シェフたちに聞いた食にまつわるこぼれ話

日々「食」のプロとして厨房に立つシェフたちに、料理を作るときに心掛けていることや、仕事の中で心に残った食にまつわるエピソードを聞いてみました。

Episode1 イタリアの市場で感じた食材に触れる大切さ

若いころ行った、1年弱のイタリア料理修業。食材を仕入れるために通った地元の市場には、動物の姿の残ったカット前の肉や新鮮な採れたて野菜が、所狭しと並んでいました。イタリアでは市場で買い物する人も多く、お母さんやおばあちゃんについてきた子供たちも見かけます。ときには、子供たちの目の前で猪を絞めたりすることもあると聞きました。ちょっとショックな光景ですが、“命をいただく”実感が食べ物に感謝する気持ちを育てるんだなと感じた経験でした。

Episode2 “思いのスパイス”がおいしさの秘密

料理のおいしさを決めるのは、いかに気持ちがこもっているかということ。作っているときの気持ちがすべて味に出るので、プロとしてネガティブな気持ちを厨房に持ち込まないよう気を使います。料理が苦手という方も、試しにご家族など食べる人が喜ぶ顔を思い浮かべながら作ってみてください。“思いのスパイス”が効いて、不思議と味が変わりますよ。

Episode3 いろんな味を知る努力

外食するときは、あえて自分が普段食べないものを選んでいます。味の好みは人によって違い、偏るので、バラエティのある味付けができるよう、いろんな味を知っていることが大切。これは、家庭でも役立つと思います。例えば、奥さんは魚と野菜が好きだけど、旦那さんはハンバーグやカツなどの肉系メニューが好きというケースもあるかもしれません。食事は毎日のことなので、ちょっとした好みの違いがストレスの原因になることも。そんなとき、外でいろんなものを食べて、たくさん味を知っていると、「こういう味が好きなのも分かるな、これも確かにおいしい」と思うことができるはずです。また、味を知っていれば、相手の好みに近づけていくヒントにもなります。

Episode4 カップ麺もエナジーフードに!

「ごはんは手作りが一番!」とはいえ、朝お弁当を準備する時間もなく、仕事が忙しくて夜も遅くなる。気が付くと3食ともコンビニやインスタント食品に頼ってしまっていたという経験がある方もいらっしゃるかもしれません。私も、時間がないときは手軽に食べられるカップ麺などで済ませることがあります。ただし、できるだけ家族など自分以外の人にお湯を注いでもらうように頼みます。それだけで、カップ麺でも愛情がこもりエナジーフードに早変わり! 不思議ですが、自分で用意するより元気になれます。

Episode5 お見舞いにもらった大盛りステーキ弁当

10年ほど前、軽井沢のホテルで働いていたころの話。風邪を引いてしまい、寮で一人で寝ていると、同僚と料理長が様子見がてらお弁当を届けてくれました。まだ温かいお弁当を開けてみると、なんと職場で使用する食材がふんだんに入った「豪華ステーキ弁当」。ご飯は大盛り、ヒレステーキやオードブル、サラダ、フルーツに加え、別のフロアにある和食の調理場の煮物や漬物も入れてくれていました。あたたかい気遣いと、どう見てもお見舞いに持ってきたとは思えない量の「病人弁当」のおかしさで、泣き笑いしながら完食。仕事柄、お客様の笑顔を見て幸せな気持ちになったり、うまく味付けできたときに「これは喜んでいただけるだろうな」とワクワクすることの方が多いのですが、このお弁当は自分が食べてハッピーになった、とっておきの思い出です。

Episode6 「地元食材」の持つ力

何度か転勤を経験したことがあり、そのたびに思うのが、「土地の食材」を食べるとエネルギーをもらえるということ。お客様に、「地元でとれた野菜ですよ」と言って出すと、召し上がるときの表情が違います。元気になって帰っていかれるのは見ていてとてもうれしい。沖縄にいたときは、地元の人に聞いて食文化を勉強し、沖縄ならではの料理に挑戦したりしました。例えば、ソーキそば。お肉を下ごしらえし、麺も何種類か準備して味比べ。出汁は評判のお店を食べ歩いて研究しました。やはり、その地方で育まれた食材や風土に合った食事をその場所で食べると、より力をもらえます。

(「Are You Happy?」2015年4月号)