シングルママ・パパへ―「幸せな子育て」のための7つのメッセージ

幼児教室エンゼルプランVで子供たちやその保護者と日々接し、本誌連載「子育て110番」も人気の奥田敬子さん。自身もシングルマザーで2児を育てた経験から伝える、シングルママ・パパへの7つのメッセージです。

WEB_201803 - 奥田先生インタビュー

 

〔Message1〕
「ごめんね」ではなく「幸せにしてあげるからね」

離婚した方、妻や夫と死別した方、未婚の母という人生を選んだ方など、シングルママやパパになった経緯はいろいろだと思います。

自分ひとりで子供を育てるのだと強く決意しながらも、後悔や無念、未練が湧いてきて、過去を振り返って眠れぬ夜を過ごすこともあるかもしれません。

でもどうか、子供には「ごめんね」ではなく「必ず幸せにしてあげるからね」と言ってあげてください。

以前、本誌連載でもご紹介しましたが、東日本大震災で家族を失った父子のドキュメンタリー番組がありました。
2011年、震災のあったあの日、両親とふたりの男の子、祖父母の6人で幸せに暮らしていた一家を津波が襲い、お父さんと小学6年生のお兄ちゃんだけが残されました。

お父さんは「震災前よりも絶対に幸せになってやる」と誓い、朝は4時に起きて息子のためにおばあちゃんの味のお味噌汁を作り、懸命に働きました。息子の誕生日にはケーキを買い、「震災を言い訳にせずに、勉強だけはがんばれよ」と励まし、やがて3年の月日が流れて、ふたりは家族の写真と一緒に笑い合えるようになりました。

人は、この世的な条件が揃ったときに幸福になるのではありません。「幸福になろう!」とする心の力で幸福になるのです。今ある家族の形を大切にしてください。

 

〔Message2〕
愛は時間ではなく深さです。一緒に過ごせる時間を大切にしましょう

幼少期の子供は、ママやパパと過ごす“絶対時間”がほしいものです。ママやパパも、できることならそういう時間をわが子にたっぷり与えてあげたいでしょう。でも、ゆったりした時間を生み出すことは、シングルのママ・パパには厳しい課題です。削れるのは自分の睡眠時間くらいですが、そこはもう削っている、という人も多いでしょう。では、どうするか。

思い返すと、老舗の呉服屋の女将さんだった私の母は、一年中大所帯を切り盛りして、自分の時間などどこにもないほど働き詰めでした。三姉妹の末っ子だった私は、3歳くらいまではほぼ親戚に預けられて育ち、母と接することができる時間は1日にたった10分か15分でしたが、それでも毎日母の愛を感じていました。というよりも、愛されていることに対して不安を感じていませんでした。一緒にいる時間は少なくても、見てくれている、思ってくれている、信じてくれていると幼い心が感じていたからです。褒めるべきは褒め、叱るべきはきっちり叱ってくれました。「お母さんが見ていなくても、神様や仏様の目はごまかせないよ」と、大事なことも教えてくれました。

愛は時間の長短ではなく、深さなのでしょう。どんなに長い時間一緒にいても、そこに通い合うものがなければ愛は伝わりません。逆にどれほど短い時間でも、いや短いからこそ、わずかな触れ合いの中に込める愛の質が求められるのでしょう。たとえ10分でも、頬をなでてくれる、心から褒めてくれる、心から叱ってくれる、しっかりと瞳の奥まで見つめてくれている……。そういう愛のサインを、子供は受け止めているものです。

もし、思春期の子供に「あんたに何が分かる」となじられたら、こう言ってあげてください。「分かってあげられなくてごめんね。でも、あなたのことが知りたいの」。おそらく、大切なのはわが子から逃げないことだと思います。

三人

 

〔Message3〕
愛と信頼の絆を紡いでいきましょう

仕事で疲れたり、子供と心がすれ違ったりするとき、ふと「こんな自分が育てて、この子は本当に幸せになれるのかな」「自分より、別れた相手について行ったほうがよかったんじゃないかな」そんな思いが胸をよぎる日もあるかもしれません。
でもどうか、不完全な自分を許してあげてください。パーフェクトな親なんて、本当はどこにもいません。みんな、自分の愛が少し不安なんです。だから、日々愛を紡ぐ努力をするのです。

愛は、日常の積み重ねです。毎日抱きしめ、毎日頭をなで、毎日名前を呼び、寝顔を見てほっとする。そういう年月の中で、愛はゆっくりと育まれてゆくものです。どうか、その一日一日を愛おしみながら過ごしていただきたいと思います。

 

〔Message4〕
わが子のために日々祈ってください

幼稚園までは、まだまだ親の庇護下にあった子供が、小学校に上がった途端に親の手の届かない世界でたくさんの時間を過ごし始めます。ワーキングママやシングルママの場合は、保育園の段階でこれを経験するかもしれません。そんなとき、「わが子は困って泣いてないだろうか」「園や学校で怪我なんかしてないだろうか」「いじめられてないだろうか」と、ついついわが子を心配して不安になります。私もそうでした。
しかしあるとき、「神様、仏様がいつもわが子を見守ってくださっているんだ」ということに気づいたのです。それから、毎日しっかりとお祈りをするようになりました。

「どうかわが子に病気やケガがありませんように。不幸が訪れませんように。神仏の子として立派に育ちますように。子供が困っているときは、SOSに気づける私でありますように。子供を見つめるべきときや、ともに考えてあげるべきときに、立ち止まり、気づける私でありますように。どうか神よ、お導きください」と、日々祈りましょう。あなたの心に愛があり、正しく生きよう、子供を神仏の子として立派に育てようと努力している限り、必ず天のお導きがあるはずです。

 

〔Message5〕
周りの方への感謝を忘れないようにしましょう

シングルで生きていく決断をした際、私がいちばんに懸念したのが、「もし、自分が病気や事故で急に死んでしまった場合、この子たちはどうなるのか」ということです。

働き盛りで健康に自信があっても、人間の運命というのは分からないものです。私にもしものことがあったとき、この子たちを愛し、育ててくれる人はいるだろうか。例えば、自分の両親やきょうだい、親族、相手が存命の場合は、元の伴侶や親族、または特別近しい関係の友人、知人が考えられます。

ここで振り返らざるを得ないのが、今日まで自分が築いてきた人間関係です。自分は、周りの人々とどのような人間関係を築いてきたか、どの程度の信頼関係を築いてきたか、そのための努力を惜しまなかったか、あるいは惜しんできたか。そう考えたとき、私は初めて、これまでの自分は周りの人々への感謝も報恩の努力も足りなかったと気づきました。

あらためて振り返れば、ありがたいことばかりです。年老いた両親がまだ元気でいてくれること。「何かあったら頼れよ」と言ってくれること。仲のよいきょうだいがそう遠くない所に住んでいてくれること。私が仕事で泊まりがけの出張をする際には「子供たちが何か困ったときは、どうぞよろしくお願いします」と言えるご近所さんがいてくださること。学校では栄養のバランスのいい給食を食べさせてもらえること。子供が熱を出したとき、「休んでいいよ」と言ってくれる上司や同僚がいること。私たち親子は、本当にたくさんの人の思いに支えられていると気づきます。

だから、たとえ今日一日を生きていくことで精一杯の日々の中でも、「ありがとう」のひと言を忘れないようにしよう。
たとえ、周りの人に十分な恩返しができなかったとしても、感謝の心とやさしい微笑みを返すことだけは忘れないようにしよう。
神様に、この運命に感謝して生きよう。そう心掛けて日々生きてきました。

どうか、周りを見渡してみてください。あなたを支えている誰かがきっといるはずです。

じいじばあば

 

〔Message6〕
離婚は自分の力と責任で幸せになるチャンスです

世間ではマイナスのイメージも強い「離婚」。けれど当事者にとっては、自分の意志と責任において、人生の再スタートを切るための一大決断をしたということ。まずは、そんな大きな決断をした自分を褒めてあげましょう。

おそらく離婚前は、どこかで相手に依存し、相手を責めて苦しんでいたでしょう。かつて愛した人から、もう男として、あるいは女として見られていないことに、男性も女性も心が傷ついたことでしょう。その傷は、しばしの間心静かに受け止めましょう。

けれどあなたは、伴侶への「自分を幸せにしてほしい」という依存をやめ、ひとりで立ち上がったのです。自分の力と責任で子供たちを幸せにするチャンスを自分でつかんだということです。このチャンスを活かして、輝いて幸福に生きる姿を見せることが、子供への大きな贈り物になります。

 

〔Message7〕
手をひいてきたわが子がいつか背中を押してくれます

私が離婚して1年目のころ、当時勤めていた職場の上司に毎日のように叱られ、相当へこたれていました。
そんなある日、帰宅して家のドアを開けると、両親がわざわざ訪ねてきてくれて、子供たちのために温かいご飯を用意してくれていたのです。
ありがたいなあと思いながら食べ始めた瞬間、日ごろのつらさが涙となってポロッとこぼれました。すると、私には甘い父が「自分で選んだ道だ。子供に涙は見せるな」と叱ってくれました。そのときは受け止め切れませんでしたが、男として社会を生き抜いてきた父のあのひと言が、私を強くたくましくしてくれました。

ある年の勤労感謝の日に、自室で仕事をしていると、息子がわざわざノックして部屋に入ってきました。「お母さん、いつも本当にありがとう」。大きく育った体を90度に折って、初めてそんなお礼を言われました。涙をこらえるのが大変でした。

シングルって、やってみないと分からないことがたくさんあります。仕事と子育てと家事と世間との付き合い、ひとり何役もこなすのは想像以上に大変です。子供自身も、最初はあなただけが頼りで、不安なこともあるでしょう。でも、子供の中には、「生きてゆこう、天に向かって伸びてゆこう、大きくなろう」とする力が満ち満ちています。そして、子供たちも思春期を過ぎるころにはあなたの背中を押してくれるようになります。
大変な日には、深呼吸をして、神様がわが子に与えてくださった大きな力を、ただ信じましょう。

親子

 
Illustration by Mochigome
(「Are You Happy?」2018年3月号)

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奥田敬子 

早稲田大学第一文学部哲学科卒業。現在、幼児教室エンゼルプランVで1~6歳の幼児を指導。毎クラス15分間の親向け「天使をはぐくむ子育て教室」が好評。一男一女の母。