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朝、髪にひと手間を〔岡野宏のビューティーレッスン〕

暮らしが見える髪

朝の光が入る電車の中で、ぼさぼさの髪の女性がいました。よく見ると、顔はきれいに化粧をしています。さて、人は彼女にどのような印象を抱くのでしょうか? 

残念ながら、化粧の美しさより寝癖のついた髪に目がいきます。生活の乱れを感じ、哀れとさえ思ってしまうのです。

人は、相手の髪をぱっと見ただけで、その人がどのような立場で、どのような生活をしているか、そして性格までをも想像してしまいます。

忙しい朝の優先順位

あるとき、桃井かおりさんが寝坊しました。家を出るまであと10分。着替えに4分、残り数分で何を優先すべきか?

「髪の毛の醜い女は嫌がられるじゃない。それで髪にかけたのよ。顔はすっぴんでも〝まーいいか〞って」

彼女がテレビ局に着いたとき、役者の日野正平さんが声を掛けました。
「朝からデートだったの?」
艶やかな髪がそう思わせたようです。そのまま取材を受けられそうな雰囲気が、すでに桃井さんに出来上がっていました。美しい髪は他の不具合をカバーしてくれます。逆に、いくらメークをきれいにしても髪を美しく見せてはくれないのです。

樹木希林さんは、まず髪を整えてから化粧をされていました。髪を整えると、最低限するべきメークが見えてくるのだそうです。前髪の分量や横顔がどのくらい見えるか、髪のスタイルがガイドラインとなり、少しの手間で効果を発揮できるメークの仕方が分かってきます。それは、本能的に人は美しいものに添う傾向があるからで、例えば白線を引くと、それに寄せて歩きます。美しいものを見ると気持ちが引っ張られ、きれいに寄り添おうとするのです。

美しい髪はさらさら動く

指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンの美しさは、顔の彫りの深さと、指揮のときに揺れ動くプラチナの髪に見られます。彼の演奏会のチケットは、音が美しく聞こえる席よりも、かぶりつきで見られる前席から売れるのでした。

カラヤンの髪はきれいにホットカーラーで形づけた後、それを保つためにスプレーをしますが、その後に美しく見せる秘密があります。一度固めた髪をブラシで梳いてしまうのです。すると、指揮に合わせて髪がさらさらと動きます。髪を美しいと感じるのは、髪の間に風が入った状態のときです。崩れないようがっちりスプレーをかける人がいますが、ほどほどにしておかないと美しさが半減してしまいます。

髪をつやつや、さらさらにする方法

髪はドライヤーやホットカーラーで熱を加え、強く引くことで艶が生まれます。そうすると、はがれたキューティクルが整い、枝毛は見えにくく、縮れは伸び、風にそよぐさらさらな髪になります。美容院で整えてもらうとつやつやさらさらな髪に仕上がるのは、美容師がそのようにしているからです。ご自分でされるときは、髪の負担を軽減させるために、シャンプー後、トリートメントでコーティングしたり、霧吹きで水をスプレーしてから熱を加えることをおすすめします。パサパサ髪の人は、シャンプーの前にトリートメントをするようにしてください。つけすぎるとべっとりするので、量に気をつけましょう。

朝、髪の1本1本に思いを込めて葛藤をしていると、思うようなスタイルに仕上がらなくても、全力を入れ込んだ気配が髪に漂います。

今まで顔にかけていた時間を少し髪に回してみてください。顔が生きてくるのが分かるでしょう。

© K’s color atelier

「顔は見えなくても、後ろ髪に表れる! ?」

今月のレッスン

顔にかかる髪を軽くするのが、美しさのコツ。重く感じる日は耳に掛けたり、結んだりしてみましょう。

 
(「Are You Happy?」2019年5月号)


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