応援してあげ、厳しい道にチャレンジする息子さんを見守ってあげましょう。人生100年時代、社会に出てからも長い時間を生きます。どのような現実が目の前に現れようとも、決して他人や環境のせいにせず、「大人としての責任を果たす」というセルフ・ヘルプの精神を持ち続けられるよう導いてあげることが重要です。大事な時期を、親子でコミュニケーションを取る時間にしてください。もう大丈夫!!
(「Are You Happy?」2022年8月号)