40年にわたりNHK美粧部に在籍し、国内外の女優や政治家などのメークアップに携わってきた岡野宏さんが考える「魅力ある人」とは? さあ、一緒に美しさへの一歩を踏み出しましょう。
キラキラでトラブルカバー
慌ただしい年末は、顔にトラブルを抱えがちです。肌の調子が優れないとき、メークでカバーしようとすると、かえって不自然な仕上がりになることもあるでしょう。そんなときは、顔のそばにゆらゆらキラキラ光るものを身につけるのが効果的です。
浅丘ルリ子さんの顔に吹き出物ができたとき、チェーンの先にダイヤがぶら下がったイヤリングをつけてもらいました。
「ニキビなんてめったにできないのだけれど」
ルリ子さんの顔は曇っています。
「大丈夫です。メークで隠すより、効果がありますよ」
彼女が観客の前に現れると、ダイヤが陽の光りを散らしました。「かわいい」と言う声に混じり「キラキラしてきれいねー」と聞こえたらしめたもの。目的達成です。晴れやかな顔で撮影に臨まれました。
ニュースキャスターは、画面上ゆらゆら光るイヤリングは身につけないことになっています。視聴者が気になり、ニュースに入っていけないからです。もし、キャスターがそれらをつけていたら顔をよく見てください。どこかにトラブルを見つけることができるでしょう。
〝勝った〟〝負けた〟にしない
キラキラ光るものを身につけると、自らが輝いているようで気分も上がります。ただ、度が過ぎると反感を持たれかねません。
数年前、料理研究家の王馬煕純さん主催の会にゲストとして呼ばれました。女性参加者たちは、ありったけのアクセサリーを身につけてきたようで会場はきらびやかです。そのような中、王馬さんと安倍昭恵首相夫人に挟まれた私の席は、浮き足立つような会場の中で、ふっと落ち着ける場所でした。
女性のアクセサリーは〝勝った〞〝負けた〞になりやすいものです。
「年を重ねたら、感じ良いものを少しつければいいのよ」
そうおっしゃる王馬さんの口元を拭く指に、親指ほどのエメラルドの指輪をされているのが見えました。それ以外のときは、品良く重ねた手の下にひっそりと置かれています。
主催者や主席客人は参加者に華を持たせるため、またライトが当たり、光が集まるところにいるため、控え目ぐらいでちょうどよく映ります。光り止めされたプラチナのネックレスを合わせられたシックな昭恵夫人と王馬さんの間の席の居心地の良さは、彼女たちの心遣いから生まれていたのです。
自らを光らせる
女優たちが憧れるセンスの持ち主の淡路景子さんは、いくつになっても輝いています。
「女優は目がキラキラ光らなければ死んだも同然」
集まった女性たちが彼女の言葉に耳を傾けます。
「パーティー中に取材のカメラマンが来たら、キラキラ光る大ぶりのネックレスをつけている人の前に立つのよ」
身を乗り出して聞いていた黒柳徹子さんが首をかしげました。
「反射で目が光るのよ。分かった?」
「すごーい」
アクセサリー類の輝きより、自ら光るほうが魅力的です。目に力がないと感じたら、あくびをしてみてください。目が潤み、光を反射してくれます。
余韻が心をニュートラルにする
「キラキラしたものは素敵だけど、本当はさ、日本人はその余韻が好きなのではないかな」
作家で医者の渡辺淳一さんがおっしゃいました。花火大会や華やいだ場の後の帰り道、その余韻に浸る時間が心を緩ませてくれます。
年の瀬に、少し冒険をしてアクセサリーやラメでキラキラの光を楽しんでみましょう。輝く時間の余韻で心をニュートラルに戻し、新たな年を迎えてみてはいかがでしょうか。
© K’s color atelier
「闇のなかの彩りに心を寄せてみましょう」
今月のレッスン
光りものは、内面を輝かせたいときは控えめに、場を盛り上げるなら華やかにつける。
(「Are You Happy?」2017年12月号)
好評連載中
「岡野宏のビューティーレッスン さあ、はじめましょうか!」
第44回 「三首であか抜ける②」
(2020年12月号)
岡野宏
1940年、東京都生まれ。テレビ白黒時代よりNHKアート美粧部に在籍。40年以上にわたり、国内外の俳優だけでなく歴代総理、経営者、文化人まで、延べ10万人のメークやイメージづくりを行う。“「顔」はその人を表す名刺であり、また顔とは頭からつま先までである”という考えのもとに行うイメージづくりには定評がある。NHK大河ドラマ、紅白歌合戦等のチーフディレクターを務め、2000年にNHK退所後は、キャスターや政治家、企業向けにイメージアップの研修や講演活動などを国内外で行っている。著書に『一流の顔』(幻冬舎)、『渡る世間は顔しだい』(幻冬舎)、『トップ1%のプロフェッショナルが実践する「見た目」の流儀』(ダイヤモンド社)、『心をつかむ顔力』(PHP研究所)等。