違和感のある眉山
眉は形や色で印象を変えられるため、凹凸の少ない日本人の顔の中で印象を大きく左右する重要なパーツです。
物語の世界ではメークで落ち着きのなさや滑稽さを表現することがあり、眉山を眉中心近く、または内側寄りに描きます。ピエロの眉がその代表例で、見た人に異質なものを感じさせます。スケートの宮原知子選手がこの眉で演技されるのを見ると違和感を覚えますが、印象に残るよう計算された演出なのかもしれません。相手の心にすっと入るには、眉山を眉の中心より外側に描きましょう。
濃淡をつけて表情豊かに
平坦で陰影に乏しい日本人の顔は、眉に濃淡をつけることで表情が生まれます。眉頭1センチくらいを薄めに、眉山に向かって徐々に濃くし、眉尻に向けて中間の明るさになるようにします。人との会話同様、初めにドカンとしたものが来るより、薄めに入り徐々に濃くする方がすんなり気持ち良く相手が入り込めるのです。
一枚の紙をベタッと貼り付けたように全部が同じ濃さに見える眉を「ベタ眉」と言い、能面や歌舞伎の隈取りのように感情が出ないため、表情を強く見せ、演技が加わったとき初めて活きる眉です。オードリー・ヘプバーンのベタ眉は、表情豊かな彼女が魅力的に見えるよう計算されています。彼女に憧れて眉を真似する方もいらっしゃいますが、表情の変化が乏しい人がこの眉にすると不気味に見えるので気をつけたいものです。
目力を強める薄眉
薄い色の眉は目が際立つため妖艶さが演出されますが、さらに薄くなると怖さがプラスされます。中国の習近平国家主席やイギリスのメイ首相の眉は薄く、どのような笑顔を見せても怖さを感じてしまいます。20年ほど前、習近平氏を「将来のトップになる人」と紹介してくれた小沢一郎氏も薄眉でしたが、政治家は眼光の鋭さを強調する眉がお好みのようです。
程よい濃淡になっているかは、自分では分かりにくいので、周囲の反応から調整してみると良いでしょう。
また、最近は白髪を染めないスタイルが流行っていますが、白髪に対し眉毛が濃く感じられる場合は、眉毛の長さを半分ほどにカットすると、白髪とのバランスがよくなります。
色や形で個性的に
この頃は、黒髪に茶眉というように、眉と髪の色が違うのもお洒落で、個性的と捉えられるようになりました。
友達が少ないのが悩みという方は、柔らかい色みとタッチで太眉にしてみましょう。顔全体のメークの調子も淡くすると、人当たりの良い印象になります。
細眉はグレーか黒で描くと、洒落た大人の雰囲気が生まれます。ただし、真夏の太陽の下では似合わないので初秋がおすすめです。メーク全体をパリの秋の色みを思わせるような抑えた調子にするか、逆にタッチを強めに赤いルージュを合わせましょう。
自然な眉を生かす
ファッション雑誌のモデルのような美眉人気の一方で、産毛を残した自然派の眉の人も見かけるようになりました。女優は主役を取るようになると眉が完成すると言われますが、太目の自然な眉に行き着くことが多いように思います。
自然な眉を生かすには、少しだけカットして形を整え、くしでとかします。ほんの少し指につけたオイルや乳液で艶を加えてみてください。生き生きした表情に温かさ、優しさ、強さといった内面の充実が現れます。
© K’s color atelier
「硬めのペンシルで 薄く何度も重ねると 失敗しません」
今月のレッスン
眉は左右同じ形に描けなくても、雰囲気が同じになるようにすればOKです。
(「Are You Happy?」2019年3月号)
好評連載中
「岡野宏のビューティーレッスン さあ、はじめましょうか!」
第59回 「選んで未来を変える」
(2022年3月号)